カシモフの首【小説】 Ⅲ.草原の首都開発 ➀
薄闇の中にそそり立つ巨大なコンクリートの柱。それを取り巻くように組まれた作業用の仮設足場。水平に渡されたその足場板に立った美智は、ほとんど悲鳴に近い金切り声をあげた。
「オルハン・ベイ、これはいったいなに?」
ここは世界平和宮殿の建設現場、コンクリート躯体の最下層。彼女が取りついているのは、地下大会議場前のホワイエに立つ二本の独立柱のうちの一本だ。大会議場への門のごとくそびえるそれらは、この建物の基部で最も重要な柱といえる。吹き抜けの中に自立して地上1階レベルまで達し、ピ