見出し画像

男には簡単な仕事/ニイマリコ 第3回 体育会系なノリに馴染めないこっちだって男なのに(仕事文脈vol.20)

 フェミニズムに本格的に関心を持ったのは、仲良くなった年上のお姉さんが翻訳した本を読んだのがきっかけである。彼女が柔らかで聡明な雰囲気の人だったから、それまでぼんやりと持っていた「海外の怒れる女性パンクバンドが標榜するもの」というイメージを変えてくれた。つまりとっつきやすくしてくれたのだ。その本でまず衝撃を受けたのは「特権」という言葉の捉え方であった。例えば、ある程度家庭が裕福だった、教育がきちんと受けられていたのなら、あなたは「恵まれている」と言える。そういう「特権」を受け入れた上で、何ができるかを考えよう、どんな人にも恵まれている部分とそうでない部分があることを自覚しよう、ということが書かれていた。女性として差別を受けたことがある私自身、何かしらの「特権」を持った立場から、今まで誰かを無自覚に傷つけていたに違いない。「特権」とは何かを理解できた、意識が変わったと、この先いくら気をつけてもやってしまうだろうなと、本当に怖くなったものだ。無自覚とはそういうものだから。

 さて、私は第一印象が「なんか怖かった」と口を揃えて言われるれるような人間だ。「でも喋ると全然そんなことない」「意外と気さくなんだね」とどめに「なんならガッカリした」と笑われるくらい、遠慮なく付き合っていると思っていた男性の友人たちに、「男には簡単な仕事」というエッセイ連載を始めたんだ、と言うとちょっと身を固くされることがある。

ここから先は

2,613字 / 1画像

¥ 100

お読みいただきありがとうございます。サポートいただけましたら、記事制作やライターさんへのお礼に使わせていただきます!