議会で「産業振興政策」について質問しました。
12月11日、ふじみ野市議会で、一般質問で「産業振興政策」について市役所の考えを聞きました。
(趣旨)産業振興政策を取り上げたのは、ふじみ野市の生産額が近隣自治体に比べ、かなり低いことによります(下記参照)。
日本経済はこの30年間、低迷していますが、大都市近郊圏におけるその悪い原因例が、本市に集まっている可能性は高いと考えられます。そこで、「生産額の成長に必要な施策」「本市企業のデジタル化支援策活用事例」「女性の賃金上昇の支援策」「産業戦略の策定」について質問しました。
(目的)もともと一人当たり生産額が低く、それへの認識が低く、評価がみられなかった本市ですから、正直、期待はできないところです。お役所組織が大転換するには、外圧、トップの決断などがなければ難しい。今回の質問は、市役所の多少の刺激になること、市民の方の覚醒につながることができればよい、一石を投じる、という意味で行いました。残念ながら、準備の段階で、予定になかった質問「道路の振動の測定」「防犯灯設置の行政指導」が加わったため、再質問の時間がほとんどなくなってしまいましたが、
市民へのアンケートでも、産業雇用政策については、満足より不満足が多い状況となっています(下記参照)。元公務員の私としては、今回の質問で、市職員の覚醒につながることを期待しています。
それでは、少し長いですが、私の質問と市役所の回答をご覧くださいませ。
(質問)日本の産業振興が長年にわたり不振であることを否定される方はいないでしょう。IMFの試算によると、本年、日本のGDPが人口が日本の3分の2であるドイツに抜かれるとのことです。日本経済の低迷は、人口減少を主要因とする見方がありますが、人口が少ないドイツに抜かれるわけですから、別の要因の検討が必要です。
一人当たりGDPでは、物価が日本の6割前後とされる台湾に肉薄されています。これは、日本の生産性の低さを示しています。生産性が低いのは、この30年間、企業が諸外国に比べて、設備投資を増やし、生産額を増やしてこなかったためで、本市の企業、産業においても同様と考えます。こうした産業、経済の状況について市民の方とお話する機会があります。
悔しい思い、あきらめ、思いはそれぞれです。市役所のみなさんのご友人の間ではどうでしょうか。
我々にはどういった経済、産業政策をつくっていくべきなのでしょうか。
今の若い方に現在の経済や産業の状況を引き継ぐことに、反省以外感じることはできません。私の質問は、反省しかない経済・産業政策について、本市の「経世済民、民を救う」今後の取組をうかがうものです。
一番目の質問「生産額の成長に必要な施策」です。
埼玉県の統計によりますと、本市の就業者一人当たりの市町村内純生産額、令和2年の額は、419万6千円です。近隣自治体と比較して低い状況にあります。例えば、三芳町とは155万円、川越市とは109万円の差があります。就業者一人当たりの生産額を上げる上で、必要な施策についてどのように考えていますでしょうか。また、実際に取られている施策があればうかがいます。
(回答)
現在、IT化、DX化の推進により、労働生産性を向上させている事業所もあり、商工会においても生産額向上に向けた支援等も実施しています。
(再質問)
支援の具体的な事例は。
(回答要旨)
ふじみ野市の認定を受けた「先端設備導入計画」に基づき新規取得した設備について、要件を満たせば固定資産税の課税標準の特例を受けることができます。これにより、生産性の高い設備の導入を図ることができると考えています。商工会では、販売促進セミナー、展示会セミナー、事業計画の作成支援を行っています。
(意見)
時間の関係で質疑はここまでとなりました。実施策(再質問への回答)の評価が求められるところです。担当課には「評価とそのフィードバック」が重要と伝えておきました。
続いての質問「本市企業のデジタル化支援策活用事例」です。
(2)生産額を上げるためには、デジタル化、デジタルトランスフォーメーション、DXの推進が有効と考えます。企業のデジタル化、DXの推進には、国や県で様々な支援策がとられていますが、本市での支援策活用の事例をうかがいます。
(回答要旨)商工会によるDXセミナー等の開催に加え、必要に応じ、埼玉県産業振興公社や専門家等と連携を図っています。
【意見】国や県の支援策の活用事例は「特にない」ということです。企業移・事業者訪問もしていないようであり、情報がないのかもしれません。「調査なければ政策なし」ですので、事業者訪問、ニーズの聞取りを提言しました。
埼玉県産業振興公社は、DX推進ネットワークという枠組みを設けて、相談、人材育成、セミナー、ソリューション事業者紹介、資金、専門家派遣といった取組を行っています。この取組は、令和4年度には、経済産業省関東局の実証事業とされていました(下記URL参照)。本市諸産業においてその果実をぜひ共有できる状況に導くことを提言しました。
