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マジック・タッチ9 スライド/ボトルネックギター2:ジョニー・ウィンター、ステファン・グロスマン、ラーキン・ポー

スライド・ギターというギターの奏法あるいはスタイルは、指の長さほどの円筒形のスライドバーを指に通すか両端を持つかして、複数の弦を含む面に概略平行かつ弦の張られた方向と概略垂直方向に構え、弦に接触させて滑らせるようにして演奏する。

別名ボトルネックともいう。バーボンの瓶の首のところを切りだして作ったスライドバーを演奏に使ったことに由来する。

私が大好きなのは、ブルースギタリストでスライドの大御所であるジョニー・ウィンターの演奏で、特にボブ・ディランの30周年記念コンサートでの演奏を愛聴している。

YouTube動画ではなかったが、Facebookに上がっている動画があったので貼っておく。

ブッカーT & the MG's の面々を従えて、迫力の堂々たる演奏だ。何度聴いてもぞくぞくする。

 YouTube 動画はみつからなかったので別のライブの動画を貼っておこう。演奏の様子がよくわかると思う。ジョニー・ウィンターは小指にスライドバーを装着して弾いている。

ジョニー・ウィンターは声がいい。あの華奢な身体のどこからあんな雷のような声が出るのだろう。そしてギターはギブソンのファイヤーバード、骨太でルードな音がいい。


メジャー・デビューは自身の名前をタイトルにしたアルバムで 1969年にリリースされている。

粘りの強いブルースを堪能できると思う。初期はこのようなブルースだったらしいが、次第にロック色を強め枠に収まらない活躍を見せる。

あの世に旅立っていった後にリリースされ遺作となった 2014年の "Step Back" は翌年2月にグラミーの最優秀ブルース・アルバム賞を受賞、自身初のグラミー受賞ということだ。



ボトルネックといえばエレクトリックだけではなく、アコースティックのスライドも独特のビビり音が楽しめていい。ステファン・グロスマンを思い出した。ポール・サイモンの "Paranoia Blues" でバックのギターを弾いていて、惜しげもなくボトルネックの音を聴かせている。

ちなみに、自身の名前 "Paul Simon" というタイトルの1972年にリリースされたアルバムはとても素晴らしい曲ばかりなので、こちらはこちらでおススメである。

40年以上前、中学生だったころ、ギターを嗜み始めたときの教則本 "Folk Guitar 2" の後半にはアコースティック・ギターの名手の紹介と代表曲の譜面があって、ステファン・グロスマンはナンバー・ワンといってよいプレイヤーであり、職人を感じさせるクロウト好み、と紹介されている。ボトルネックとともに正確無比で信じがたいような指使いということだ。

1979年発行 エイプリル出版 FOLK GUITAR 2
1979年発行 エイプリル出版 FOLK GUITAR 2
後半は20人のAOR/ポップス系のシンガーソングライター・ギタリストを、1人だいたい2ページづつ、簡単な紹介と代表的な曲の譜面が掲載してある。
例えば、ポール・サイモン、ジェイムズ・テイラー、ジョニ・ミッチェル、ジャニス・イアン、ロビー・ロバートソン、ジョン・デンバー、ポール・マッカートニーなどなど。
とにかく手垢がたっぷりついた思い出のつまった一冊ではある。


最近は、ずいぶんしばらくほとんど聴いていなかったのだが、今回、この記事を書くにあたって少しばかり聴き直した。確かに派手なところはない硬派な演奏だ。

アルバムもいろいろあるが、今回、ボトルネックのジョニー・ウィンターから始まったので、"Bottleneck Serenade"を貼っておこう。アコースティックギターならでのスライドの音色、そして楽しい演奏を堪能できる。



最近、ラーキン・ポーというレベッカ・ロベルとミーガン・ロベルの姉妹が率いるグループが耳にとまった。去年に新しいアルバムがリリースされたばかりだ。

"Blood Harmony" とはなかなか迫力のあるタイトルだ。ボーカルのレベッカの太い力のある声と、ミーガンのラップ・スティル、こちらは身体の軸に概略垂直に膝(ラップ)に乗せるようにギターを構えて指先大のスライドで弾くスタイルだ(*1)。


なかなかいけるではないか。これから楽しみなグループだ。

スライド・ボトルネック。・・エレクトリックならば、音が太く暖かい音色になって長くサスティンが効いてそして滑らかな音程の変化が心地よく、アコースティックならば独特の金属が擦れ合うビビりの入った音もクセになる。


現代的な繊細でスマートなテクニシャンもいいけれど、こういう武骨な音もいいものだ。


■関連 note 記事


■注記(*1)

膝に乗せてギターを弾くといえば、盲目のギタリスト、ジェフ・ヒーリーだ。スライドではないけれど。


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