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10年10人のShit #7 賽の河原で石を積む/西東ゆか(旅行誌編集者)(仕事文脈vol.18)

東日本大震災から10年が経ち、終わりの見通せないコロナ禍にある2021年。「復興の象徴」とうたわれた東京五輪もトラブル続きで、もはや誰のために開催するのかわからない。この間にも広がっていく、分断や格差、政治不信。そして「Shit」な思いが積み上がっていく。
この特集では、この10年に感じたShitについて、10人の人たちに書いてもらった。その人が直面している困難や葛藤を伝えるもの、不満や怒りを口にしていいと気づかせてくれるもの。さまざまな立場から綴られた文章は、私たち自身のShitを呼び起こしてくれるはずだ。

#7 賽の河原で石を積む/西東ゆか(旅行誌編集者)

 昨年の3月、仕事がなくなった。誰も旅行に行かないどころか、家から出ることすら良しとされない「緊急事態宣言」の発令。旅行カタログの制作をしている私は当然業務を失い、無期限の自宅待機を言い渡される。解雇か倒産かと怯えながら、寄る辺ない毎日を3ヵ月ほど過ごした。転機が訪れたのは7月。「GoToトラベル」事業の開始だ。

 ここから数ヵ月の活気といったらなかった。もともと作っていた媒体のページ数は従来のおよそ3倍に膨れ、突発の制作依頼も次々に舞い込む。売り上げゼロの期間の落ち込みも取り戻せそうな特需に、嬉しい悲鳴があがる……はずだった。

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