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#歴史

ジャズをつなぐ理由|Roy Hargroveのドキュメンタリー映画『人生最期の音楽の旅』

 2018年に49歳の若さでこの世を去ったトランペット奏者、ロイ・ハーグローヴ(Roy Hargrove)。長年の友人でもあったエリアン・アンリ(Eliane Henri)が撮影したドキュメンタリー映画が、いよいよ日本でも公開された。結果的に最後となってしまったツアー中のハーグローヴを追った作品は、氏の才能と苦悩を、美しくも儚く描き出している。イタリアの町を歩くシーン。足を引きずる様子からは、晩年の病状の悪化が見て取れる。それでもステージに立てば、笑ってしまうほどの軽快なグル

敢えて多くを物語らない|ソール・ライター展

 2017年、2020年と3年おきに開かれている写真家ソール・ライター(Saul Leiter)の企画展が、今年も渋谷で始まった。とは言え、主催する東急・Bunkamuraが主要施設を長期休館しているために、いつもとは場所を変えての開催だ。今回の会場となるヒカリエの8階、ヒカリエホールはより渋谷駅に近いこともあってか、平日日中にもかかわらず結構混み合っている。回を重ねるごとに人気を高めているようにも感じられる。シリーズも3回目を数え、ソール・ライターの生誕100周年を祝う今年

動き続ける音楽|Robert Glasper来日公演

埼玉・秩父ミューズパークで開催された「LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2022」。大トリを務めるべく来日したロバート・グラスパーの単独公演を観れば、ただ一つのアフリカン・アメリカン・ミュージックに昇華されようと動き続ける『Black Radio』の今に触れることができると思うのです。  5月、アメリカからはバイデン大統領だけでなく、ジャズ・R&B界の人気ミュージシャンたちが挙って来日を果たした。ロバート・グラスパー(Robert Glasp

聴くことと、弾くことと|Meshell Ndegeocelloの来日公演

 グラミー賞にて、今年から新設されたベスト・オルタナティヴ・ジャズ・アルバム部門はミシェル・ンデゲオチェロ(Meshell Ndegeocello)が勝ち取った。1960年代生まれのベテランがシーンを牽引していると思うと頼もしい。8年ぶりのオリジナル盤『The Omnichord Real Book』は、老舗ブルーノートに移籍してのリリースだ。これまで様々なアーティストをサポートし、プロデュースしてきた氏の作品に相応しく、多くの話題のミュージシャンがクレジットに名を連ねる。ジ

フレームの外側|川内倫子氏の写真展「M/E」

 東京オペラシティ アートギャラリーでは、写真家・川内倫子氏が国内では6年ぶりとなる大きな個展を開いている。タイトルは「M/E」。Mother Earth(=母なる地球)の頭文字をとって、ME(=私)に重ねる。地球に生まれた私たちは自然はもとより、それを取り巻く物理現象から逃れることができない。氷河や火山、生物や植物、食物や道具、どれを撮っても光を際立たせる川内氏の表現が、生きることの尊さと儚さを再認識させるのだ。昨今、影ばかりが着目されがちな写真の世界において、このストレー