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【十三機兵防衛圏】ネタバレなし感想 ノスタルジーと不穏とSFを楽しめ

1985年、突如現れ街を襲う怪獣。逃げ惑う人々と、その流れに逆らうように怪獣へ向かっていく少年少女がいた。少女は機兵と呼ばれる巨大ロボットに乗り込み、それを見ていた少年は「これは決まっていたことなんだ」と回想する。怪獣との決戦に挑む13人の少年少女たちの軌跡を辿る追憶と、未来を掴み取る戦いが始まる。


十三機兵防衛圏クリア。所要時間約40時間。


ネタバレなしで語れる良かったポイント

ノスタルジーと不穏

舞台は1985年。最初に動かせる鞍部十郎のエピソードでは、友達の柴くんがビデオテープを貸してくれる。校舎は木造でやたらと古めかしく、窓から差し込む夕日の美しい光景だ。わたしは1985年のことは詳しくないけど、そう言う人でもこのゲームのかもすノスタルジックな雰囲気を楽しめると思う。ファンタジー世界観のゲームに比べれば、十三機兵の舞台は現代日本で現実的な世界観と言っていいだろう。その中にあるふとした非日常感が、わたしは好ましいと思う。

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( どのマップも光の描写が美しく、そこはかとなくノスタルジック )

BGMは単体で目立つタイプのものではないけど、ゲームの雰囲気に溶け込んだ雰囲気のある曲が多かった。FF12の崎元さんと聞いて納得。タイトル画面の曲は特に気に入っているけど、ボタンを押すとモノラルがステレオになったかのような迫力の出る演出も好きだ。


わかるのにわからなくなるサイエンスフィクション要素

追想編では13人のメインキャラクターが決戦に向かうまでを描く、舞台の背景たる複雑かつ濃密なSFシナリオが楽しめる。最初はわからないことだらけなのは当然としても、エピソードを読み進めていて「明らかにわかったことがあるのに、わからない」という感覚に陥ったのはこのゲームが初めてだ。例えば序盤において、それまでのキャラクターは1985年が舞台だったが、なんの説明もなく三浦くんのエピソードは1945年が舞台となっている。この時点で、恐らくプレイヤーの大半は重要な情報を得たとピンとくるはずだ。更にシナリオを進めていくと、SFでよく聞く重要そうなワードがたくさん出てくる。どんどんと新事実や情報が得られて物語が進んだような感覚が一瞬だけあるのだけど、一方で物語の全容がさっぱりわからないのだ。普通、これだけ大きい情報を手に入れたらなんとなくその作品の予想はつくものだ。だけど十三機兵はネタバラシされているような感覚だけはあるのにいつまで経ってもわからない。わたしはある情報を手に入れるまでは、ずっとそんな感覚でエピソードを読み進めていた。常に引きがある、予想のつかないシナリオであるため、ハマる人はさくっとシナリオを読み進めてしまうような面白さがあると思う。

時系列がバラバラであること、13人ものキャラクターの群像劇であること、シナリオをかき回す複数の要素、十三機兵のシナリオは非常に複雑で、全てのエピソードを解放しても一瞬で全てが飲み込めるほどにはわかりやすいものではない。だけど全てがわかり始めた頃には、想像を超える驚きと物語を紐解く喜びがあると思う。

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( 1945年、当時の日本は戦時中である )


なんだか全てがちょうどいいテンポ

このゲームはとにかくテンポが良い。わたしが気に入っているのは、キャラクターのセリフの演出とテンポ感だ。メインとなる追想編では大半はキャラクターのやり取りをフルボイスで楽しむことになる。正直、わたしはフルボイスがそんなに好きではない。ムービーで画面に動きがあるゲームだとそんなに苦痛でもないのだけど、そうではないゲームでは申し訳ないけどセリフを読み切ったらボイスを飛ばしてしまうことが多い。ボイスを言い切るのを待つのが好きではないのだ。そんなわたしだけど、十三機兵ではフルボイスに煩わしい思いを抱くことなくほとんどのセリフを飛ばさずに楽しむことができた。それはキャラクターのセリフがちょうどいいところで区切られて、小気味良いテンポで進められる快適さがあったからだ。

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( ちょうどいいテンポで会話が進む )

セリフも吹き出しが出るような演出ではなく短い文章がキャラクターの頭上に表示され、別のキャラクターが関係のない話を同時にすることもある。また、このゲームではあまり叫んだり感情的になる演技がない。絵本や牧歌的な印象すら受けたくらいだ。これらの要素が噛み合わさってか、乱高下しない雰囲気が余計にボタンをテンポ良く押させてくれる。

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また、個人的には叫んだり感情的な演技が少ないところもテンポが良くて好ましかったけど、声優の凄さを感じた作品でもある。今まで声優の演技がすごいなと思う瞬間というのは「叫んだり感情的な演技」をするときがほとんどだった。それらがない十三機兵ではあるが、純粋にキャラクターになりきる、キャラクターを演じると言う意味で声優さんすごいなあと感じることとなった。これについて詳しくは、ゲームをやってもらうしかないのだけど。


初心者でもなんとかなるタワーディフェンスバトル

アドベンチャーゲームというゲームジャンルにあまり触れたことがなく詳しくないけど、マップを動かすとか、敵を狙い澄まして撃つとか、コンプリート要素とか、十三機兵はあまりゲームらしい要素でがっつり楽しむタイプのゲームではない。シナリオの読み解きがメインイベントとなるゲームだ。機兵という巨大ロボットがメインのゲームではあるが、機兵を操るシーンの方がサブの印象である。

崩壊編ではタワーディフェンスのバトルが楽しめるが、グラフィックが今時のゲームのような華やかさや派手さのあるものではなく、人を選ぶのは間違いない。わたしもこのバトルをメインにこのゲームを選ぶことはないだろうと思う。でもこのバトルがなかなか緊迫感があって楽しめた。普段あまりやったことないゲームのジャンルだけど、なんやかんやでなんとかなる難易度だったのもありがたい。グラフィック上の派手さはないけど、敵がまとめて片付いたときの派手さと爽快感が楽しい。機兵は第一世代から第四世代まで種類があり、それぞれ接近戦向けだったり遠距離向けだったりして各キャラクターに割り振られている。彼らの使い分けも楽しかった。

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( バトルの画面はこんな感じで、機兵や敵のグラフィックはほぼアイコンだ。画面の派手さはないけど、敵の圧倒的物量に押される緊迫感や一網打尽にする爽快感を味わえる楽しさがあった )


何も知らないうちに遊ぶべき

わたしはこのゲームを知り合いにおすすめされて始めたけど、ゲーム性やキャラクター、シナリオの雰囲気も本当に何一つ知らないゲームだったおかげで120%で楽しむことができたと思う。どのゲームにも言えるけどゲーム性は人を選ぶので必ずしも楽しめるという保証はないけど、何も知らないひとは何も知らないからこそ始めるべき作品だと思う。

ニンテンドースイッチ版が出るこのタイミングで初プレイすることになったけど、今後も展開を追っていきたい作品です。

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( この作品をプレイした人は焼きそばパンが食べたくなるらしい )

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