身長157cm文系女子が宇宙飛行士を目指す話①


わたし。

長野の田舎出身。
今は都会にでてきた、26歳。独身女性。
職業 パイロット。

2021年。宇宙飛行士を目指すことにした。


始まりは、一体なんだったんだろう。
高校生の時に立ち読みした、宇宙兄弟だったか。
もうその頃には、わたしはパイロットになることを心に誓って、吹奏楽部の部活に勤しんでいる普通の高校生だった。
まあ、パイロットになるから、宇宙はその次かな?なんて、軽い気持ちでいたあの頃。
なんだったか、高校にJAXAの人が講演に来たことがあった。
早く終わればいいのに、早く終われば部活に行けるのに。なんて、思いながら、後ろの出入り口の近くに友人と陣取って、座っているんだか、寝転んでいるんだかわからない体勢で、話半分に聞いていた。
途中から質疑応答があって、わたしは面白半分に、例の宇宙兄弟から借りてきた知識を、引っ張り出して、質問しようという気になった。普段なら、全校生徒の前で、マイクを取るなんて小っ恥ずかしくてできるわけないと思っていたのに。その時はなんだか、酔っ払ったような高揚感で手をあげていた。
聞いたのは大したことなかったとおもう。
当時、宇宙に行けるのは身長158センチからだった。
宇宙服のサイズが欧米諸国のものは大きく、小柄な日本人は、特に女性にはハードルが高く、宇宙服を着こなせるのが158センチからだった。
わたしは157cm。なにをしても、どうあがいても、その1センチが増えることはなかった。
だから聞いたのだ。
「小さな宇宙服を開発してくれませんか?」と。
その、よくわからないJAXAの人は開発してるから、そのうちできる、みたいなことをゆうてたきがする。
それにわたしは、「じゃあ、宇宙飛行士になれるように頑張りまーす。」と適当に答えた、らしい。というのも最近当時の友人からそう聞いた。
なんとも偉そうな高校生である。

10年前の話から現在にもどる。
そんなこんなで、どうあがいてもこの子生意気な高校時代から何を改心したか、10年後の私は、大阪でパイロットをしている。

やりたかった仕事も、
収入も、家も、車もある。
彼氏もいる。
あとないものといえば、子供くらいだ。

全てを手に入れたと思う。
若干26歳にしては上出来ではないか。

それなのに、わたしは、
その全ても投げ打って、
宇宙飛行士になるかもしれない。

あのとき、売り文句に買い文句のように吐き捨てた、「じゃあ、宇宙飛行士になれるように頑張りまーす」と言ったあの台詞のとおりに、わたしはこれから歩を進めようとしてる。

人生何があるかわからない。

冗談が本気になってしまった。

まあみててよ。
どこまで行けるかは、わたし次第。

ちなみに、2021年11月に公開された宇宙飛行士採用試験の身長制限は149センチに改定されていた。
多分、多くの人は知らない。
このマイナス9センチを産むためにこの10年たくさんの人が汗を流し、苦労を重ねここまで作り上げてくれたことを。
まずは、その努力に多大なる拍手を。
その恩恵を受けられるような人間に自分がなっているかは、別としても。
これは歴史を変える、大きな一歩なのだ。

そして、これは、わたしの宇宙飛行士になる全ての始まり。
夢ではなく、職業として、
転職先を宇宙にきめた。


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