22-23_EPL マンチェスターシティについて①

はじめに

フットボールにおける最もホットな瞬間は得点シーンである。
そしてその後、冷静になった時に考えることは誰がアシストしたのかである。
続いては、アシストしたプレイヤーにパスを出したのは誰なのかだ。
こうしていくうちに全ての流れが気になりだすが、全てのシーンでパスをつないでシュートまでに至るのではない。
しかし、シュートしたプレイヤー、ラストパスを出したプレイヤー、ラストパスを出したプレイヤーにパスを出したプレイヤーはそれぞれ、一試合の中で、何度も同じような試行をしているはずと考えられる。
そこでフットボールの一部分にして重大な要素のシュートに重きを置き、上記のようなボールの流れを整理した。ラストパスからシュートにはパターンがあると考え、独自のパターン分類表に従い、集計を行った。
こうしてまとめていくと、チームごとの特徴について見えてくることがある。
このまとめでは今回、2022/23シーズンのMCIに限って、全節のフルタイムの中で集計を続けた。これによりシュートパターンを判別することが出来た。そして、価値あるデータが築き上がったと信じている。
イングランド最強チームのデータを見ることで、フィニッシュフェーズの最新トレンドを把握出来るまでに至るのではないかと、思わずにはいられない。そして、思っていただけたらありがたい。

現時点で、2023/24シーズンの終盤ですが、昨シーズンの記録を載せます。今シーズンも同様の集計を鋭意継続中です。

1. Remarks of shots
1-1. 分類表の作成
 
このまとめでは、フィニッシュつまりシュートに関する集計値をもとにデータを示す。シュートが打たれた時の状況を分類し、表にした。これをもとにシーズンを通してシュートの記録を行った。
次ページ分類表は、アシスト(ラストパス)したプレイヤーのボールを供給した位置がbox内なのか外なのかで大別した。続いて、そのパスの種別によって分けた。スルーボール、クロス、マイナスのパスを基本とし、分類した。それぞれの定義については後述する。
続いてはフィニッシャーつまりシュートしたプレイヤーについての分類になる。まずシュートを完結した位置がbox内なのか外なのかで分け、最後にそれがどれほどのタッチ数の後のプレーになるのかによって分類した。まとめると、表の左からアシストしたプレイヤーの位置、アシストの種類、シュートが打たれた位置、シュートの詳細となる。
ここで、シュートの起点となるラストパスの定義について記述する。大前提として、試合中に起こるシュートに全くの同一などはあり得ないが、パターンは存在すると考えた。ラストパスのボールを基準にするとそれが前へ向かうもの、横に向かうもの、そして後ろへ向かうものの三方向がある。それらをそれぞれ単語として表記するとそれぞれ、スルーボール、クロス、マイナスのパスになる。どれも一般的に使われる言葉になるが、このまとめでは再定義し、それに基づいて集計を行った。
まず、スルーボールに関しては「プレイヤーへ直接向かって出したパスではなく、あくまでスペースに出したパス」と定義した。人から人へのパスはショートパスとし、ここでは別の集計とした。人から人へ向かって出されたもの「縦」であるか「横」であるかの集計となる。クロスについては、「ボールを基準にゴール方向に向かってサイドから出されたもの」と定義した。後述のマイナスのパスに対して、逆のプラス方向のパスとなる。つまり、ゴールのあるセンターラインに向かって、センターラインの左右から出されたものになる。そのためボールの軌道はグラウンダーや浮き球も含む。スルーボールとの違いはセンターラインに向かって出されたものであるという点で、逆にセンターラインから離れる横パスは別の「横パス」として集計した。最後のマイナスのパスは、「ボールを基準にマイナス方向つまりゴールから下がる動きのパス」と定義した。落としのパスレイオフやカットバック、バックパスもここに含んでいる。ボールを基準としてタッチラインと垂直の線上よりも後退したものとなる。
シュートしたプレイヤーがどれほどのタッチ数かでも分けたが、トラップせずにダイレクトで打たれたものを「ダイレクト」とした。トラップや1タッチあってからのシュートを「トラップ」とし、タッチが2回以上のものを「トラップ⇒ドリブル」とした。
その他、ラストパスが無いシュートについても集計した。プレスの効果によるボール奪取やインターセプトから一人で完結したシュートを別集計とした。また、シュートブロックやクリアボールなどを回収し、打たれたシュートも別集計とした。ここにはクロスのクリアボールをシュートしたものも含む。
これらがこのまとめでの集計の基準・定義となる。ただし、ボールの動きは360°全方向へ動くことを再認識していただけると、これらの分類に毎回当てはまるわけではないため、集計時に迷いが生じる瞬間がある。分類がそれ自体主観的集計となる瞬間もあったことを了承いただきたい。

