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ロックしかねーだろ、人生は (最初の旅 vol.08)

さて、どうやってチケットを購入しようか。
もちろんベトナム語が話せないおれっちが緑な窓口に行っても、いついつの何時のホーチミン-ニャチャン行きのチケット、券種はこれね、なんて言えない、伝えれない。
チケットが買えず困り果てているおれっちを見てボーさんはズイズイと人込みを掻き分けて駅員っぽい人に話をしてきてくれた。少し話したのちに戻って来たボーさんは、なんかチケットはないみたいよ、と言ってきた。うーん、本当だろうか、どうにも信じられない、ここはきちんと自分で確認しよう、今日は絶対に引かない。ボーさんを無視して、地球の歩き方、時刻表、電光掲示板などを何度も見返しチケット購入の仕組みを理解しようとしてみた。

地球の歩き方の情報では、ホーチミン(サイゴン)-ニャチャンはソフトシートで14.5万ドン、ソフトベッドで22.6万ドン、電車は日に6本(E2,S2,S4,S6,S8,S10)あるらしく、時間的にS6の12時50分発、21時24分着がちょうどよい、これだったら夜通し走るわけではないのでベッドは要らない、ソフトシートで十分、値段も抑えられる、今の所持金は30万ドンほどあるのでこちらも問題ない。
しかし、実際の駅にある時刻表は地球の歩き方とはちょっと違くて、S6は12時30分発、20時39分着だった。おれっちは大学ノートに日付、時間、行先を書き、これを見せる作戦にした、完璧だ、かんのぺきだ、つまりかんのぺきたろうだ(妹は菅野美穂)。

地球の歩き方の情報、下のS6の時刻は時刻表の時間

ボーさんは自分がチケットがないと教えたのに、おれっちが何やら粘っているのをつまらなそうに見ていた、おれっちはそれを無視し、大学ノートをギューっと握りしめ(チンコと交互に、チンコはギュッ、ギュッ、ギューとリズミカルに、だってその方が気持ちいいから)列に並ぶ。
正月のアメ横のように人がわんさかギューギューしているが、おれっちは誰にも割り込みされないよう鉄壁なディフェンスをしながら自分の番が来るのをひたすら待った、三十分ほど並んだだろうか、ようやくおれっちのターンだ。
チケット窓口はアクリル板で仕切られていて、そのアクリル板の下側にトンネルみたいにチケットやお金をやり取りするところがある。おれっちは無言のまま大学ノートをそのトンネルに突き入れて、これこれ、これだよ、って変顔(舌先で鼻の穴を交互にドリルする仕草)でアピールをするとノートを受け取ったお姉さんが、フムフムとおれっちの汚い文字を黙読し、それからしばらくするとプリントアウトされた紙をくれた、そこには感情丸出しの「帰れ旅行初心者が!」とも「おめーに売るチケットはねー」とは書いていなくて無感情な「C-1414」と書かれていた。

どうもこの紙切れは順番待ちの番号のようで、電光掲示板を見ると現在C-1000くらいで、おおお、あと400番も待たなければいけないのかい!と絶望の淵から落ちた、両手両足の小指とチンコを骨折した。痛そうにしているおれっちを見かねてボーさんがこの紙切れを持って窓口に行ってくれて何やら交渉っぽいことをしてくれたが、またあかんかったわ、と諦めて戻ってくる。ボーさんからとにかく早く帰りたい気持ちがビンビン伝わってくる。
うーん、この状況はなんなんだ、本当にあと400番待たなければいけないのか、待てばチケットはゲットできるのか、ゲットしてワイルドにアスファルトタイヤ切りつけられるのか?

それにしても先ほどの窓口のお姉さんはおれっちがほしいチケットをきちんと理解していたのだろうか、うーん、どうしよう。おれっちは再度時刻表をジーッと穴が空くほど見続ける、そうするとちょっとずつ穴が空いてその向こう側が見えてきた、穴の向こう側の世界はすでに人間は滅びていた、人工知能を持ったスネークキューブが闊歩する世界、あ、みなさんスネークキューブって知ってる?、おれっちあれを地域のお祭りで買ってよく遊んだよ。

そうこうしているとさらに時刻表の内容がさらに理解できてきた。時刻表には券種も書いていたのだ、電車の席、つまり券種は、3ブロックあって、ソフトベッド、ハードベッド、シートで、さらにそのブロック毎にソフトベッドは1階と2階、ハードベッドは3階建てらしく1階2階3階、最後の3ブロック目がシートで、ソフトとハードに分かれている。つまりソフトシートは3-1って感じだ、そして値段も11.5万ドンであることも分かった。

もし2005年にタイムスリップしてベトナムに行く人のために詳細を下に書いておく。
1-1: ソフトベッドの2階
1-2: ソフトベッドの1階
2-1: ハードベッドの3階
2-2: ハードベッドの2階
2-3: ハードベッドの1階
3-1: ソフトシート
3-2: ハードシート
と券種は分かれていて上から値段が高いわけね。

これを見せてチケットをゲットしたんだよ

そして今回は大学ノートにSoft seat、値段も11.5万ドンと追記して、さらに11.5万ドンを握りしめて(チンコと交互に、ちょっとチンコの方が長めに、だって気持ちいいから)もっかいチケット窓口に向かった。なぜかちょうど人が切れていてので窓口に走りこみ、再度ノートをトンネルに突き入れて、さらに11.5万ドンも一緒に、そうするとお姉さんは頷いて、ついに、ついにチケットを発券してくれた、やった、やったぞ、チケットをゲットした。
ボーさんのところに戻ってチケットをゲットしたことを報告するとなんだかションボリ、チケットがないと言ってしまった手前だろうか。わっはっは、どうだボーよ。



咳をしても一人、コホンコホン。 (ガサガサ) おい、大丈夫か? えっ、誰?