キングオブコント2019の感想・言いたくなったこと

各コントについて、順番バラバラで気の向くまま、私個人の偏った経験と偏った認識を元に、感想や言いたくなったことを書いていきます。特に言うことがないネタについてはスルーしています。


◎GAG

・GAGは例年「まぁそれほど」ぐらいなのですが、今年はめちゃくちゃ好きでした。演技が過剰にギャグマンガ的な感じが受け付けないところがあったのだと思うのですが、今回はそれが劇中劇ならぬコント中コントの中に納められていて見やすかったのだと思います。

・ツッコミが全部ちゃんとボケにフィットしていて違和感がなく、しかも言葉の力がめちゃくちゃ強い。

・「聞きたいことを簡潔に」これツッコんでないけど広義にはツッコミですよね。

・「順に、です」これがウケてたのめちゃくちゃ気持ちよかった。

・「いかついオウム返し」

・「市役所の安定なめんなよ」っていうパンチラインでしめるのも大好きです。ブスいじりの是非とか全部なぎ払って、結局最後「市役所の安定」が勝つ。


◎うるとらブギーズ(一本目)

・ナイツ塙さんの著書『言い訳』で、各審査員が何を評価していたかみたいな話があって、曰く松本人志は他の審査員よりも「新しさ」を評価していたとのこと。私はその本を読んだばかりだったのでこの「新しさ」をかなり意識しながらコンテスト全体を見ていたのですが、その評価軸ではうるとらブギーズのこのコントが群を抜いていたなと思います。「1組目らしくない1組目」というのはそういうことだと思います。コントってこんなこと"も"出来るのか!を初っぱなから言わなければいけないというある意味ツラい状況。

・人が言葉を発するということの根本を揺さぶるコント。人格の境界を曖昧にしていくというのは多くのコントに共通する手法だなと思ったんですけど、最近の流行りなのかもしれない。

・ハナコのコントで、演技が真に迫りすぎて別人に見える(実際に演者が岡部から菊田にすり替わる)というのがあったと思うんですけど、そういった"二人一役"も含めて、人格を自由に移動させるというか、そういう風に見立てることが出来るのはコントの良いところだと思います。後述の空気階段は、一人二役のわかりやすい例ですね。

・催眠術師の言葉をミラーリング(同時に喋っちゃうという現象が前代未聞すぎて名前がないものなのでここではこう呼びます)している段階から、その場にいない女性の言葉をミラーリングしだした瞬間の、コントとしての広がり方がヤバい。それに加えて「カシモトさん自身のセリフ」もちょいちょい挟まるのが小気味よい。異常な状況の中で起こる普通のことって面白いんです。

・舞台上に実際にはいない人物のセリフなり挙動をどう客席に読み取らせるかっていうのは色んな人が挑んできたテーマだと思うんですけど、それをそのまま言っちゃうっていう解決策、荒技すぎてバカバカしいですよね。

・「またお願いします」ってセリフが、女性のものかカシモトさん自身のものか、確定できない(どちらが正解とも決められない)と思うんですけど、解釈の余地を残して客席の想像力を刺激していて効果的。

・こんなことまで言い出したらワガママが過ぎますけど、最初客席が笑い出すの早くないですか?「どなたか催眠にかかってみたい人」「はい」で2人の関係性が確定するまでは、セリフがダブっていることの意味も確定していないから、どういうことだ?と必死に読み取ろうとするのが正しい見方のように思うのですが…(正しいとか言い出したら終わりなので終わります)生で演者を見てたら感覚も違うのかな。


◎ゾフィー

・結論から言うとめっちゃ笑ったし最高に好きなんですけど、先述の「新しさ」の観点的に松本さんはどう判断するかなー?というのが気になりながら終始観てしまいました。で、結果は点数が詰まっていたため何とも言えない配点、コメントもあんまり期待には応えてくれないしで。

