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6/6 31の「青いアイス」

幼稚園生の頃、ピアノのお教室の帰りに、母に31でアイスを買ってもらうことがあった。私が選ぶのはいつも同じ、「青いアイス」だった。
31の「青いアイス」。これがめちゃくちゃ好きで、毎回こればかり食べていた。

しばらくすると、あの「青いアイス」が無くなった。ただ、子供の頃の私は「青いやつ」という認識しかなく、そのアイスの名前も知らなかったので、少しでも「青いやつ」を代わりに頼んだ。
そうして出てきた「チョコミント」のアイスを食べながら、「やっぱりこれじゃなかった…」とちょっとだけ落胆するのを繰り返していた。

小学校に上がる頃になると、いつもアイスを買ってもらっていたその31の店舗自体がなくなってしまった。それから私の街には長らく31がなかったので、31のアイス自体を食べる機会もなくなった。

中学生の頃、ようやくまた、近くに31ができた。
その時にもやっぱりあの「青いアイス」はなくて、代わりに間違えて食べていたら好きになってしまった「チョコミント」と、「ラムレーズン」ばかりを食べていた。
そういえば子供の頃は、食べ物のメニューで冒険ができなくて、一つ決めたらずっとその味ばかり食べていた。31は「チョコミント」か「ラムレーズン」。駅前のクレープ屋さんは「いちごジャム」。
食べ物屋さんでいろんな味に挑戦できるようになったのは、大学生くらいからだと思う。だから31で「ポッピングシャワー」を頼んだり、シーズンフレーバーに挑戦したりし出したのは、大人になってからだ。大人になってようやく、ショーケースの中のアイスをあれこれ選べるようになった。

そうして31のシーズンフレーバーも楽しめるようになって、31に行くのが前よりももっと楽しくなったのだけれど、ただ、いつ見てもあの「青いアイス」はなかった。私の記憶違いなのかな、と思うくらいだ。
いや、でもそんな筈はない。私はあの「青いアイス」がめちゃくちゃ好きで、そうしてあの「青いアイス」と間違えて食べていたから、「チョコミント」が好きになったんだから。今私が「チョコミント」が好きだということが、何よりの証拠だ。あの「青いアイス」が、この世に存在したという!

ある時ふと思い立ってネットであの「青いアイス」について調べてみることにした。
「31 」「昔あった」「青いアイス」
こんな感じのぼんやりとした検索ワードで、Google先生に聞いてみた。いや、やっぱり先生さすが。私の求めていた答えがそこにあった。
31の「青いアイス」。その名も「ダイキュリーアイス」。
こ、これだ…。
幼稚園児の私が、毎回楽しみにしていた「青いアイス」。
ただ、その記事には「生産終了」の幻の味として紹介されていた。過去に一度シーズンフレーバーとして復刻したこともあったらしいが、長らく姿を見せていないらしい。
あー残念だな。あの「青いアイス」。味は正直覚えていないのだけれど、「すごく美味しくて好きだった」記憶だけが残っている。
もう一度食べたいな。そう思ったけれど、でも積年の疑問に答えが出たこと、もはや私の記憶の中にしかないのでは?と疑っていた「青いアイス」が本当にあったこと、が何より嬉しかった。ラピュタは本当にあったんだ…!

そうして時は流れて、ついに私はあの「青いアイス」、もとい「ダイキュリーアイス」を手にすることが出来た。ありがとう31。
ちょっと記憶の中のものより青さが薄い気がするけど、でもこれだ。これだったと思う。
シャーベットに近い、さっぱりしたアイス。
幼稚園児の頃に食べた「味」の記憶は正直残っていないので、全く同じ味だったかはわからないけれど、でも、子供の頃の私が好きそうな味だと思った。
そもそもバニラ駄目、チョコも苦手、なんなら甘いもの得意じゃない、子供の頃の私が選べる味は限られていたのだけれどね。

余談だけれど、子供の頃は、ケーキもスポンジと生クリームが苦手で、選ぶとしたらタルト系かムース系ばかりだったのだけれど、ブランデーケーキは唯一あのスポンジっぽい生地でも好きだったな。ブランデーシミシミのやつ。サバランとか。あと、家で作る生クリームには母がラム酒を多めに入れてくれたので好きだった。多分、幼少期から酒が好き。

「ダイキュリーアイス」、本当に好きなので、またシーズンフレーバーでいいから、ちょくちょく出してくれたら嬉しいな。
きっと、子供の頃も私は飛び跳ねて喜ぶ。アイスがあんまり得意じゃなかった私が、唯一喜んで食べてた味だもの。

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