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「山中カメラ現代音頭集 Shall we BON-DANCE?」甲府風林火山編~フリースタイル音頭の誕生

皆さんこんにちは。
現代音頭作曲家の山中カメラです。

番外編を挟みまして、本編は続きます。

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シリーズ「山中カメラ現代音頭集 Shall we BON-DANCE?」
甲府風林火山編 ~フリースタイル音頭の誕生

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2013年。
小林純(じゅんべ)という女性から音頭制作の依頼があった。
じゅんべとは2010年に横浜で音頭を作った際の事務局スタッフで、この年は山梨県甲府市で「こうふのまちの芸術祭」というイベントを仲間と共に毎年開催しており、その中で踊る新しい音頭を。というものであった。

夏の福島での興奮冷めやらぬまま、秋の甲府に向かった。
初めて訪れる甲府は、金木犀の香りがして、南アルプスの稜線と、山から見下ろす街の灯が美しい街だった。

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どんな音頭を作ろうかなと思っている時に、「こうふのまちの芸術祭」をじゅんべと共に主催するスタッフであり、アーティスト/ミュージシャンの53235(ごみふみこ)と初めて出会った。

聞けば彼女自身も甲府に古くから伝わる盆踊りである「縁故節」の盆踊り大会を開催しようとしており、2009年の別府で既に私と顔見知りだったアーティストの幸田千依(画家)、水川千春(あぶり出し作家)の3人で甲府の昇仙峡近くにある古い廃校で作品制作の合宿をするという話を聞いた。
宿泊する場所も53235のおばあちゃんの家で、そのおばあちゃんが縁故節に詳しいので、取材をしながらカメラさんも私達と一緒に山で合宿をしないか?あわよくばこの4人で盆踊りを作らないか?と誘っていただいた。

若手日本現代美術界を代表する美人作家3人の中に、私などが1人で入っていくのも躊躇われたが、そこは天性の「ノコノコ感」丸出しで、私も(平静を装いながら)輪に入れていただくこととなった。

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次の日から4人のめくるめく山ごもり合宿が始まる。
私の提案で、甲府の武田信玄にちなみ、4人で「チーム風林火山」というダサい名前のユニットを結成し、(風:53235、林:幸田千依、火:水川千春、山:山中カメラ)
役割分担を決めず、お互いがお互いの得意分野を侵食しながら盆踊りを創り上げることになった。それぞれが素晴らしい技術と知能をもつ3人との共同作業はとても刺激的で、1人では思いもよらないアイディアや仕掛けが次々と生まれた。

※さて、4人の合宿がどのようなものだったのか?
音頭が出来上がって行く過程、制作秘話などは、拙著「山中カメラ現代音頭集 Shall we BON-DANCE?」に詳しく写真、資料多数で掲載しております。が、
当時の芸術祭ブログの中の「山ごもり合宿日誌(1~13+あとがき)」がとてもおもしろいので興味のある方はぜひ読んでみて下さい。

53235のおばあちゃんから、昔の縁故節での盆踊りの様子を取材した。

盆踊りは、「踊り手」と音頭を歌う「口説き手」に分かれるのが一般的であるが、縁故節では踊り手全員が、順番で歌詞を即興で考え、手拍子と各人の歌だけで延々と踊りを踊るという点に衝撃を受けた。それは現代のフリースタイルラップバトルさながらに、非常に知的で文学的な踊りだと思った。また、縁故節の合いの手で囃される「ションガイネ」という言葉に、「しょうがない:前向きな諦め」のようなニュアンスがあることを知り、ビートルズの「Let It be」の日本版だと思った。

そして4人でアイデアを出し合い、
■盆踊りに集まった踊りて全員に7.7.7.5(都々逸)の音節で歌詞を書いてもらい、それを53235が順々に踊っていくという仕掛け。
淡々とした踊りを踊りながら、会場全員の詩を共有する。
■縁故節の元々のメロディーに新しい、メロディーを書き足し、かつそこにビートルズの「Let It Be」を引用しかぶせる。
もともと53235がおばあちゃんから聞き取り歌っていた縁故節を、山中カメラが更にコード進行などをアレンジした。
■盆踊りは平面で輪になるのが一般的であるが、山梨の山と街という立地をイメージし、建物の1階と2階、もしくは低地と高地で輪になり、立体的な盆踊りの輪を構築する。
■提灯で山梨特産の葡萄を制作。赤い葡萄(山の葡萄)、青い葡萄(街の葡萄)を制作。その間を踊りの輪が巡る。
■山梨は古来より「あの世とこの世が交差する場所である」との言い伝えをもとに、様々な「境界」にいる象徴の人物(トリックスター)を盆踊りに登場させる。
などなど、様々な仕掛けや意味合いを見出した。

それでは風林火山で考えた「新生縁故節」を聞いていただこう。


途中から入ってくる太鼓は山梨を代表するバンドTHE BOOMの曲である「からたちの野道」のリズムパターンを引用している。
※今回出版されるCDブック作品集には、この2013/2014年の録音を元に、2018年オーバーダビング、リマスター版を収録しております。


こちらは翌年、2014年に甲府駅北口歴史公園で大々的に行われた大ボンダンス大会の模様。
山梨の素晴らしいミュージシャンに多数参加していただいた。ご協力いただいた皆様には、改めて感謝申し上げます。

その後、風林火山の4人は、火と山が死にそうな病気になったり、それぞれが母になったり、様々なことを乗り越えながら、現在も盆踊り大会は生演奏で継続中であり、縁故節の研究、調査に余念が無い。

この音頭は山中カメラの作品ではなく、風林火山の作品と言えるであろう。

次回、「山中カメラ現代音頭集 Shall we BON-DANCE?」道後湯玉編~復活の音頭の誕生に続く!

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私の作品集が発売中です。よろしくお願いいたします。

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「山中カメラ現代音頭集 Shall we BON-DANCE?」(タバブックス)


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