https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/dxcommunity/pdf/03.pdf
「DXセミナーやDXの推進に向けた支援を重ねている」とのことでした。成果はまだ確認できていないかもしれませんが、やりっぱなしではなく、フォローアップ、対象者の変化など事後評価を行うことを担当課に伝えておきました。
(質問)3つ目の質問は、「女性の賃金上昇の支援策」です。
日本の一人当たりGDPが諸外国に比べてこの30年間、低迷している理由には、設備投資が伸びてこなかったことが主因と考えられますが、このほか、女性の賃金の低さが挙げられます。「108万円の壁」制度などといわれますが、女性、特に子供の出産後の男性並みの正規就業の比率が低い、賃金が低い、ということです。このことはかつては諸外国においても似たような状況でしたが、この30年で男女の賃金差は縮小しています。女性の大学進学率が5割を超える現在、女性活躍を推進する上でも、女性の賃金上昇の支援策についてうかがいます(下参考記事)。
(回答要旨)県と連携して、女性向け就労セミナーを実施、また、県女性キャリアセンター等からの情報を周知、啓発しています。
【意見】県と連携して就労セミナーを開かれたとのことですが、賃金の上昇、あるいは非低賃金の就労についてどのような情報提供や教育を行ったのかが、不明です。この施策もやはり、やりっぱなしではなく,事後評価、参加者のフォローアップが必要と担当課に伝えました。
(質問)4つ目の質問は、「産業戦略の策定」です。
産業振興策を実施する上で、いわゆる戦略を策定することは、有効と考えます。戦略というのはもともと軍事用語ですが、中長期的目標とそれを達成するための手段からなります。情報技術の発展により社会生活が劇的に変化し始めている現在、新たなる将来の産業振興策を描くうえで、どういった目標を持ち、そのためにはどのような手段をとるのか、すなわち産業戦略、ビジョンを明確に定める重要と考えられます。
私が、視察した京都府宇治市では、2019年に産業戦略を策定しているのですが、従業者数、生産額、移出入額を重視し、製造業を主要産業に位置付けたとのことです。つまり、雇用、生産額、移出額を増やす、という明確な目標を打ち出しました。近隣の京都市や京都府南部の自治体も同様に、産業戦略、ビジョンを策定していますが、本市の考えをうかがいます。
(回答要旨)
現在、「中小企業及び小規模企業振興計画」の策定を進めています。この計画では、「中小企業及び小規模企業振興基本条例」(下記PDF参照)に定められている3つの基本理念及び11の基本的方針に基づき、様々な施策を進めていきます。
商工会とともに、多くの事業者の意見を聞きながら、時代の変化に適応した持続可能な産業振興の形を作り上げていきたい。
https://www.city.fujimino.saitama.jp/material/files/group/35/zyoreian.pdf
(意見)
「持続可能な産業振興の形」というのは、よくわかりません。産業振興の形は、日本においても外国においても、江戸、明治、戦後も常に、変化し続けていると思います。
「産業戦略は策定しない」という回答なのですが、中小企業及び小規模企業振興基本条例は、生産高や経済数字といった明確な、マクロ経済の目標がありません。マクロの経済を考える上では、大企業、働く人の賃金、生産高、生産性などをとらえた目標の明示と手段の明確化が必要です。
中小企業及び小規模企業振興基本計画は結構なのですが、企業・事業者目線であると思います。新たな産業、マクロの産業政策、働く人の賃金上昇、労働移転、人材教育、交通、物流、土地利用などは含まれていますでしょうか。産業政策とは、企業・事業者目線以外にこういったものを含みます。 「商工会とともに」とよくおっしゃるのですが、国や県が商工会議所とともに、産業政策を行うとは聞いたことがありません。他の自治体ではどうでしょうか。産業政策で評価を受けているところは独自の産業経済政策を展開しているところが多いです。商工会と自治体の職責、権限は自ずから異なります。商工会は、小規模事業者会員の互助組織であり、市内経済や産業配置、賃金上昇を目的とする組織ではありません。その点を踏まえた独自の、マクロの産業政策を求めました。
産業政策も相対的評価ですから、V字的回復には、外部や先進者の知見を取り入れることが必須です。宇治市の例ですが、京都の大学、経済界から多くの方を産業戦略の策定メンバーに迎え入れました。どん底にある状況から奇跡的に脱出するには、なみなみならぬ知見と力、覚悟が必要です。生みの苦しみと言いますが、本市が、たとえ苦しみを伴っても、次世代に引き継ぎができるような有効な政策を生み出していかれることを心から応援します。
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