スピンオフ版トルコリラの焦点 通貨・株・債券のトリプル安-2021.12.20
このレポートは外為どっとコムのマネ育チャンネルに連載中の「トルコリラの焦点」のスピンオフ版として発表しています。
※「トルコリラの焦点」はこちら https://qr.paps.jp/Qdbkm
トルコリラ/円週足 強い下落トレンド継続
13週、26週、52週の短・中・長期移動平均線がいずれも急角度で下向きとなり、下落トレンドの強さを物語っている。12月17日に付けた6.374円前後は史上最安値となるが、依然として下げ止まりの予兆は見られない。
度重なる介入でもリラ売り継続
トルコ中銀は、12月1日を皮切りに今月だけで5回のリラ買い介入を実施(17日時点)。チャートを一目見ればわかるように、介入によるリラ相場の下支え効果は殆ど確認できない。トルコ中銀によると同国の外貨準備高は12月10日時点で841.5億ドル。ただし、これには市中銀行の外貨準備預金なども含まれており、実際に外貨売り・リラ買い介入に使えるネットベースの外貨準備高は遥かに少ないと見られる。
これまで堅調だったトルコ株も急落
トルコの代表的な株価指数であるイスタンブール・ナショナル100は17日、8.5%安で取引を終えた。20日も4%近く下落して始まっている。コロナ禍以降、リラ安の進行によって外貨建てトルコ資産に大幅な割安感が生じたことから海外投資家はトルコ株を買い越していたが、ここにきて一転して手放す動きが強まっているようだ。年末が近いだけに、いくぶん割り引いて考える必要はあろうが、トルコ資産からの資金流出の兆候とも読める動きだろう。
危険なシグナル-トリプル安
なお、足元のトルコ金融市場では国債も売られており、長期金利が上昇している。通貨安・株安・債券安のいわゆる「トリプル安」は新興国経済にとって危険なシグナルだ。特に、経常赤字の穴埋めを海外資金に頼るトルコでは、資金流出の加速は命取りになりかねない。最悪のシナリオとして、債務不履行(デフォルト)に繋がり「経済危機」を引き起こす可能性も否定できない。当面は、リラ相場とともにトルコ株やトルコ債の動きにも目配りが必要であろう。