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【押川剛;50歳からのキャンパスライフ】18 干渉しない・干渉させない

この間、大学の集まりで学生ちゃんに会い、またしても「へえ!」という話を聞かせてもらった。それはイマドキの学生ちゃんは「他人に干渉しない・干渉させない」という生き方を徹底しているということだ。彼らがその生き方を選んでいるというより、そのシステムの中で育てられてきた、というほうが正確だな。

彼らにも友達付き合いはあるし、孤高に生きているわけではない。だが、とにかく必要以上に他人に関わらない。聞けば、小・中・高校の教育の中で、「他人に介入しない。干渉しない」ことを教えられているのだ。

「じゃあ、同級生がいじめられているのを見たらどうすんの?」と聞くと、「それは学校の先生に伝えることになっているので、先生に言います」という。不登校やひきこもりについても、俺がガキの頃は、家まで押しかけて「学校に来いよ」「外に出ようぜ」とおせっかいを焼く文化があったが、今の学生ちゃんにしてみれば、そんなおせっかいはもはや「タブー」の領域なのだ。

彼ら曰く「不登校やひきこもりになる当事者だって、周りが介入しないのを分かった上でその選択しているのだから、それでいいんだと思いますよ」ということだ。これが若い人の実感なら、「地域共生」なんて、絵空事以外の何ものでもないな。

ある学生ちゃんに「彼女とか作んないの?」と聞いたら、「押川さん、それは『子ども作らないの?』と同じくらい、聞いてはいけない質問ですよ」と指導を受けた(笑)。結婚なんかも「そんな面倒なこと、わざわざする必要があるんですかね?」といった調子だ。

もちろん若い人が皆そうだとは思わない。だが俺の10代、20代の頃とは、まったく違う。振り返ってみると、俺の若い頃はとにかく「ヒマ」があった。今の学生ほど真面目に勉強していないし、ネットもスマホもない。ヒマを潰そうと思ったら、友達とつるむか女の子に声をかけるかしかなかった。本を読んだり映画を見たりするにしても、外に出なければ始まらない。地方では経験できないこともたくさんあり、ただひたすら、東京に憧れた。

今はそんな必要はまったくない。友達や彼氏・彼女がいなくても幾らでもヒマは潰せるし、流行りの音楽も映画もネットとスマホがあればことたりる。北九州に住んでいると災害が少ないこともあり、「大地震が起きるかもしれない東京になんて、わざわざ行く気になれない」という。就職にしても、安定狙いの公務員が大多数を占める中、「霞が関で働きたい!」という目標でもない限り、卒業後はほとんどが実家(西日本圏内)に帰っていく。

印象的だったのは、コロナで大学に通うことも叶わなくなり、「もう友達は高校までに作っておくしかないですよね」と言う学生ちゃんがいたことだ。生まれ育った地域で一生を完結する。東京の大学生はまた考え方が異なるのだろうが、地方ではおおむねこんな感じだ。ローカル力はますます強まっていくのだろう。それはそれで、いいことでもある。

矛盾するようだが、これが現時点での日本における「多様性」のあり方なんだろうなあと俺は思った。深く関わらないことが、相手を認め、受け入れることになる。俺は改めて、自分が「昭和のヘンなおじさん」であることを実感した。

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ゴウ会長はじいさんなだけあって、介入が激しいな!

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