「漂流した救命ボートからの脱出」の感想+α

 ネタバレはしないが、「漂流した救命ボートからの脱出」「閉ざされた雪山からの脱出」「謎だらけの孤島からの脱出」「ときどき先生が見回りに来る修学旅行からの脱出」あたりのふわり漂うネタバレ感はあるかもなので注意。

 「漂流した救命ボートからの脱出」はめっちゃ面白い。
 最近のSCRAP公演はnot for meなものが多くてやや不満足だったが、本当に面白い公演だった。脱出失敗したけど。

 私は2018年ごろからリアル脱出に入り浸るようになった。主に体験重視な公演が好きで、例えば約ネバコラボ(1回目)やまどマギコラボ、君は明日と消えていった、あたりを高評価している。「漂流した救命ボートからの脱出」はまさに体験重視な公演で、40分という時間の中でもその世界観を十二分に味わえた。

 「漂流した救命ボートからの脱出」は「閉ざされた雪山からの脱出」「謎だらけの孤島からの脱出」「ときどき先生が見回りに来る修学旅行からの脱出」あたりの系譜の作品で、私は正〜〜〜〜〜〜直これらの作品は微妙に刺さらなかった。

 「閉ざされた雪山からの脱出」は密閉館がやや薄れてしまっていたのと、探すことのできる空間が広がってしまったのもあり目標がいまいち掴みづらかった。でも本当に雪山に閉じ込められたかのような感覚はめちゃくちゃあった。
 「謎だらけの孤島からの脱出」はラストのアレに対する不満と、2人での参加だったこともありちょっとタスク量的に厳しかったのとでう〜ん⋯⋯ と。あとどうしても周りの人たちが見えてしまい、ときどき熊〜のようにルーム型でやりたかったなあ⋯⋯ と思った。ただ謎と探索、システムはめっちゃ楽しかった。個人的BEST探索公演に入るかも。謎の肉!
 ときどき先生が見回りに来る修学旅行からの脱出はお前、告知と全然違うじゃん、それは〜予想できんし、よくないのでは? 苦手な人いたらどうしようもないじゃんという不満が大きかったのと最後のアレもちょっとなあ⋯⋯ という感じだった。ただちゃんとときどき脱出の系譜だったし、謎の質も高かった。

 悪くはないんだけどね。やりたいことはわかるんだけど⋯⋯ という感想が口から溢れてしまう公演ズ。決して悪くはない、クオリティも高い。でもなんだか惜しかったのだ。ラス謎まで行かずに終わってしまったリアル脱出ゲームのように。

 「漂流した救命ボートからの脱出」では上記3作品の不満がきちんと解消されていた。
 まずストーリーは「漂流した救命ボートからの脱出」というタイトルを踏まえていたし、全く予期せぬ地雷を踏むことはない(事前になんとなく察知できる)と思われる。
 次に、密閉感がある。ちゃんと、完全に、救命ボートに閉じ込められ外界から閉ざされるのだ。見えるのは窓を模したディスプレイに映る映像のみ。周囲にはスタッフすら見えない。ヒントの出し方も上手い。
 最後に、理不尽さがない。人によってはラス謎納得いかね〜となるかもだけれど、私はなるほどな! そうだな! ってめちゃくちゃスッキリした。全体を通して古き良きSCRAPみのある謎。これだよこれ、これがやりたかったんだよ。
 それでいて上記3公演の「やりたかったこと」がひしひしと伝わる。ソロ参加でも問題ない。いや身内で固めていった方が気楽だとは思うが、ソロでも楽しめると思う。だって実際に救命ボートに乗るようなシチュエーションなら見知らぬ他人と乗り合わせることになるでしょ? リアリティがあって良いと思いません? まあでも可能なら身内で固めていったほうが⋯⋯

 「限られた時間の中でさまざまな謎や暗号を解き明かし、最後に◯◯に気付き、見事◯◯したチームこそ、今回のリアル脱出ゲームの成功者です!」というフォーマットの中で、もしくはそれを超えて新たな価値、物語体験をどう提供するのか? リアル脱出ゲームの「エンディング」とは何か?

 これらの問いと(特に近年)向き合い、作品を生み出し続けているSCRAPだからこそできた公演だと思う。素晴らしいよ。脱出失敗してもなお面白いと言える公演。

 陰ながら応援しています⋯⋯ SCRAP。
 リアル脱出フェスどうしよっかなあ。


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