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『仕方ない帝国』は終わったのか/高橋純子(仕事文脈vol.17)

 スーパーで1匹250円のサンマを買った。消費税は6年前に5%から8%となり、1年前にさらに10%に引き上げられたけれども食料品は「軽減税率」で8%に据え置かれており、お支払いは? スマホ決済でお願いします、いえ、レジ袋は今年7月から有料になったので要りません、でも半透明のポリ袋はタダだし、生魚だし、入れた方がいいのかなと一瞬迷うけれども、スウェーデンの若き環境活動家グレタ・トゥンベリさんの怒った顔がチラついたのでやっぱりやめ、だけど保冷用の氷は欲しいぞと小さなビニール袋に入ったのをひとつもらい、プラスチックトレーにのせられた2匹と一緒にエコバッグに詰めて帰ってきた。げっ。生臭い汁がバッグに垂れちゃってる……エコなんだかエコじゃないんだか、自分でもさっぱりわからない。ざっと手洗いして干したら、サンマも洗って塩をふり待つこと15分、焼く準備を整える。

 それにつけてもサンマは高くなった。高くなったなあという嘆息と、7年8カ月続いた安倍政権が終わったなあという嘆息は、なんだか似ている。これがお米や野菜であれば、「困」や「怒」を含んだもっと切実な嘆と息になるはずなのに、どこか遠くから出来事をながめている感じ。どうなるにせよ、順応するよりほかないのだと、流れに身を任せている感じ。

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