「因果関係不明」をどのように理解すべきか

ワクチン接種後の死亡例が多く報道され、その多くを「因果関係が確認できない」「因果関係不明」と国は発表しています。それでも発表されている事例数だけでも死者が1000人を超えている、最近30代男性二人が接種2日後に死亡したという報道は気になります。今回は「因果関係不明」をどう考えれば良いのか、考察してみます。

状況から推測する方法、論理的な方法の2つの視点から「因果関係」を考えていきます。

その1:状況からの把握
「因果関係が示された」「因果関係不明」とされている場合、意外に注目すべきは「誰」が主張しているかを確認することです。特に誰がデータを持っているのか、調査や判断ができる立場にあるのかを見極めることが重要です。

理解するには、極端な例を2つ考えてみると良いでしょう。

まずは、例えば健康サプリメント。サプリメントを売りたい企業は効果を大々的にアピールしたくなります。つまりできるだけ都合の良いデータを集め、判断しているという可能性は否定できません。

もう一つは健康被害や環境問題など。公害、薬害、その他。探してみると、とても多くの事例が見つかります。このうち薬害だけ見ても、サリドマイド、スモン、薬害エイズ、ソリブジン、ヤコブ、C型肝炎があります。子宮頸がんワクチンも問題が指摘されています。そして危険性が指摘されてから措置されるまでに30年以上の年月がかかったものもあります。多くの場合、危険性が警告されていながら使われ続けたために、被害が拡大しました。未だに問題が指摘され続けているイレッサのような例もあります。いずれも、推進している組織等(薬害の場合は製薬会社およびそれを許可した国)は、問題を抑え込みたいと考える方向になることは明らかでしょう。

以上の2例をヒントにワクチン接種後の死亡について考えると、ワクチン推進、症例収集、症例分析、広報、いずれも国。断定はできませんが、いろいろ想像できると思います。


その2:論理的な推測
因果関係を示す論理的な方法は2つあります。

1つは、原因から結果までのメカニズムが納得できる形で把握されている場合です。例えば物理現象の多くは因果関係がはっきりしています。医療関係でも、多くのことがわかってきました。今後も様々な生命科学分野での研究が進み、いろいろな因果関係が解明されていくでしょう。

もう1つは、因果推論を用いることで、メカニズムは分からなくても統計的に因果関係を推測する方法です。2つのデータ間に見かけの相関があっても、因果関係については何も言えません。見かけの相関がある場合、因果関係、逆の因果関係、交絡(共通要因で見かけ上相関がある)、合流点選抜、偶然などが考えられます。交絡は厄介ですが、ランダム化比較実験(RCT)が知られており、十分な実験ができれば因果関係を推測することができます。メカニズムとしての因果関係発生プロセスを解明できていなくても、丁寧に集められた大量のデータがあれば、因果関係を統計的に結論できる可能性がある訳です。

今は、ワクチン接種後の死亡に関してメカニズムがわからないとされ、因果推論ができるデータがありません。このため結論が「因果関係不明」となるのは仕方がないのかも知れません。但しアメリカではメカニズムに関しては、以下のような情報が出てきているようです。

ワクチンで突然死するわけ
 ワクチンの接種後、数日から2週目くらいの間に、若い世代の人が突然、死亡するという事例が少なからずあります。アナフィラキシーショックとはあきらかに異なる経過をたどるものですが、日本では、いつも「因果関係不明」で終わりにされてきました。
その理由があきらかになりました。ワクチン接種後、重い心臓病になり入院した2人についての詳細な報告が、米国でなされたのです。1人は入院3日目に死亡しています。どちらも心臓の筋肉の一部が採取され、顕微鏡による分析が行われました(バイオプシー検査)。その結果、心臓の筋肉細胞の一つ一つが広範囲にダメージを受け、収縮できない状態になっていたことがわかりました。
つけられた病名は「劇症型心筋炎」。滅多に使われることのない病名で、原因不明、最後は心臓移植しか治療法がないとされてきたものです。心筋梗塞は血管が詰まって起こる病気ですが、そのような変化はまったくありませんでした。トゲトゲ蛋白の危険性が改めて浮き彫りになったようです。異物混入事件とは無関係と考えてよいでしょう。

いずれにしても、できる範囲からでも積極的な調査は絶対に必要です。司法解剖など原因究明の努力をせず、統計的な推論も行わなければ、ずっと「相関関係不明」の状態は続くことになります。


命題の否定について(数学)
「因果関係不明」。これは、「因果関係」は(今は)結論できない、ということです。『「今はわからない」と言えることの重要性 』で述べたとおり、文字通り因果関係はわからない、という意味です。将来、因果関係が立証される可能性もあるし、ずっと不明のままの可能性もある。
決して因果関係を否定していない、結論を保留しているに過ぎないことを押さえておきましょう。


以上を踏まえ、新聞記事のタイトルを見るのは興味深いです。
国が発表したことを、そのまま記事にしているもの:
・中止のモデルナ接種2人死亡 因果関係不明|日テレNEWS24
・接種後に30歳息子が死亡、涙ぐむ父 因果関係は不明(朝日新聞デジタル)
・モデルナ接種後 死亡の男性(30) 死因は“不詳” 父親「因果関係の調査を」 広島(RCC中国放送)
国や製薬会社の主張であると、はっきり分けて強調しているもの:
・ワクチン後死亡1000件超 国「因果関係の事例ない」(中国新聞)
・接種後男性2人死亡「偶発的」と武田薬品(共同通信)
読み手の知識と意識も問われているようです。

新聞記事も2次情報です。藤田医療大学の発表を伝えた記事の比較「2次情報に注意」でもわかるように、書き手の理解度、どのように説明しようとするかで内容が随分変わってくる例ですね。