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2021/12/23 一琉の光

せっかく何を書いてもいいのなら少しずつでも好きなことを書いていこうかなと。
文章を書く練習になるかもしれないし、何も手がつかない今の自分には適度なリハビリと時間つぶしになるかなと。(呑気に時間を潰してる余裕も猶予もないのだけれど)


自分がラジオを好きになったきっかけはまたの機会に書くとして、その中でも特段おもしろい番組を一つ。

TBSラジオの火曜日24:00~の「アルコ&ピースd.c.garage」
略して「アルピーdcg」
お笑い芸人のアルコ&ピースがパーソナリティを務めている。
アルコ&ピースはネタ作り担当で5年歳上の平子さんとツッコミが的確でたまにボケるサウナ好きの酒井さんというコンビ。
酒井の「酒」平子の「平」でアルコ&ピースとなった。

この番組を聴き始めたきっかけはTwitterでラジオリスナーがおすすめの番組を4つまで紹介するというタグが拡散されていた時に、結構たくさんの人が入れていたから。あと放送が1時間だから気軽に聴けるかな~ということぐらいだった。

当時、芸人の深夜ラジオをたまにしか聴かなかった自分は
「芸人ラジオは下ネタが多くて番組のノリがきつい。」というイメージだった。

そんな時にこのタグ。みんなが面白いという。知らない芸人。一時間番組。
物は試しということで聴いたような気がする。

結果おもしろかった。
というより今思えば聴きやすかったという感じだった。
前述したノリ、流れ、下ネタ。
それがほとんどなく2人の日常トークがスムーズに流れていく”しょーもない”ラジオだった。
これにめちゃくちゃハマり、もとから火曜日に聴いているラジオはなかったのでこの番組がすぐ火曜日の楽しみになった。

元はニッポン放送でANNの枠を担当していたラジオスターの2人だった。
コアなファンに愛されていたが番組改編となり、ANNが終わるとともにニッポン放送からTBSに移籍というかたちで始まった新番組。

開始当初から聴いているわけではないので限られてしまうが自分がこの番組を大好きになった回のエピソードを書いておく。

2018年8月14日 ネバダガレージ。ベガストークSP!
大まかな内容は2人の夏休みの話。お互いがロッキンやとしまえんに行った話。ロケでラスベガスに行った際に、コンビなのに隣同士の席のチケットでお互い気を使いながら飛行機に乗った話。海外のでっかいコーラで笑いベガスを楽しんだチャンサカ(酒井さん)に対して、ホテルでも真面目にネタを書き、深夜に目をギラギラさせながら行ったカジノで負けて落ち込む平子さんの話。
上手くは書けないけど二人とも日常のエピソードで笑いと流れを作っていくあの空気が聴いていてすごく楽しかったのを覚えている。

アルピーが好きになった夏だった。

そんなラジオスター芸人ことアルコ&ピースの2人だが正直なところあんまりテレビで見た記憶がなかった。
よく”売れる”とか”売れた”とかいう表現が使われる芸能界。一芸に秀で引っ張りだこにになるタレント。MCが上手いと評価されネタ番組よりもバラエティーの司会をやる芸人。身体を張って爪痕を残そうと頑張る若手俳優や人気アイドル。いろんな人が武器を持ち鎬を削る世界で、彼らも人知れずに戦っていた。お世辞にも超売れっ子、大人気という状態でもなかったけど。

キングオブコント決勝進出。THE MANZAI決勝3位。
でもあとひと花、確かなひと花を咲かせたがっていたように思う。
そんな時、ラジオで平子さんが言った。
「今年の賞レースどうしようかな」って。

賞レースとはM-1とかキングオブコントとか芸人にとっての一大イベント。優勝すれば間違いなしの売れっ子。ただM-1はコンビ結成15年以内じゃないと参加資格がない。ひたすらのお笑いバトル。

