22-23_EPL マンチェスターシティについて③
1-4. Block v Finish
MCIのシュートだけでなく、対戦チームのシュートについても集計した。これにより、被シュートの総計を把握できた。
前述では、アシストタイプによって分類して集計した放ったシュートの結果を示したが、ここからはその“逆”となる許したシュートについてのデータを示す。集計した前提として、攻撃時にはアシストタイプによって、チームが狙っていることと同時に相手チームに対して狙えるポイントがあったためにシュートができたという仮説を立てた。具体的にはスルーボールが出せる状況であれば、裏にスペースがある。クロスが供給できる状況であれば、box内を固められているがサイドにはスペースがあるもしくは、box内に明確なターゲットがいる。マイナスのパスが出せるならば、相手ディフェンスラインをできるかぎり引き下げてその空いたマイナスのスペースにパスを出している。これらのシチュエーションを想定し、集計値によってどこにスペースがあるかの把握につながると考えた。浴びたシュートを集計値によって分類することで、攻撃とは逆にチームが相手に与えているスペースを把握できると考えた。
MCIを相手にしたときに狙いどころとなるスペースを判別することを意図して、集計値を示すとともにデータから読み取れることを述べていく。そして、MCIを打ち負かすためのヒントを探っていく。
・シュート合計
MCIは22-23シーズンでトータル294本のシュートを放たれた。
上の図はシュートがどこで打たれたかを表す。左から全シュート、オンターゲット、ゴールのグラフとなる。
まずチーム全体のシュートがどこから打たれたかに注目した。MCIに限らず、どのチームであってもシュートを打つならまずbox内を目指すであろう。そしてそれがbox内であれば、オンターゲットの確率も、ゴールとなる確率も上がっていく。この比率は前出の“放った”シュートのデータの比率とほぼ同率になっている。
MCIだけでなく、どのチームでもどこでシュートを打ったかの比率はおよそ円グラフに近いものであるといえる可能性がある。
また、得点の9割近くがbox内であることもポイントとなる。これはbox外でシュート打つ必要性はないと言えるほどかもしれないが、シュートストップやクリアされたボールを打ってゴールに至るという得点パターンを考えると、また違う見解も存在するかもしれない。
・ラストパスの供給エリア
続いてシュートの前のラストパスがどこから供給されるかについて着目した。上図はシュートが、ラストパスのタイプがスルーボール、クロス、マイナスのパスからだった場合のみの集計値で示したものになる。
ラストパスの場所の数値差異は総数が少ないがわずかな開きがあった(66対39)。MCIのブロックやもしくはハイラインをつくために、わずかにbox外からのラストパスの選択をラストパスの供給者はしているともいえる。ただし、MCIの前出の同円グラフの比率を比較すると差異がないため、チームによる特徴は現れづらい可能性もある。
・アシストタイプの内訳
上の円グラフは、アシストつまりラストパスのタイプによるシュートの差違がどれだけあったかを示すものである。左から全シュート、オンターゲット、ゴールを表したものである。
「minus」はマイナスのパスを表す。「set」はセットプレーを表し、PK,CK,FKの合計値となる。「others」は分類表の右端に示したシュートパターンの合計値とした。
全シュートの比率は全体的な差異はそれほどなく、万遍なくアシストタイプを記録したともいえる。ただし、throughは他に比べ若干の低い比率だった。ハイプレス、ハイラインを志向するチームではあるが、裏抜けからシュートを許すことはそれほど多くなかったといえる。
On Target率でも全体的な差異はそれほどなく、分け隔てなくアシストタイプを記録したともいえる。全シュートの比率そのままに全体がわずかに変化した程度だった。through, crossの割合が増え、それぞれ約2割を占める。それに合わせminusの比率が減った。throughはラストパスとして供給された時点で決定機になりうるシチュエーションではあるため、枠内率が高くなるのは必然ともいえる。minusに関しては、ボールの軌道とその時点の相手プレイヤーの配置を考えると、オンターゲットではなくブロックされる可能性が高い。
しかし、Goalになったアシストタイプの比率には変化があった。throughが大きく比率を減らし、crossが全体の1/5になる結果となった。枠内率は10%だったが、ゴールとなるとその半数まで減った。およそシュートシーンを考えると、GKとの一対一が多いことが伺えるが、決定率自体は低い。つまりシュートは31(MCI)によってセーブされていることになる。ただし、31(MCI)のセーブ数は22-23シーズンでは「46」と多くはなかった。これはチーム全体でシュートチャンス自体を防いでいるとともに、わずかなシュートシーンではGKによって確実にセーブしているといえる。
上の図は、アシストつまりラストパスのタイプ別によるオンターゲットやゴール率を表したものである。
「minus」はマイナスのパスを表す。「set」はセットプレーを表し、PK,CK,FKの合計値となる。「others」は分類表の右端に示したシュートパターンの合計値とした。そして、「Total」は全シュートの合計値となる。
青線で示された値はシュートに対する枠内シュート率を、黄色の線で示された値はシュートに対するゴール率をそれぞれ示している。そして緑線で表示したものは枠内シュートにおけるゴール率を表す。つまり、枠内シュートがどれだけゴールとなったかを示す。
throughは前述の通り、ラストパスとして供給された時点で決定機になるシチュエーションではあるため、枠内率の高確率は予想される。しかし、MCIのチーム特徴であった高枠内率は被シュートに関しては低く約半数だった。
minusはその性質上、相手最終ラインより手前でシュートすることが多いことを考えると、ブロック率が高いことが高いことが想像できる。しかし、MCIの攻撃時の数値とは10%とわずかに開きがあり41%とシュートの半数近くを枠内に放たれたしまった。チームがローブロックでリトリートを志向することはしないため、シュートを打たれるシチュエーションは限定されるはずだが、このデータのみを参照すると、MCIを相手にしたときはマイナスのスペースを狙うことは重要になる。
その他、「set」も特筆すべき数値となる。試行数は少ないが、高確率のオンターゲット率、オンターゲット内のゴール率だった。今回の集計では、FK,CKはプレイヤー二人以内のタッチで完結したものだけをカウントしたため、FK,CKの流れからシュートしたパターンはその他多くあった。こういったセットプレーの流れからオンターゲットやゴールとなるシーンも少なくなく、ねらい目の一つとなりうる。