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10年10人のShit #2 むずかしい春 佐藤ジュンコ(イラストレーター)(仕事文脈vol.18)

東日本大震災から10年が経ち、終わりの見通せないコロナ禍にある2021年。「復興の象徴」とうたわれた東京五輪もトラブル続きで、もはや誰のために開催するのかわからない。この間にも広がっていく、分断や格差、政治不信。そして「Shit」な思いが積み上がっていく。
この特集では、この10年に感じたShitについて、10人の人たちに書いてもらった。その人が直面している困難や葛藤を伝えるもの、不満や怒りを口にしていいと気づかせてくれるもの。さまざまな立場から綴られた文章は、私たち自身のShitを呼び起こしてくれるはずだ。

#2 むずかしい春/佐藤ジュンコ(イラストレーター)

 普段から嘘みたいなことばかり起きて嘘ばかり聞かされているせいか、嘘に耐性がつき食傷気味で嘘欲も失せ、エイプリルフールであることも忘れて過ごしていた4月1日。日が暮れてから、ご近所さんに回覧板を持っていった。扉の向こうから
「今夜は西から月が昇るらしいよ」
と教えられ、うっかり振り向いて西の空に目を凝らすと
「エイプリルフールだよ、ふふふ」
 世の中のあれこれとは裏腹に、のどかなエイプリルフール。
「『記憶にございません』という言い回しは、政治家が虚偽の答弁をする場合にのみ用いられ『記憶にございません』と述べることこそが嘘の証であり……」

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