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 データサイエンス系学部の新設が相次いでいます。2017年の滋賀大学から増え続け、2023年4月は少なくとも17の大学で開設しました。
 以下は、日経XTECHの4月19日の記事です。参考になるのでまとめてみました。

 新設された学部・学科の中には、データサイエンスに他の分野を掛け合わせた名称が目立つ。「ソーシャル・データサイエンス学部・研究科」を設置した一橋大学と「健康データサイエンス学部」を設置した順天堂大学にその狙いやカリキュラムの内容、育成の特徴などを聞いた。


日経XTECH記事より

社会科学とデータサイエンスの融合

 一橋大学は72年ぶりの新学部・研究科となるソーシャル・データサイエンス学部・研究科(SDS)を2023年4月に開設した。きっかけは文部科学省が特別に支援する「指定国立大学法人」への応募だった。同制度に申請する評価軸の1つとして新学部の構想を立ち上げ、2019年に指定を受けた。

 従来経済学部で統計学などデータサイエンス系の科目を教えてきたが、近年は新聞記事の文字情報や衛星画像など、AI(人工知能)を用いて大量のデータを分析・活用する機会が増えてきた。「機械学習や深層学習など新しい手法が出てきた。社会科学を分析するにはこういった新しい手法も含めて、データサイエンスの科目を教える必要があった」と一橋大学の渡部敏明ソーシャル・データサイエンス学部長・研究科長は説明する。

 商学部、経済学部、法学部、社会学部の文系学部を持つ同大学の新たな取り組みは学生の注目も高い。2023年の志願倍率は6.1倍となり5学部中最も高い倍率だった。入試は数学の配点が高く、理系の受験生が受験しやすくなっている。

 学部の1学年の定員は60人。計18人の教員を採用した。カリキュラムは1・2年次からプログラミングや線形代数などデータサイエンス科目を学びつつ、経済学や金融、社会学などの社会科学科目を履修する。3・4年次は応用人工知能や金融市場データ分析など、従来の一橋大学では見慣れなかった科目の名前が並ぶ。「社会科学の理論とデータサイエンスの技術を融合する」と渡部学部長・研究科長は特徴を説明する。

 目玉はPBL(Project Based Learning、課題解決型学習)という演習の科目だ。企業や官公庁から講師を招き、6人程度に分けられたグループが具体的な課題を設定し、データ分析を駆使した上で、成果物を提出する。データを活用して、官公庁における政策立案や企業での意思決定を通じ、社会課題を解決できる人材の育成を目指す。

大学が蓄積したデータを活用

 順天堂大学は今春、健康データサイエンス学部を開設した。健康に特化したデータサイエンスの学部は国内初だという。定員は100人(2023年は101人が入学)、教員は13人でスタートする。

 「データサイエンスだけではなく、順天堂の一番の強みであるスポーツや医療の分野を生かせる健康というテーマを加えた。医療系の素養があるデータサイエンティストを育成したい」と青木茂樹順天堂大学健康データサイエンス学部長は狙いを語る。カリキュラムは1・2年次に数理統計やコンピュータ科目を学ぶと同時に、同大が得意とする健康医療やスポーツ科目を履修。3年次以降は応用統計や健康医療データサイエンス科目を履修するカリキュラムだ。

 3年次後期から「医療データサイエンス」「スポーツデータサイエンス」といった同大ならではのテーマを研究する。例えば、医療データサイエンスでは同大学が蓄積したデータなどを活用して、教員と学生が一緒にAIモデルを構築していく。具体的には医師をサポートする、もしくは患者の相談に乗ってくれるAIモデルを想定する。

 順天堂大学が同学部を新設した背景には、医療分野でのIT人材不足がある。磁気共鳴画像装置(MRI)で撮影した画像の解析や論文の根拠となるデータの作成など、IT人材が不足していることにより、医療データを活用しきれていない状況があった。こういった背景からデータサイエンティストの育成は喫緊の課題となっており、それに呼応した格好だ。同大学はさらなる専門人材育成のため、2025年にこの分野での専攻を大学院に開設することを目指す。

 国は人材育成を急ぐ。政府は「AI戦略2019」に沿い、2021年度から「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」として、大学などの教育機関に対しデータ人材の育成を支援する取り組みを開始した。育成目標として2025年度までに約50万人の大学・高専生にこうした分野のリテラシーを付け、さらに約25万人に応用基礎を付けるとしている。

 各大学が育成する専門性の高いデータサイエンス人材は、日本の将来を大きく左右していきそうだ。

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