シュート分類表


1-2. Finish v Block
 

*On TargetはGoalも含む

・シュート合計
MCIは22-23シーズンで600本のシュートを放った。これはBHA,LIVに次ぐ3番目の数値となる。
上の図はシュートがどこで打たれたかを表す。左から全シュート、オンターゲット、ゴールのグラフとなる。
まずチーム全体のシュートがどこから打たれたかに注目した。MCIに限らず、どのチームであってもシュートを打つならまずbox内を目指すであろう。そしてそれがbox内であれば、オンターゲットの確率も、ゴールとなる確率も上がっていく。至極当然ではあるが、その言及をするのに裏付ける結果となった。
MCIに関して特筆するならば、box内シュート率がオンターゲット、ゴールとなるにつれて約10%ずつ増加する。
また、得点の9割近くがbox内であることもポイントとなる。これはbox外でシュート打つ必要性はないと言えるほどかもしれないが、シュートストップやクリアされたボールを打ってゴールに至るという得点パターンを考えると、また違う見解も存在するかもしれない。
 
 
・ラストパスの供給エリア

 

続いてシュートの前のラストパスがどこから供給されるかについて着目した。上図はシュートが、ラストパスのタイプがスルーボール、クロス、マイナスのパスからだった場合のみの集計値で示したものになる。
ラストパスの場所の数値差異はそこまで多くみられなかった(160対125)。box内外のいずれにしても、ラストパスの選択に関してパスの供給者は場所を選ばないともいえる。
ただし詳細に見ていくと、わずかにbox外からのラストパスが多く、その8割近くをbox内でシュートしていた。これはアシストがbox内であっても割合は異なるが、box内でのシュートが大半であった。上の円グラフは実数値を表記したものだが、偶然ではあるがどちらもbox外でのシュートの値が「34」であった。シュートのシチュエーションを考えると、恐らくどちらもマイナスのパスつまりカットバックやレイオフによるシュートがその大半を占めているが、ボールの動きの性質上もっともな結果であると言える。
 
 
・アシストタイプの内訳

上の円グラフは、ラストパスのタイプによるシュートの差違がどれだけあったかを示すものである。左から全シュート、オンターゲット、ゴールを表したものである。
「minus」はマイナスのパスを表す。「set」はセットプレーを表し、PK,CK,FKの合計値となる。「others」は分類表の右端に示したシュートパターンの合計値とした。そして、「Total」は全シュートの合計値となる。
 
全シュートに対するcross, minusからのアシストタイプはほぼ同率となり、それぞれ約2割を占める。発生場面が限られるsetの割合がthroughを超える結果となった。ただし、全体的な差異はそれほどなく、万遍なくアシストタイプを記録したともいえる。
 
一方で、On Target率になるとその比率に変化があった。through, crossの割合が増え、それぞれ約2割を占める。それに合わせminusの比率が減った。throughはラストパスとして供給された時点で決定機になりうるシチュエーションではあるため、枠内率が高くなるのは必然ともいえる。minusに関しては、ボールの軌道とその時点の相手プレイヤーの配置を考えると、オンターゲットではなくブロックされる可能性が高い。
 
そして、Goalになったアシストタイプの比率はさらに変化があった。throughが大きく比率を減らし、crossが全体の1/4になる結果となった。枠内率は高いthroughではあったが、ゴールとなるとまた別の話になるようだった。およそシュートシーンを考えると、GKとの一対一が多いことが伺えるが、決定率自体は低い。つまりシュートはキーパーによってセーブされていることになる。
また、MCIがシーズンを通じて獲得したゴールの約25%はcross由来であったことは特筆すべき点である。

上の図は、アシストつまりラストパスのタイプ別によるオンターゲットやゴール率を表したものである。
「minus」はマイナスのパスを表す。「set」はセットプレーを表し、PK,CK,FKの合計値となる。「others」は分類表の右端に示したシュートパターンの合計値とした。そして、「Total」は全シュートの合計値となる。
青線で示された値はシュートに対する枠内シュート率を、黄色の線で示された値はシュートに対するゴール率をそれぞれ示している。そして緑線で表示したものは枠内シュートにおけるゴール率を表す。つまり、枠内シュートがどれだけゴールとなったかを示す。
 
throughは前述の通り、ラストパスとして供給された時点で決定機に近いシチュエーションではあるため、枠内率の高確率は必然ともいえる。実際、試行数自体はcrossの約半数であった。ただし、60%超えの高確率であったことは再度言及するに値する。一方でビッグチャンスでありながら、セーブされることが多いとも言える。これはフィニッシャーの質よりかはthrough ballを許すチームには上質なシュートストッパーがいるというべきかもしれない。
 
minusはその性質上、相手最終ラインより手前でシュートすることが多いことを考えると、ブロック率が高いことが必然ともいえる。
 
MCIを相手にするとローブロックを敷くチームが多いため、ゴールを固められるシチュエーションが多かったことにも関わらず、サイドでのラストパスを高確率で得点にしていた。上質なクロスを供給できるプレイヤーがいたこと、それを上出来にゴールに換えられるプレイヤーがいたことを示す数値となった。

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