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女と金と仕事 女性誌30年分から見えてきたもの 宮川真紀×奥山晶子(仕事文脈vol.3)

本誌発行人・宮川の著書「女と金 OL財布事情の近年史」は、女性誌に載る給料やお財布事情に関する記事から、女性とお金の関係を探ってまとめた本です。女の人が働くのが普通になってきた1980年代から、就職難で節約に走る最近まで、お金感はどう変わって来たのか。ウェブ連載中から記事探しやネタ出しを共におこなってきた担当編集者奥山(ロスジェネ世代)と著者宮川(バブル世代)が、女と金、そして仕事の30年を振り返ってみました。

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『女と金 OL財布事情の近年史』
宮川真紀/著 辛酸なめ子/絵・時評 2013年11月 アストラ刊
*現在は入手できなさそうです...

「ショッピング」って何?

奥山 読んでるとやっぱりゼロ年代が一番混迷の時代ですよね。
宮川 雑誌も、90年代後半出た『ドマーニ』とか『ラヴィドトランタン』とか、そんな成熟したヤツいるか?みたいな。
奥山 セレブですよねー。
宮川 雑誌を作ってる出版社の人はそうだったかもしれないけど。
奥山 そっかー、まだ給料よかったから。
宮川 バブルが弾けたと言ってもその前から出版社で働いていればお給料も高いし。林真理子の「コスメティック」*1の世界だよね。プレスとかマスコミとか華やかな業界でのし上がっていく。そういう人もいたけど、ごく一部。
奥山 でも期待してたんでしょうね、これらを出した出版社は。
宮川 それはそうだね、働いて可処分所得が増えて、30歳過ぎたら、ワンランク上が欲しいに違いないって。
奥山 あなたたちの望みはこれじゃないですかって。
宮川 パーティーとか社交界とかクルーズとか、そういう社会じゃないから。だけど「ドマーニ」でも、通勤服1ヶ月の着回しとか、「VERY」だと洒落たママとかは新しいかんじがしましたけどね。30代だと主婦雑誌しかなかったし。
奥山 『すてきな奥さん』とか。
宮川 または『家庭画報』とか。それに比べたら新しい30代だとは思ったけど、ここまでできるほど稼いでいた人は少ないから。雑誌に煽られて買っちゃうと苦しくなる。OLのマンションブームで買った人も結構いたけど、そもそも無理でしょ、冷静に考えると。なんであんなにモノが欲しかったんだろう。買いたいものを出してちょうだい、もっともっと!みたいなのは確かにあった。
奥山 ショッピングってことばが象徴してますよね。
宮川 え、「ショッピング」って使わない?
奥山 別に日常的なことばなんだけど、あるときふと「ショッピング」って何をすることなんだろう、って思ったんです。
宮川 そういえばショッピングって1カテゴリーになってますね、女の人の楽しみはショッピングだって。
奥山 欲しいものを買いにいくのがほんとなのに。最初に違和感を感じたのが、カードのCMだと思うんですが、女の人がバスの中で泣いてて「辛いことがあるならお買い物でもして忘れちゃえば」と。買い物でって?
宮川 ずっとそれで来てるんだよね、80年代から。働き始めてお金があるし、景気もよくなってきたから、女性は物を買うだろうと。『ノンノ』の記事で、これから就職する女子が「これからは親を頼れないし給料は少ないから、欲しい物を買うにはどうしたらいいでしょう」というのがあって、あるお金の中からやりくりするんじゃなくて、欲しいものがあるからお金をどうしよう、って考え方だったかも。*2
奥山 今は就職難というのもあるし。面接自体が自分を受け入れてもらえるか、ってところまで来てるので......。
宮川 それもきついよね。関係ないじゃない、仕事と人格とか。
奥山 面接官はそんな目線で見てはいないんだろうけど、落ち続けるとどうしても自分が悪いんじゃないかって。お金の前につまずいてます。
宮川 うわー。「女と金」だと?ふざけんな!とか叩かれそう......
奥山 いやいや、勘違いですから、新卒者の。

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