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茶品種 おおいわせ

新緑の季節を思わせる爽快な香り
口の中に広がる調和のとれた滋味

静岡県産 有機栽培・深蒸し仕上げの「おおいわせ」

「おおいわせ」は、摘採期が「やぶきた」より5日ほど早い早生品種(わせひんしゅ)です。静岡県茶業試験場において、1960年に「やえほ」を母親、「やぶきた」を父親として交配され、選抜育成されました。品種名の由来は、静岡県の代表的な河川である「大井川」、良質茶をイメージさせる「覆い」、そして早生(わせ)品種であることから「おおいわせ」と命名されました。

早生品種

「早生(わせ)」とは「早く生まれる」という意味があります。
「早生品種(わせひんしゅ)」は、他の品種よりも早く収穫できる品種です。出荷時期を前倒しすることができ、市場において早く販売することで競争力が高まるという利点があります。
 
例えば、サクランボの早生品種は、高砂(たかさご)や紅秀峰(べにしゅうほう)。みかんの早生品種は、宮川早生(みやがわせ)や興津早生(おきつわせ)。白菜の早生品種の郷秋(きょうしゅう)、キャベツの初秋(しょしゅう)などは、暑さに強いため早くから種まき、早く収穫できる早生品種です。

静岡はみかんの産地ですので、10月中旬頃から「早生みかん」が出回ります。子供の頃の記憶では、大人たちが、早生ならではの酸味のあるうっすら緑色の皮をしたみかんを「酸っぱいね!早生だね!」と言いながら、嬉しそうに食べていたのが印象的でした。酸っぱいのに、嬉しそうにしているのが子供ごころに不思議でした。「早生は、酸っぱくても食べたいみかんなんだなあ」と大人の真似をして、好みではない酸っぱいみかんをぼおばりながら「酸っぱい!」という思いを、毎年繰り返していたものです。
今では早生のみかんも甘い品種が出回りますので、昔のような酸っぱいみかんが却って懐かしいです。子供の頃の酸っぱいみかん体験で、「早生」という言葉と意味を学んだせいか、あらゆる作物に対して、「早生」と聞くと、「どんな味だろう」と試してみたい欲求にかられます。

「おおいわせ」の特徴

「おおいわせ」は、1976年度から静岡県茶奨励品種に採用されました。「やぶきた」の前に摘採(収穫)する品種として普及奨励されたからでしょうか。実際に、静岡県下で「やぶきた」の前に収穫するための「おおいわせ」の茶畑を持っている茶農家は多く、いわゆる「走り新茶」には「おおいわせ」が使われていることが多いです。「走り」は、最初の、早い時期の、という意味で使われる言葉です。

茶農家さんに「おおいわせの特徴は?」と聞くと、「“やぶきた”とそう変わらないよ。大きく異なる特徴があるわけでもない。」という答えが返ってくることが多いです。どうやら彼らにとって「おおいわせ」は、早く収穫できる「やぶきた」、という存在のようです。茶農家さんたちの感覚は、父親は「やぶきた」、母親が「やえほ」という極早生品種だから、「やぶきた」を早生にしたものが「おおいわせ」という認識のようです。
 
でも、私の「おおいわせ」に対する印象は茶農家さんと異なります。「おおいわせ」には「やぶきた」には無い爽快感があるのです、新茶の爽快さを楽しむのならば、「やぶきた」よりも「おおいわせ」!と思います。緑茶の早生品種には、他にも「さやまかおり」「つゆひかり」「くりたわせ」「ゆたかみどり」「さえみどり」など様々あります。その中でも「おおいわせ」が一番、早生らしい爽快な香りを持つ品種だと思います。まさに走りの時期にふさわしい爽快さ。嫌みがなくて、爽やかで、でも滋味はしっかりしていて、後味もスッキリ!

「おおいわせ」の試験成績の概要を取りまとめた1970年代の研究報告書を見つけました。
母親の「やえほ」と父親の「やぶきた」との比較が報告されているものですが、成分を見てもさほど「やぶきた」と差はありません。「おおいわせ」の方が、タンニンがやや少ない、という程度でしょうか。「“おおいわせ”は爽快な香りを持っている」と記されているも、香り成分についての研究報告は無く、特有の爽快さの化学成分は不明です。

お茶の香気成分は、300種類とも言われています。青葉アルコール、リナロール、ゲラニオールなどがありますが、人が感じる「お茶の香り」は、一つ一つの成分よりも総合的に判断されるため、分析数値よりも、人による官能評価の方が優れていることも多いと言われています。
確かに、科学的に香りを説明されてもピンと来ないですね・・・。

「おおいわせ」の楽しみ

走り新茶の爽やかな「おおいわせ」の香りで、「今年も新茶が始まったなあ」と、感じる瞬間。これは、何とも言えない年に一度の楽しみの瞬間です。この爽やかな香りは、梅雨どきにもおすすめです。「緑茶で梅雨どきを爽やかに過ごしましょう!」というようなフレーズを目にしたことがありませんか?緑茶のリフレッシュ効果でうっとうしい梅雨どきを爽やかに過ごしましょう!というものですが、更に爽やかさを求め、品種を選ぶのならば「おおいわせ」でしょうか。
私にとっては、梅雨が明けるまで密かなに楽しむ品種が「おおいわせ」です。

急須が無くても、リーフのお茶をいれて飲む

今回は、深蒸しの「おおいわせ」を使い、簡単にお茶をいれる方法をご紹介したいと思います。急須をお持ちでない方も、ぜひお気軽にリーフのお茶を楽しんでください。茶こしを使います。「急須を買うのはハードルが高い」と思っている方も、茶こしなら100均でも購入できます。

<用意するもの>
マグカップ(湯のみでも可)、茶こし、飲むためのカップ

マグカップと茶こしを急須代わりに使い、ガラスの耐熱カップにお茶をいれてみましょう

1.マグカップに茶葉5gをいれます。大匙1~2杯の水をいれます。

水で茶葉をしめらせることで、冷まし湯を作る手間を省略する簡易的な方法です。

2.ガラスの耐熱カップに熱湯をいれます。

沸騰させた湯を使うのがポイント!

3.耐熱カップの熱湯を、茶葉の入ったマグカップに注ぎます。

熱湯をいったん耐熱カップに移すことで、少し湯の温度が下がります。

4.30秒ほど待ちます。

湯の量や抽出時間でお茶の味は異なります。お好みを探るのもお茶いれの楽しみ。

5.茶こしを使って、茶液をガラスの耐熱カップに注ぎます。

最後の一滴まで!

6.できあがり

リーフでいれるとやっぱりおいしい!

茶こしはマグカップにかけておきます。2煎めをいれる時は、茶こしの茶葉をマグカップに落として湯を注ぎ10秒。同じように茶こしを使って、耐熱カップにお茶をいれます。

3煎め以降も、これを繰り返します。

最近は急須をお持ちでない方も多いようです。でもこの方法ならば、気軽にリーフのお茶を楽しむことができます。

私が本格的に急須のお茶いれを学んだ時、最初は急須を使わせてもらえずに、湯のみと茶こしでお茶を抽出しながら、茶葉の性質を学んでいきました。このいれ方は、その時の経験をヒントに、リーフのお茶の初心者向けにアレンジしたものです。

せっかく日本には、お茶という素晴らしい飲み物があるのですから、ぜひリーフでいれるお茶の味わいを楽しんでくださいね。

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