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ロビー・ロバートソン R.I.P. :Robbie Robertson R.I.P. "Showdown at Big Sky"

2023年8月9日にロビー・ロバートソンが亡くなったと先週に聞いて、また一人、35年来私が崇めていたアイドルが天国に旅立ってしまったことを知った。

最初にロビー・ロバートソンのギターを聴いたのは、ボブ・ディランの2枚組のライブアルバム、1974年の "Before the Flood" (日本語タイトル「偉大なる復活」) だった。

ザ・バンドは、ロビー・ロバートソン(g)、リチャード・マニュエル(p)、ガース・ハドソン(kb, syn)、リック・ダンコ(b)、リヴォン・ヘルム(ds)の5人編成で、このアルバムでは、ボブ・ディランのバックバンドとして、そして単独で、素晴らしい演奏を聴くことができる。

このころのディランは雷のような歌声でどの歌も迫力満点だ。ザ・バンドはメンバー全員が歌を歌え複数の楽器をこなすが、その男性だけの野太いバックコーラス、固い音のドラムス、オルガン・シンセやピアノのゴツゴツした音、そして、ロビー・ロバートソンのギターがリードにバックに渋く響く。

構成は1枚目のA面がボブ・ディランの曲でザ・バンドを従えて、"Most Likely You GoYour Way (and I'll go Mine)"から "Ballad of a Thin Man"まで6曲を演奏する。B面の5曲は ザ・バンドの演奏だ。 "Endless Highway," "Stage Flight" などのほか、ボブ・ディランの名曲"I Shall Be Released," すでにこのころ人気バンドになっていたザ・バンドの生き生きとしたライブ演奏を堪能できる。

2枚目のA面の3曲はボブ・ディランのギター一本でのソロ演奏で、"Don't Think Twice, It's all Right," "Just Like a Woman," "It's Alright, Ma"が立て続けに演奏される。どの曲もいいが、とくに "It's Alright, Ma"はライブでよく演奏されるし、レコーディングもいろいろリリースされているが、私の好みでは、この演奏がベストではないかと思う。この年の8月に、ウォーターゲート事件でニクソン大統領が辞任することになる。「アメリカの大統領も時には裸で立たなければならない」という歌詞のところで大歓声があがるのを聴くことができる。

2枚目A面の後半の3曲は、ザ・バンドの単独演奏だ。名曲 "The Weight"を聴くことができる。そして2枚目B面は、ボブ・ディランとザ・バンドが共演するこのアルバムのハイライトとなる。"All Along the Watchtower," "Highway 61 Revisited," "Like a Rolling Stone," "Blowin' in the Wind"。

"All Along the Watchtower"は、ロビー・ロバートソンのギターのイントロとともにソロも聴きどころだ。"Like a Rolling Stone"のタイトで激しい演奏にはしびれる。これら2曲とも、私の好みでは、数ある演奏のなかで、このアルバムの演奏がベストだと思っている。

ディランのアルバムの中でも傑作の一つだと思うし、ザ・バンドのライブ演奏も堪能できるいいアルバムだ。

ロビー・ロバートソンのギターは、強烈なテクニックがあるか、というとそうでもないが、この人ならではの個性的な強い粘りのある音を出す。ザ・バンドのギタリストでありバンドの作曲を手掛けた。"Music from Big Pink,” "Northern Lights - Southern Cross" といったアルバムをリリースしている。1976年、映画にもなった "The Last Waltz" の後に、他のメンバーと袂を分かった後、1987年に満を持して自身の名を冠したソロ・アルバムをリリースする。

U2が全面的に参加して、クリアでタイト、空間に広がっていくような音作りに、低音でしゃがれた声のロビー・ロバートソンのボーカルが迫力だ。まるで滅びゆく世界を描くようなストーリーを感じさせるアルバムのコンセプトの統一感といい、名作だと思う。

2作目の Storyvilleは、1作目と比べると少し地味だが、やはり力強くかっこいい。ジャケ写も綺麗だ。

このアルバムのリリース後にDavid Letterman Showに出演した動画が、ちょうど Facebookで流れて来た。

ザ・バンドはリヴォン&ザ・ホークスという名前だったころからディランのバック・バンドとして活動していた。1965年ごろエレクトリックギターに持ち替えてロックのサウンドを導入していったボブ・ディランへの風当たりは強く、いつもブーイングの嵐だったようだ。

1966年のライブの動画が上がっている。冒頭、観客席から大きな声で "Juda!" (裏切者!)と罵声が飛ぶ。ディランは "I don't believe you!" と返し、"You, Liar!" と挑発するように続け、おもむろに演奏を始める。 

"Before the Flood"のタイトでカッチリした演奏も迫力でいいが、こちらのうねるようなリズムと歌の熱量は圧倒的だ。ここでもロビー・ロバートソンのギターがいい味を出している。

ところで、ザ・バンドはカナダのバンドでロビー・ロバートソンもカナダ出身だ。そして、ソロ・アルバム "Robbie Robertson" のリリースのころ自身の出自について父がユダヤ系、母がネイティブ・アメリカンのモホーク族だと明かした。今、Wikipedia を見て初めて知ったので迂闊だったが、"Robbie Robertson" はその出自について歌ったものだとコメントしていたそうだ。

1994年の3枚目のアルバム "Music for the Native Americans" はその名のとおり、自身のルーツ、ネイティブの音楽を追及したものとなる。

地味なアルバムではあるが、じっくり聴きたい一枚だ。

オリジナルのアルバムは6枚リリースされている。エリック・クラプトンが参加している5枚目、2011年の "How to Become Clairvoyant"がヒットしたが、そういえば、このアルバムは私としたことが、聴いてなかった。

こちらも Facebookで TV でのライブで、一曲目の "Straight Down the Line"を披露している。

やはり渋い。低音のしゃがれ声といい、ギターの構えに音色、立ち居振る舞い、すべてがカッコいい。

最後にソロ・デビューアルバムから 2曲目 "Showdown at Big Sky" のオフィシャル・ビデオを貼っておこう。


R.I.P…

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