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トウキョ版 二十四節気

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#エッセイ

夏至 * 雨の古本屋さんで悶絶する

十年ぶりに蟲文庫に行った。岡山県倉敷市、文字通り古くからの倉が敷き詰められている美観地区…

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芒種 * 時をかけるご朱印帳

私のオフィスは神社の社務所で、お守りやお札を授与する窓は映画館のスクリーンのように大きく…

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立夏 * 都会の神職 

かつて私にとって粽は想像上の食べ物であった。「せいくらべ」という歌に、粽食べ食べ兄さんが…

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啓蟄 * お供えのフルーツが芋にかわる頃

咲き始めた桃の花を、つがいのひよどりがあちこちつついて、花びらがぱらぱらと落ちてくる。彼…

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清明 * 法螺貝の男

三年前の春、祭りが終わって祭器具を片づけていると、首から法螺貝をぶら下げた男がやってきた…

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雨水 * 荒くたい雹が思い出を刺激する頃

二月の終わり、竹箒で落ち葉を掃いていると雹が降ってきた。それまで見たことのないほど激しい…

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小寒 * 秀吉、私が長いあいだ欲しかったものはこれだったよ

豊臣秀吉が所有していた香炉 銘「千鳥」。 かわいい。 こんなにかわいいのが好きだったんだな秀吉は。 この香炉には、桃山時代の盗賊、石川五右衛門が秀吉の寝所に忍び込んだ際、蓋のつまみの千鳥が鳴いたために捕えられたという逸話がある。 エピソードまでかわいいじゃないか。 いいなあ。ほしいなあ。 私はガラス越しに「千鳥」を穴のあくほど見つめる。 全方位から見たいのに後ろに回れない。 本当は家に持ち帰って膝に抱きながら「千鳥」を見たいが、そうはいかないので、ほかの展示品を見て回るあい

大寒 * LDK+N のNとは何の事

神職のふるぽんが、クイックルワイパーを高校3年生の巫女に手渡し、「これ納戸になおしてきて…

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冬至 * 社務所に現れたとんでもない果物

お正月は神職にとって大繁忙期。 ゆえにおせち料理は、もっぱら実家の姉が料理講師をしている…

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小雪 * 巫女の卒論

「今、谷崎潤一郎の卍っていう小説で卒論書いているんですけど」 大学四回生の巫女が紙垂を作…

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霜降 * 参道の正中避けて通るねこ

七五三の着物を着て草履を履いた三歳児が文字通りヨチヨチ歩いてくる。お餅みたいだ。常連の参…

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寒露 * 瓶ビール涼しくすべる寿司レーン

台風が、重たく湿った空気を丸ごと抱え去った翌日。 八十五歳の女友達が久しぶりに会いにきた…

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