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フニャフニャのドアハンドルと刺身包丁

僕の大学は偏差値が低くマイナーだったので、学生のレベルも他校に比べ低かった。

授業では「いや商品化しても誰も買わないだろこれ。。」というデザインがボンボンと学生から提出される。

持ちやすさを重視した(らしい)フニャフニャのドアハンドル。
「シンプルな木製イス」と思いきや、黒いニスを塗り、座布団を乗せる謎センス。

かく言う自分もエウレカセブンやシド・ミードのデザインに憧れ、何でもSFぽくする小僧だった。

デザイナーを目指す学生はきっと、「新しいデザインを生まなければいけない。」「他の学生とかぶってはいけない」と考え、アドリブを加える。でも、それは基礎的なデザインができた上でやらないといけない。

新しい形はアドリブやセンスで生むべきじゃない。新しい便利な使い方から生むのが正しいと思う。

例えば、パンを包丁で切ろうと思ったら、パン切り包丁のようにギザギザで細長くなるし、

刺身をきれいに切ろうと思ったら、刺身包丁になる。学生もそれでいい。そんな感じだと思う。それができたら素晴らしい。それがかっこいい。

「包丁が滑ったら危ないから、ぎゅっと握った形にしよう。」とか「刺身包丁は和柄を入れて漆を塗ろう。」みたいな事はひとまず、いらない。あとでいい。



はじめにシンプルデザインをまず学んでほしい。
意外とそれは結構簡単。

”無印良品”で売っているような形にすればいい。
と言うとつまらなく感じるかもしれないし、世の中のデザイナーに怒られそうだけど、日本においては、とてもわかり易いと思う。無印のデザインはとてもよくできている。学ぶところが多い。

ニトリじゃない、100円ショップでもない、ホームセンターでもない、無印良品。


無印良品が売る。という意味の中には暗黙の了解がいくつかあって、
「デザインはシンプルか、不安定ではないか、大きすぎないか、掴みやすいか、収納時の大きさ適切か、色は無駄に派手になっていないか。」などのデザインルールが含まれている。

本気で考えるとこれが難しく、おもしろいし、良い形が出来上がる。

これを学生の頃の自分が聞いたらきっとまだ「無印を真似たって『普通』で映えない物しかできず、ポートフォリオに載せられない。」と思う。

でも、今自分がデザイナーになり、沢山の有名企業に就職したデザイナーと知り合った。彼らの学生時代の作品は、ささやかな願いや、ちょっとした便利をシンプルに形にしたものだ。だから知っている。これで大丈夫。

全面スクリーンで「このスマホどこデザインするねん。。!」みたいな物が多い今だからこそ、この技術は必要に思う。

シンプルで美しいデザインを、教え褒めてくれる文化が自分の学校にも欲しかった。

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