知覚と運動とホールディング

人間の運動はどのようなプロセスを経て生じているのでしょうか。

脳は筋肉を動かしているのではなく、脳は「その状況(環境)に応じた最適な運動」を引き起こします。その時に選択されるのが、いくつかの筋群です。
筋肉という身体の資源の中から、最適なものを選択して運動を起こします。

「環境」や「状況」を知ることにより最適な運動を選択しますが、この「環境や状況」はどのように把握しているのでしょうか。

それは「感覚器」により脳に伝達されます。
この「感覚器」は様々あります。
視覚、聴覚、体性感覚、固有感覚、内臓感覚。

最適な運動を引き起こすためには、この感覚情報が非常に重要になります。

これを「感覚インプット」「知覚」などと呼んだりします。

椅子に座る時、目で高さを確認すればスムーズに座れます。これは視覚情報により周囲の環境を把握出来たからですよね。
これを目を瞑って遂行しようとすると、必然的にゆっくりになります。これは情報が足りず、安全性を得るための結果としてゆっくりとした動作になります。

これは視覚だけではなく、音の方向(聴覚),触覚(体性感覚),筋や関節の感覚(固有感覚)など、様々です。


手の平にある筋肉の一つである虫様筋は、この固有感覚が非常に豊富に存在すると言われています。
虫様筋の固有感覚がしっかり機能していると、ホールドに触れた瞬間の素早い出力や、細かなホールディングに貢献すると思います。

クリンプやハーフクリンプなど、手のアーチが強くなるホールディングの場合、虫様筋は働きます。
前回の記事でもお伝えしましたが、そうなるとクライミング中は収縮しっぱなしになりますよね。
収縮しっぱなしになると硬くなります。硬くなることにより、筋肉の中のセンサーの機能が低下し、固有感覚が働きにくくなります。

こうなると、そのホールドやムーブに最適な保持を選択しにくくなりますので、余計な力が入る、保持感が悪い、ということが生じます。

指のケアはとても大事です。プーリー損傷や腱鞘炎の予防になります。
その予防以外にも、このような機能の改善にも繋がります。

とくにクライミング特有の身体機能である「コンタクトストレングス/接触筋力」は、唯一接触している手からの感覚インプットが非常に重要です。

しっかりケアして、柔らかい手を作りましょう。

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