風の時代―2023/12/18日記

チバユウスケ氏が逝去したことを我々が伝えられてから2週間ほどになる。そのこと自体の驚きや戸惑いや悲しみや弔いや感謝といったあれこれは私個人の心の中に収めておくことなので、以下の話はそれとは全然関係ない話として読んでいただきたい。

くだんの悲しみの中で、全然知らない人の以下のようなツイートを見た。(私の記憶から再構成するので、原文とは違っているはず)

ミュージシャンの皆さんはお願いだから定期的な健康診断を受けてください。多くのファンを悲しませるのはやめて。酒やタバコがロックだった時代は終わっています。

みたいなツイート。なんか、落ち込みませんか。これ。
正しいことを言ってはいるのだろう。しかしそういう正しさからこぼれ落ちるものに優しく寄り添っていたのがチバユウスケという男の愛だったんじゃないのか、という気分になる。

だいたいにおいて「時代はもう変わったから」を論拠にしたこういう話法、おそらく元号が令和になってから爆発的に増えた気がするのだが、かなり思考停止なのでやめたほうがいい。一昔前は「時代というものはこういう風に変わっていくべきなのだ!」型の論法がまだ多くて、時代の変化を必然的なものとするだけのその人なりの根拠が別で用意されていたはずなのである。

前時代的なものを「理解不能」として思考から排斥する傾向ってかなり危ういし、同時代の人に対してもそれが働くことで色々な分断が起こっていると思っている。過去の人の感覚をできるだけ再生して理解しようとする姿勢は絶対に大切だし、人文学の役割ってそういうところだよなと信じている。

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