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【押川剛;50歳からのキャンパスライフ】14 自粛生活で「考える」

九州は豪雨で再び大変なことになっている。北九州も昨晩は凄い雨だった。今年はコロナのせいで避難生活にも不安が生じるし、いざ復興の段になってもボランティアも集まりにくいだろう。残念なことであるが、豪雨の夏は来年以降も続く。いよいよ「住める地域」と「住めない地域」の差が明らかになってきた。もちろん全国どこでも災害は起こりうるが、その中でも比較的安全な地域を探して住むしかないということだろう。

俺の通っている大学は、前期はすべてオンライン授業である。パソコン操作の苦手な俺は、授業のたびに「どこそこにログイン」だの「zoom」だの、わけが分からず戸惑った。「もう中退すっか!」とまで思ったが、事務所のスタッフに手伝ってもらって、なんとか慣れてきた。
オンライン授業はコロナが理由だが、こんな豪雨が続く時期は、むしろオンラインでよかったとも思う。録画形式の講義なら、分からないところは何度も聞き直せるし、六法全書を片手にじっくり考えながら講義を受けることもできる。なにより都合のいい時間に勉強ができるので、社会人学生にとってはたいへんありがたいシステムだ。

もっとも若い学生さんにとっては、なかなか大変だろうと思う。自宅で集中できなくて、「あとで聞こう」なんて思っているうちにどんどん講義がたまっていく。出欠確認がしにくい分、レポート課題が多い。よほど目的意識が高く、落ち着いて勉強できる環境があって、サポートしてくれる大人がいて……という状況でないと、なかなか継続も難しいのではないか。現に1年のときの知り合いで、連絡のとれなくなってしまった学生ちゃんもいる。

友達にも会えない、部活やサークルもできない、バイトすらままならない。こんな大学生活になることを、誰が予測しただろうか。しかしもっと大変なのは、学校を卒業したその先である。俺の同級生(2年生)も、すでに就職のことで頭を悩ませている。学生ちゃんたちの目の前に広がるのは、未知なる世界である。今はコロナばかりが悪者にされるけど、気候にしてもAIによる産業革命にしても、時代はすでに大きな変革を迎えていたのだ。コロナはそれを「分かりやすく」顕わにしたに過ぎない。

先日、一年次のゼミ仲間とオンラインミーティングをしたときに、俺はこう言った。「これからは、未来予測と問題解決しかないよ」と。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズのような発明はできなくても、5年先、10年先の世界がどうなっているか、脳みそをフル回転して予測を立てて生きていくしかない。未来予測は、自然災害を極力、回避する生き方にもつながる。

そして人間ができる問題解決は、ズバリ“人間”にまつわることである。どんなにAI化、オンライン化が進もうと、対人間の問題だけは必ず残る。こういうご時世だからこそ、資格の必要な職種や、公務員のようなお堅い仕事に人気が集まる。俺の通う大学の学生は、もともと公務員志向が強いのだが(以前のnote「今の若い人は大学で「金の稼ぎ方」を教わっている」でも書いた)、それに拍車がかかっていると聞く。しかしその手の仕事ほど、“人間”のトラブルを解決できる人材を求めている。逆に言えば、“人間”に対する経験値の高い人、トラブルにも臆せずバンッと出て行けるような人なら、当面のところは何やかんやでメシは食っていけるということだろう。

もっとも大きな課題は、これだけいろんなことがオンライン化して、3密を避けろと言われる中で、どうやって対人間の経験を積むかということである。俺が思うに、“知性”や“理性”は、大きな武器になるだろう。コロナと災害で自粛生活が続く中、「学問をしろ」「考えろ」(暗記じゃないよ!)と、天から言われているように俺は感じている。

こんな状況の中、俺にできるささやかな貢献として、漫画『「子供を殺してください」という親たち』には相変わらず力を入れている。7月9日には第7巻が発売。原作文庫にないノンフィクション・シリーズ(ケース)も本格的に始動している。俺の経験してきた各ケースの記録、そして俺の心と胸に突き刺さった記憶、ヤバい経験も総動員してお届けだよ。巻末「現場からの声」は、今回も気合い入れて書いた。最後は宣伝になりましたが(笑)、どうぞよろしくお願いします!

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