・というのも、このコントの面白さって「腹話術」という演芸に元々含まれてたものが大部分じゃないかな?という感じがしたのです。とは言えその面白さをコントの中に取り込んでいること、特に上田さんの(人形の動きも含めた)演技力は圧巻で、これも評価してほしいポイントです。あくまで「新しさ」の観点でこれはどうなるかな?ということを気にしてしまった。

・全体的に審査コメントがネタの設定とか構成(要は台本)の話にしかならなくて、芸人の身体的な技術力に全然フォーカスしないの、どうかと思いますねえ。

・新しさというか、現代性という意味では、不倫の記者会見というのが風刺的で、良いと言えば良いのだけど、2年ほど遅かった感も無きにしも非ず。

・腹話術って、「口を動かさずに喋る」が元々の根幹ですけど、演芸として見たときには、一人の人間が、自分と人形の2つの人格に分かれてやりとりするのが面白いわけじゃないですか(ある意味これも一人二役ですね)。その面白さを最大限堪能できるコントだったと思います。

・全然違う話ですけど、僕の好きな逆転裁判の、サーカスのエピソードにも腹話術師が出てきて、ミステリとして面白いのでオススメです。人形と腹話術師の証言が食い違うっていう(笑)

・「興奮して立っちゃう奴はバカだ」最高の台詞だな~


◎かが屋

・設定はプロポーズでドラマチックなんだけれども、見せたいところはあくまでミクロっていう、かが屋のイズムを感じて非常に良かったです。

・審査コメントがずっと「爆発待ち」みたいなことを言ってて残念だったんですけど、このコントの最後、お金を払いに帰ってきちゃう男と「行って行って!」と促す店員の、善性と善性のぶつかり合いだって「爆発」でしょうよ、とか思ってしまいます。

・閉店の時間になって男に声を掛けないといけないんだけど気まずくて、そんなときに別の客がお会計に立ってくれた束の間の時間稼ぎ、みたいな細かい機微がたまらないです。


◎どぶろっく

・関西では数年前の歌ネタ王で披露されていたので、このネタの素晴らしさについてはもう味わいつくしていたのですが、改めて面白かったですね。

・反復なんだけど、サビ前の「だけど」とか「ついでに」とかの接続詞が効果的で、筋を繋げつつ、予想より確実に面白くしてくるテクニックがとにかくお見事。

・ミュージカル風の表情や身振りの作り方もお見事。「私にください♪」のところの江口さんの手の形が大好き。

・男性器のサイズをテーマにした名作といえば、宮崎吐夢さんの「mini mini chimpo」も思い出されますね。


◎空気階段

・一人二役の2人目の乗客と話が通じたところ以降の展開は最高なんですけど、そこまでのフリの部分が長すぎ、期待外れなボケが続いてしまう感じがしました。

・シフトレバーと間違えてシート倒すとか、行先聞き間違えるとか(あとでもう一回あるからまだいいけど)、特に「迷路」のボケはどうしても東京ダイナマイトの「ぬり絵」を思い出してしまうし、ボケを言うまでのフリの時間も長すぎた。

・そもそもタクシーの設定がお笑いのド定番という感じがして、途中まで「これ大丈夫?」って勝手に思ってしまうのも良くないですね。これは僕が良くないです。


◎わらふぢなるお

・ちょいちょい思わぬ方向に展開していくから、全体としてあんまり大きな展開が無いように見える、コンテスト的にはちょっと損なネタなのかな~という印象。

・今大会で唯一、客席から悲鳴的なリアクションがあったシーン。確かに妙なリアリティがあって、声出るのも分からなくはなかった。ヒモがするすると落ちていく感じとか、どうやってたんだろうなあ。

・「そんなんじゃ走馬灯見えませんよ」「なんで見るんだよ」というツッコミ、普通なら「なんで見ようとしてるんだよ」とかだと思うんですけど、削りすぎだったかな。そういうツッコミがちゃんとハマってないところがちょいちょいあって惜しかった。


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