見出し画像

第8問 株主による取締役の第三者に対する責任の追及

 XはA株式会社の株主であったが、A社が製造販売した食品に係るトラブルや、A社の食品に係る偽装事件が原因で経営が悪化し、A社は解散し清算会社となった。これにより、Xの保有していたA社株式は無価値化した。
 XはA社取締役Yに対して株式の無価値化による損害賠償を請求した。

[設問]
Xの請求は認められるか。


解答例
 Xの請求の法的根拠は429条1項である。同項にいう「損害」には、直接損害だけでなく、会社に損害が生じたことで波及的に生じる間接損害も含まれる。今回の株式の無価値化はA社の経営悪化により波及的に生じた損害であるため、間接損害に該当する。
 では、株主に間接損害が生じた場合、株主は役員に対して会社法429条1項に基づく損害賠償請求ができるか。
会社の損害が回復すれば株主の損害も回復すること、個々の株主の請求を認めると取締役の責任の免除(会社法424条)に矛盾し資本維持の原則に反すること、株主が債権者に優先することになりかねないほか株主間の不平等も生じうることから、株主に間接損害が生じたケースについては、株主代表訴訟による責任追及をすべきであり、特段の事情がない限りは上記請求を認めるべきではない。
 本問では、上記の通り、A社株主Xに間接損害が生じたケースである。そして、請求を認めるべき特段の事情が存在しないため、会社法429条1項に基づく損害賠償請求は認められない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?