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声優は個性的な人がなれるの?

今の声優業界って、皆さまにはどんなふうに映っているのでしょうか。声優としての仕事もさることながら、イベントやTVのトーク番組にまで出演して、どの人もお喋りが面白いし輝いていてとっても個性的だなって感じですかね?

さてさて、新人さんや養成所生のお悩みで上位にあるのが「個性がない」ことについて。今日はこの"個性"にまつわる話をしようかなと思います。

これは私がワークショップ(WS)に通っていた時の話なんですけれどもね。

その時の私は何処の事務所にも所属しておらず……というか所属することが出来ずにフリーという状態で活動していました。

すっかり自信を無くしていたものの声の仕事は欲しいし、芝居もレベルアップさせたい。どっかいいWSはないもんかと、色々探して行き着いたんですが…なんと一番最初の授業で講師であるディレクター(D)がこんな断りを入れてきたんです。

「パワハラとか思わないでね(笑)」

嫌な予感は的中。Dが納得するものを出せないと、人格否定の言葉を叩きつけられるという授業が始まったのです。

Dが良しとした人はWS退会を促され、残った人は何がどうダメなのか具体的な説明はなくただただ否定され続ける。その人格否定エクササイズの後に芝居の授業をやるわけですが……ボロボロにきまってるじゃないですかぁぁぁあ!!

そんな辛く苦しい授業でも行かなければならない、逃げたら負けだ精神で堪えていたある日のこと。その日は講師と見つめ合うという授業だったんですが、、、


お前には何もない

中身が空っぽだ

0に何掛けたって0のまま

だからもう無理だ

役者なんてやめた方がいい


文字だと熱が感じられませんが、立場が上の人から威圧的に激しく確信を持って言われ「ああ、確かに自分は何も持ってないし、個性が無いつまらない人間だもんな」って納得させられてしまいました。抗う気力を根こそぎ奪われてしまったんです。

お金が勿体ないとか、めげずに頑張らなきゃと思いつつも、WSにはもう通う事が出来なくなりました。異常に高鳴る心臓と戦いながら欠席連絡を数回した頃、別クラスに通っていたはずの友人から連絡が入ったんです。

「行くのが辛いから辞めた」

衝撃を受けました。そっか、辞めていいんだと。負けるとかそんなのどうでもいいから逃げよう。積極的撤退をしてもいいんだと、ようやく気づいたんです。

そんなわけで私もWSを退会しました。

その後どうしたかというと。先程の友人と区の稽古場を借りて、課題を持ち寄り練習することにしたんです。Dの期待には応えられなかったし、本当に自分には何もないのかもしれない。でもとりあえず全部ほっぽり投げて、2人でただただ楽しくお芝居の練習をしようよという会。心の傷を癒す場が我々には必要だったんですよね。

お前には何もない

負の感情が積もりに積もって、最終的にこの言葉によって打ちのめされた自分がいたわけですが。何もない空っぽの人なんていないと今なら言える。人間の内側には数え切れないくらい沢山のものが詰まっていて、一人一人が個性的でユニークな存在であると。

ただ個性には"濃い・薄い"と"強い・弱い"が存在すると私は考えています。

自分を押さえつけたりストレスで弱ってしまったりすると、個性は大変見え難くなってしまうみたいなんです。自分ってどんな奴だっけ?何がしたかったんだっけ?と迷路に迷い込んだ時は一旦心の休息を。その後に好きなこと・楽しいこと・興味があることに目を向けてみる。やってみる、もっとやってみる×♾すると本来の自分がまたムクッと顔を出しはじめて、個はより濃く強くなっていくのではないかという私の今のところのアンサー。

あ、先程ユニークって言葉を使いましたが、日本で言うところの"変わった人"ではございません。個性を人為的に作る為に奇をてらった行動をしましょうってことではないですよ。

というわけで最後に一つ。養成所に一度きりの特別講師で来られた石塚運昇さんのエピソード。20年くらい前の話なんですがね。

誰かが質問したのか、自然とその話題になったのか忘れてしまったんですが。運昇さんがこんなことを仰ってました。

お前ら個性がどうとかよく言うけど、まずは社会人として普通になれ。作品を見てくれるのは一般社会で働く人たちなんだ。常識も分からないような奴が、個性とかそんなもんまだ気にするまでもない。

確かこんなような内容でして、私はね、思いましたよ。はぁぁあ!?こちとら授業で個性がどーだこーだって散々言われてんのに普通?何それ意味わからん!!!ってね(笑)

でもきっと運昇さんは、我々が個性を履き違えて突飛な行動をしたり、悪目立ちを積極的にしようとする態度にお灸を据えてくれたんじゃないかなって。

そんでもって、夢だけ見るんじゃなくて人として、社会の一員として、しっかりと自立しなさいよ!と言ってくれたんだなと。今なら分かるんです、これがどれだけ大切なことか。

ただね、どうしても持て余した情熱でやんちゃしちゃうこともありますから、愛あるお叱りを受けたらしっかり受け止めてまた動き出せばいい。自分がダメな奴じゃなくて、行動を省みて次に活かせばいいじゃないか!!!

でも、どうしても、自分なんて……と思ってしまうことから抜け出せなかったら、一緒にお茶でも飲みながらお話しませんか?アナタのお話を聞かせてください。

日本俳優連合のHPに掲載されていたこちらもリンクを貼っておきます。パワハラ・セクハラ等々お困り事がある方の弁護士相談窓口だそうです。必要な方に届きますように。


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