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「小さい雑誌の作り方とお金の話」公開座談会・後編(仕事文脈vol.12)

『生活考察』『食に淫する』『生活単価』『仕事文脈』……なぜわたしたちは「小さい雑誌」を作りはじめたのか。公開座談会後編では、納品、精算、企画や制作などよりリアルな話が出てきました。(構成:菅間碧、編集部)

座談会参加者

『生活考察』辻本力(ライター・編集者)
『食に淫する』餅井アンナ(ライター)
『生活単価』兼桝綾(出版社営業)
『仕事文脈』宮川真紀(タバブックス代表)

■納品・精算・回収のハードル

宮川:雑誌の採算はどうなっていますか。
兼桝:うちは、500円がギリギリ印刷費までが賄えるラインですね。でも、文フリに初めて出た時も800円でした。そのときはデザイナーを入れたところで、そこにギャラを払うための少し高い価格設定でしたね。でも、最初にロゴなどをお願いしたら、そのあとはずっとそれを使えるので、印刷費までを賄える500円に戻しました。
辻本:兼桝さんは、ご自分で全部書かれるから大変ですよね。時間もかかるでしょうし。僕のところは、自分も書きますけど、基本寄稿がメインなので。
宮川:豪華な執筆陣ですよね。芥川賞作家さんとかもいらっしゃるし。謝礼ってどうしてるんですか?
辻本:本当に気持ちばかりで申し訳なさすぎなんですが、一応お支払いしています。もう少しちゃんとした額をお支払いしたいという気持ちはあるんですけど、実売だけだとなかなか難しくて。
宮川:そうそう、途中から取次を通すようになったんですよね。
辻本:僕、雑誌を作り始めたときは無職だったので、時間もあったんですよ。だから直販で、なんなら自分で書店に納品に行ったりとかもできたんですけど、だんだんその時間が取れなくなってきてしまった。で、取次さんにお願いするようになりました。知り合いの一人出版社をやっている方から紹介された、小規模の出版物や美術系の本を扱っている「ツバメ出版流通」さんという小取次なんですけど。お願いするにあたり、ISBNを取ることが必須条件でした。
餅井:コードを取得するお金ってどのぐらいかかるんですか? 私も忙しかったり壊滅的に体力が不足していたりで、納品に行くのも発送するのもなかなかこなす余裕がなくて……。できるものなら取次さんにお願いしたい!
辻本:すごく高くはなくて、10冊(号)分で2万円台だったでしょうか。
餅井:えっ、それで納品の手間だけでも省けるなら安いですね。梱包して送るのも結構大変じゃないですか。あれでいつも疲れ果ててしまって。
宮川:梱包問題ありますね!今郵送料も高いし小さくして発送するとなると、小さくする労力はかかっちゃう。辻本さんは、通販をやっていたとのことですが、自分で発送してるんですか?だったらすごく大変なのでは。
辻本:メールで注文を受けて、それに返事をして、代金を振り込んでもらって、確認がとれたら自分で郵送するという、ひじょうに原始的なスタイルです。確かに冊数が多い時は、その作業で半日くらい終わってしまっていました。だんだん慣れましたけどね。そうそう、通販の送料は、発売から日が浅いうちは期間限定で無料にしていたんです。それでも売上が100%手元に入るから、本屋さんに卸すよりも実入りがいい。すぐに現金が手に入るのも助かりますしね。それに、最初の頃はヤマトのメール便があったから、かなり安く送ることができた。まあ今なら、普通にAmazonとかでやることになるのかな。
餅井:私はAmazonを活用しています。「密林社」っていうところが出品代行サービスをしていて、マージンが4割と結構高めではあるもののやっぱり売れるので。買う側はボタンを押すだけでいいから反射的に買ってくれるんですよね。あちこち本屋さんに置いてもらって「納品に行かなきゃ」「お金回収しなきゃ」って手続きするのって、こちらもかなりメンタルコストがかかりますし。

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