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Return To Play という考え方。

Return To Playとは

外傷・障害で一線より離脱した選手が、再び競技へと戻る際に必要な考え方です。Return To Playの文字のごとく、選手を安全にフィールドへ戻すことが我々アスレティックトレーナーの義務と考えると、より安全早期復帰を果たすという両側面を踏まえ選手対応をすべきだと考えます。

その際に闇雲に運動強度を上げるのではなく、段階的に負担を掛け競技再開に必要な身体状態を再構成する。

その過程でRTPという考え方が必要になります。

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スポーツ現場での実際

冒頭でも述べた①安全に②早期復帰をさせることに対して、スポーツ現場では強く求められます。

その点を踏まえ、選手と共に復帰を目指す際に必須になるのが、どういったことをいつまでにクリアにするのかを明確化することにあると感じます。

実際に起こりやすいのが、復帰時期が迫ってきた際に、慌ててタスクをこなそうとする選手が少なくありません。

取って付けた様な身体状況で戦えるほど競技スポーツは優しくありません。

また、その様な手順を踏み復帰したとしても、再受傷は目に見えています。

そんな、際受傷と隣り合わせの環境に選手を導かない為にもこのRTPの考え方は必須と考えることができます。

ここで一つ、とてもアナログな手段ですが、RTPをより選手向けに可視化する際に有効活用できるのが、スケジュール表です。

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RTPを構成する際のPhase分けについて

競技復帰を目指す際の基本的な考え方に、しっかり動いて・しっかり力が入る。その状況で競技に必要な動きが再現できるか。この辺を評価を通じて状況を把握し、状況に応じて再構築する必要がある。

個人的に考える流れとして以下の表に記します。

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しっかりと動くこと。(本来関節が持っている可動域を有していること:ROM)

しっかりと力が入ること(本来関節が持っている可動域を有しつつ、その関節を駆動する筋がしっかりと力発揮をしているか:MMT)

上記2項目を基礎とし、競技に必要な動き(動作)を再構築できていること(競技スキルの部分:Fnc)

上記記載の項目が、復帰に向け必須で、順を追って再構築する必要があると考えます。


Phase0~Phase2について



Phase0:状況の回復・改善

まず最初のPhaseでは、外傷・障害からのダメージの回復を目指します。

*受傷からの経過時間
*炎症症状の改善


が最たる課題となります。よって、積極的な運動療法より、(患部)休養や物理療法の実施が選択される時期になります。



Phase1:動作作りの為の基礎的な準備

Phase0で炎症症状の軽快が図れ、時間的な配慮をした上でPhase2が実施されます。
さらに継続し、炎症症状を解消方向へと向かわせ、かつ、可動域の改善・向上を目指していきます。

Point
炎症所見の解消
可動域の改善・向上
筋力の回復(MMT4レベル必須)

Approach
可動域訓練
筋力訓練
Mobility-Ex



Phase2:機能面の回復

Phase1で可動域の改善および、筋力の回復を行なってきました。
このPhase2では、それらの要素を踏まえ、患部(および患部周囲の関節)に対して、実際に動きを再構築していきます。

Point
機能面の改善

Approach
Stability-Ex
Functional training

Example
このフェーズまで回復していると、例えばバランス系のトレーニング(リコンディショニング)などの実施が可能となっている状態にあると言えます。例えば以下のようなメニューが考えられます。

フロントランジ( On エアレックス)
→エアレックス(バランスディスク)の上に、足を置いた状態の踏み込みランジの状況で、その不安定物の上で重心の著明な動揺なくランジ動作を行うメニュー。

Regression:アイテムなしのフロントランジ
Progression:踏み込んだ際に上半身の水平面でのツイスト動作


プッシュモーション(On ウォーターバッグ)
→背臥位の状態で、両肩甲骨が床(ベット)から浮く程度に、肩甲骨を釣り上げる。その際に、ウォーターバッグの重さを抵抗とし実施するメニュー。

Regression:座位でのプッシュモーション
Progression:ウォーターバックシェーク





Phase3~Phase6について

Phase3:機能面の向上

Phase3では、より実際の競技動作に似せた動きが作れる様に、各要素を再構築させていきます。例えばSAQと言われるSpeed・Agility・Quicknessと言われる要素のトレーニングが代表格なもので、順を追って再構築していきます。

Point
機能面の向上

Approach
Speed Training
Agility Training
Quickness Training

Example

一方向にできるだけ早く走る能力を養うspeed training

減速することなく方向転換できる様に訓練するAgility training

周囲の状況を直ぐさに判断し、必要な動きを作りだす能力を養うQuickness training

などが挙げられる。また、この3要素はそれぞれに掛け合わすこともできる。

ミラードリル
相手の動きに同調し、動きを再現するメニュー
→Quickness×Agility


追いつき走
相手がリアクションに応じ、相手を捕まえる様なメニュー
→Quickness×Speed



Phase4:競技要素の改善・向上
この段階に来ると、実際の競技に必要な動作作りをより充実させていきます。
競技特有の方向転換があれば、減速・加速の局面を意識したメニューを提案したり、実際のシチェーションに似せた条件下でのリアクションドリルなどを順次プログレッションし実施していく。

Point
競技要素の改善・向上

Approach
攻守の役割を持たせた駆け引きドリル
Step training

Example
攻守の役割を持たせた駆け引きドリル
→攻撃側または、守備側のいづれかの役割を持たす。
 攻撃側のアタックに、背後を突かれれば攻撃側の勝ち。死守すれば守備側の勝ち
 とする実戦形式を変えたドリル

Step training
→実際に多用する方向へのステップを行うドリル



Phase6:部分的競技復帰

この段階で最も重要になるのが、『受傷起点に対する克服』である。
つまり、どれだけRTPが進んでも、最後にこの点について自信を持って回避できる。それ位の本人の自信がないと実施には想像と違う現実が待っていることもある。
消極的な動きをしない。逆にしなくても自ら体を守れる。それ位の身体状況を作るべき最終段階の微調整が必要である。

Point
どの動きに不安があるのかを把握

不安な要素を以下の項目に分類し、最終段階へと進んでいく。

①不安な動作の局面:減速 or   加速
②不安な動作の方向:矢状面・前額面 or  水平面



Phase7:完全競技復帰


まとめ

われわれアスレティックトレーナーがスポーツ現場にて仕事をする意味。
それは、冒頭で述べた、安全に早期復帰を実現可能にすべく、選手と共に時間を過ごし、選手乗りコンディションをそばで見守ることにある。

その見守る中で、有識者として選手をどの様な道標を示せるか。

この道標次第で復帰は大きく左右されるといっても過言ではない。

その一助としてこの記事が役立てば幸いです。


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