見出し画像

【押川剛;50歳からのキャンパスライフ】13  “健康”が一番大事だよ!

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京など7都道府県を対象に「非常事態宣言」が発令された。すでに「いつ出るのか」という状況だったので、さほどパニックにはなっていないように思える。しかし明日どうなるかはさっぱりわからない。そんな毎日が続いている。

コロナもだが、経済面でも、いろんな業種の人から「もうアカン」という連絡がくる。もともと斜陽だった産業はまだしも、コロナ前までは「永遠に安泰」と思われていた会社も含まれている。リーマンショックなど遥かに超える状況だが、誰もがどこか非現実的で、地に足がついていないように見える。その余波はこれからじわじわと社会を覆うのだろう。

俺も、大学が春休みの間は「飲み屋のおやじをやるよ!」と張り切っていたのだが、コロナ騒ぎで吹っ飛んでしまったな。そして4月22日から前期が始まる予定だった大学も、GW明けまで再延期となった。長い春休みである。

「アフターコロナ」という言葉を見かけた。コロナ前とコロナ後では、価値観も生き方も大きく変わらざるをえない。これまでの「当たり前」が「当たり前」でなくなる。ギリギリまで「今」にしがみついて粘って、強制退出させられるのを待つのか。それとも自ら「下野」するか。長い目で生きる人たちは、こうなる前から「アフターコロナ」を見据えて生きていたように思う

明るい話題は見つからないが、個人的には、さほど悲観していない。生活をコンパクトに、シンプルに。命があり、健康であることに感謝して生きる。その腹くくりができれば、なんとか生き延びることくらいはできるのではないか。

今は俺も外出を自粛し、家でおとなしくしている。さすがに身体がなまるので、ときどきウォーキングに出かける。散歩道では地域住民の方々ともすれちがう。密集してラジオ体操をしている高齢者もいて、「ん?」と思うこともあるが、それよりも気になるのは、つらそうな顔で下を向いて歩いていたり、疲れた顔でベンチに座っていたりする年配の男女である。

職業柄、そんな姿を見かけると、「もしかして家に長期ひきこもりの子供がいて、行き場がなくなったご両親なんじゃないか」と考えてしまう。というのも、長期ひきこもりの相談にくる親の中には、本来なら定年退職して悠々自適に過ごしているはずが、子供がひきこもりゆえに、「家にいてもトラブルになるだけだから……」と、暇つぶしのように仕事に出かけている方がけっこういたのだ。

あるいは、かなりの高齢なのに、「〇時~〇時までは家にいるな」と子供から命じられ、仕方なくパートに出かけていたり、パートが終わってからも健康ランドで時間をつぶしたり。そういう母親もいた。

そういった人たちは、この外出自粛、会社も休業の中で、どんな生活を送っているのか。家に居場所がなくて、外出せざるを得ない、危険とわかっていても、人の集まる場所(ファミレスやフードコート)を利用せざるを得ない人もいることだろう

それに俺が相談を受けた長期ひきこもりの当事者には、強迫性障害を患っている人が多かった。手洗いや入浴に時間がかかりすぎて、皮膚がただれてしまっているのに、精神科だけでなく皮膚科の診察すら拒否する。体がかゆくてさらに精神状態が悪化する……そういう患者さんもいた。コロナのせいで社会全体が手洗い・消毒に過敏になっている今、彼らこそ、いつも以上に大変なことになっているのではないだろうか。

ちなみに精神科病院の現状はといえば、コロナの影響で新規の診察や入院を停止している病院も出てきている。公表はされていなくとも、職員がコロナに感染したため(あるいはその疑いがあり)、順次PCR検査を行っている病院もあると聞く。

入院中の患者さんの面会や外出等も禁止になっているところが多い。これはグループホーム等の施設も同様で、共同生活を行う患者さんの中には、ふだんとは異なる生活にとまどい、精神的に不安定になっている方もおられるようだ。

院内感染のリスクはゼロではないが、それでも、自宅にいるよりは心身のケアもしてもらえる。たとえば、病識がなく陽性症状の強い患者さんの場合、本当にあちこち出かけてしまう。ついこの間も、被害妄想が強く、それが親きょうだいだけでなく、遠縁の親戚や近隣住民にまで向かい、ことあるごとに家を訪問してしまう、という患者さんの相談を受けた。いつコロナに感染してもおかしくないし、また、周囲にばらまいてしまうか分からない。ただでさえ周囲の人々は本人の言動におびえているのに、コロナへの恐怖まで加わったら、まさに事件沙汰になりかねない。

この時期に、患者さんを病院や施設で見守ってもらえることは、圧倒的に安心・安全であり、何にも代えがたい価値がある。もちろん、このような状況下でも職務を全うされている医療従事者や職員の方々のおかげであり、頭が下がる。

以前から俺は、明らかに精神科での治療を必要としている長期ひきこもりの相談には「早く医療につないだほうがいい」と伝えてきた。そのことについて、まるで人権侵害のように批判されてもきた。「本人が納得するまで待つ」と言って先延ばしにする親も多かった。しかし「早く医療に」と訴えてきたのは、いつ、今回のようなことが起きるか分からないと思っていたからだ。ウイルスしかり、医療体制の変化しかり。実際に、精神科病院への入院は、年を追うごとにハードルが高くなっている。患者や家族が病院(治療内容)を選別できた時代から、“選別される”時代に変わったのだ。今後はますますそうなるだろう。だから、【チャンスを逃すな】と訴えている。

コロナ騒動が落ち着くまで、精神科病院への入院は制限されるだろう。自傷他害行為がある場合は措置入院ということになるが、それもどこまで積極的に受けてもらえるかわからない。しかし現実には限界を迎えている家族もいることだろうから、万が一の時に適切な対応をとってもらえるよう、保健所や所轄警察署に事情を話し、相談履歴を残しておくべきだ。緊急事態宣言下とはいえ、人権に関わることはストップしないため、行政への相談は可能である。

いろいろと制限がかかり、先のことを考えると不安にもなる毎日だが、ピンチはチャンスでもある。いつもと同じ規則正しい生活を送り、睡眠や食事をしっかりとる。適度に運動をする。そして信頼のおける人と電話やスカイプで連絡をとりあう。「完全に」とは言えないまでも、コロナもいずれは落ち着く。明日のことはわからない今だからこそ、1年後、2年後のことを考えてみる。そういうふうにして日々を乗り越えていくしかないだろう。

画像1

愛犬ゴウ会長も元気!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?