心を育てるまち、高知県いの町へ
10月、高知を訪問した際、短い時間でしたが、いの町役場を訪れ、「菊池学園」の資料をいただきました。菊地学園について、明確な定義があるのか不明ですが、実際に存在している学校の名前ではなく、いの町の教育特使である菊池省三さんの教育法などを実践しつつ、教育について不断に研究していく、いのまちでの取組のことと理解しています。
菊池さんの教育法は、たくさんの著書や動画などで知ることができます。私のいくつかの著作を読みましたが、「菊池省三流 奇跡の学級づくり」という本が、菊池さんの教育法を知る上でおすすめの一冊といえます。
菊地さんは、小学校での教師を30数年されてきました。その中で、いわゆる「崩壊学級を言葉の力で立て直す」という信念と実践で、子どもの成長を後押ししてきました。言葉の力とは、具体的には、相手を思いやる
言葉であり、「くん、さん」づけで子どもを呼びます。今でも、子どもを呼び捨てにする先生がいるようですが、私は疑問に感じています。菊池さんは、「先生も子どもと一緒に成長する」「子どもに教えられる」と言います。先生が子どもを尊重し、子ども同士がお互いに尊重する、人としての成長が教育の基本です。そのためには、先生の人格形成や修養も非常に重要といえると思います。
菊池先生の教育法では、「ほめ言葉のシャワー」「価値語」が有名です。ほめ言葉のシャワーとは、子どもどうしが子どもを褒め合う教育法で、道徳や修養が形成される効果があると思います。
価値語とは、自分自身や相手、集団にとって、プラス思考、プラス行動につながる用語のことです。「考え方や行動をプラスの方向に導く」価値ある数々の言葉を、子どもに呼びかけます。子どもは、自発的、積極的に思考、行動をするようになり、言葉の使い方を知ります。価値語は、ほめ言葉のシャワーでも用いられます。
菊池先生は、子どもに「甘い」わけではありません。「叱る」ということも教育の重要な方法ととらえています。ただ、叱るは、怒るではありません。叱る理由を説明し、子どもにそれを納得させ、そうした言動を改めるようにしていかなければなりません。
私自身、台湾で日本語の高校教師をした経験がありますので、授業研究といったら大げさですが、そういったこともしたことがありますが、技術的なものであり、菊池先生が大切にしている教育観というものはあまりありませんでした。教育観とは何でしょうか?
教育基本法第一条は、以下の条文となっています。
教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
「人格の完成を目指す」教師や学校、教育委員会、そして自治体の関係者
は、このことを忘れず、自らの人格の完成を省みることが必要と考えます。
教育関係のみならず、今のしごとでは、イデオロギーと関係なく、すいぶんぞんざいな言葉を浴びることが少なくありません。人としての成長を十分に経る過程がなかったとするならば、とても残念なことです。
私は、今から10年前、四国のお遍路を歩いていたときは、毎日、自分とは、人とは、と考えながら、過ごしていました。それから、ずいぶん経ちました。先日、四国を訪れて、こころのペースが少し、あのころに近づいたような気がします。
「菊池」 その授業の中で、「あなたは何が好きですか?」と聞き合うコミュニケーションゲームをしました。女の子が「国語は好きですか?」と訊いたら、相手の男の子は「ウルトラめちゃくちゃきらい」と答えました。そ
のときにクラスの担任の先生は、顔をしかめて負のオーラ全開で、その男の子を見ていました。教師が、子どもの言葉をそのまま額面どおりに受け取っていちいち態度に出していては、子どもも教室も変わりません。その様
子を見て、私は、根底で子どもへの信頼がないと教師と子どもとの関係をつくることができないということを改めて思いました。先生が考えを変えていくしかないのです。
(略)今の状況では、私は基本的には 1 時間の授業で勝負をしなくてはいけません。ですから、叱ったままにしてそのまま帰るというわけに
はいきません。一般の先生方もその意識をもって年間200日の授業を考えてもらうとアプローチの仕方も変わってくるかなと思います。コミュニケーションゲームの話に戻りますが、相手の女の子が偉かったのは、その男
の子に対して何を聞いたら「はい」と答えてくれるかを本当によく考えて質問を探していたことです。周りの子どもたちは、「はい」を20回ぐらい引き出していましたが、その子は 4 回でした。だけど、相手のことをいちば
ん考えながら質問をしていたのがよく分かりましたので、私は、たくさんほめました(いの町教育委員会資料より)。
菊地学園を受けて、いの町教育委員会は、「こころの栄養素」として、以下の言葉を掲げています。
「大切」 自分を大切にしてもらっている
「安心・安全」 どこにいても暴力やいじめがなく安心できる
「関心」 関心をもってもらっている
「信じる」 まだ見ぬ可能性を信じてもらっている
「あるがまま受容」 欠点も失敗も含めて丸ごとOK
「ほめる・みとめる」 日々、ほめられている みとめられている
「聴く」 つらいこと、悲しいことも、共感してもらう
「感謝」 ありがとうの言葉、存在への感謝をもらっている
「笑顔」 いつも笑顔に包まれている
こうした言葉と気持ちが、ふじみ野の子どもたちに育成されていくことを願います。また、同じことは、大人社会でも必要で、こうしたつながりを持つ、友人や仲間を大切にし、地元でつくっていきたいと考えています。
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