「もう俺らはそういうキャラじゃないから」
「平子さんがそう言うなら構いません」

でも2人ともやっぱり熱いものを心の内に秘めていた。


話は当時やっていたサッカーのロシアW杯の決勝へ。
フランスが後半の20分に4点目を取り、4-1で試合が決まったと思われた数分後。
クロアチア代表のベテラン、マンジュキッチ選手がフランスのゴール前でスキを突き、キーパーがクリアしようとしたボールに足を伸ばして、2点目を取り返したというエピソードがあった。

"俺らももう一度、手を伸ばして頑張ってみようか。"


結果その年のM‐1は三回戦敗退。コンビ結成12年目の秋のことだった。
その三回戦は、2人にとって苦すぎるぐらい濃い漫才だった。
本番でアドリブをぶちかました平子さん。
自身のゴシップに不意を突かれて「ちゃんとやりましょうよ」と呆れる酒井さん。
この後2人ともがよく知る放送作家に電話して反省するという、ある意味の神回。
後悔と傷跡を残したM-1復帰参戦となった年だった。


19年、20年は出場せず、迎えた2021年。
結成15年目。文字通りのラストイヤー。
ラジオ番組は相変わらずの人気で、独身だった酒井さんが静岡で”国王”と呼ばれながら冠番組を始め、そのアシスタントアナウンサーと結婚したり、愛妻家として知られる平子さんは家庭や人生経験の話で個人仕事が増え、本も出版したりと、お互いに着実な変化を歩んできた3年。



最期だから。サラリーマン金太郎を読んだから。
はたまたセンターマイクが呼んでいたから。
様々な理由があったらしいが、今年のアルピーはガチだった。
たまにあるこういうところ。
筋を通す、王道を行く、真正面から”いざ尋常に”って向かっていくところ。
自分はここが好き。

鬼門だった三回戦を突破したあたりから”もしかして”と期待した。
でもすぐに世の中はそんな簡単じゃないと教えてくれた。
その2週間後、準々決勝後のTwitter。
トレンドに「アルピー爆散」の文字。
これを見たとき、不覚にもちょっとにやけた(笑)
”だめだったか~”と”いやこの書かれ方よw”って。

後から聴いた話によると
”冒頭で嚙み倒した””噛み倒したのを噛み倒した”
らしい。
掴みを噛むというのは、マリカーのスタートでガス欠するようなもの。
「18年の再来」が2人の脳裏をよぎった。
“もう、どうせ無理だろう。”と思いつつ最後まで立て直しネタを続けた。
そしたら次第に笑いが生まれ”あれ、イケるかも”と希望を見た。
期待と諦めが交錯していた時間。でも取り戻せない最初の20秒。
締めのオチの言葉が、タイムオーバーのブザーにかき消された。

平子さんはその時、天高く拳を突き上げた。
“我が生涯に一片の悔いなし”みたいに。

これは本人にも何故かわからなかったという。


完全な個人の考察なのだが、これは「証」のようなものだったのではないかと思う。

結成15年目。ラストイヤー。
ずっとお笑い地獄に生きてきたわけじゃないけど、歩んできた道。
第7世代、後輩の台頭。思うところがあって挑んだ久しぶりの本番。
完璧ではなかったけど、自分達らしく終われた。
準々決勝までかもしれないけど、ここまで登ってきた証を彼はその拳に込めたのかな…と思った。

結果、アルコ&ピースは準々決勝を通過できた。
しかし準決勝で敗退した。M-1当日の敗者復活戦も16組中11位という順位。
彼らのM-1挑戦が終わった瞬間だった。

敗者復活を勝ち抜いたのは同じくラストイヤーのコンビ「ハライチ」
M-1グランプリ2021を優勝したのは以前youtubeを一緒に撮り、準決の結果発表の際に拍手を送った戦友「錦鯉」

人一倍思うことがあるだろう。
でも最期にアルピーの2人らしい漫才を見せてくれてうれしかったなと。
「もうあの音楽で降りることもないのか」
「悔しかったな〜」
そう言った2人の言葉を聞けて、あー応援していて良かったな〜って思えた。


ひとまずお疲れ様でした。また”夢舞台のどこかで”。


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