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【人事に効く論文】質的データ分析手法SCATをブラッシュアップ! → SCAT: Steps for Coding and Theorization.

大谷尚. (2011). SCAT: Steps for Coding and Theorization. ー明示的手続きで着手しやすく小規模データに適用可能な質的データ分析手法   感性工学, 10, 155–160.

1. 10秒で分かる論文の概要

先回、SCATを紹介した論文について当note記事に取り上げました。この論文では、さらに改善がすすめられたSCATの分析手順について詳しく説明されています。

2. すごいぞ、SCAT

当論文内に、SCATがどういった点で優れているか、またどういった分析にSCATが向いているかが紹介されていました。それらをまとめると以下のような感じです。質的データの分析手法選びに迷っている方は参考にしてみてください。

● 質的データ分析手法のデファクトスタンダードに近いGTA(Grounded Theory Approach)が向いているのは、大規模なデータ採取と長い研究期間を要する大がかりな研究。GTAは小規模のデータ やすでに採取した手持ちのデータには適用が難しい
● GTAを含む多くの質的データ分析では、テクストを読みながらコードを案出して付していくジェネラティブ・コーディングが採用されている。そのため初学者は「コードがうまく思いつかない~!」と悩んでしまう
● さらに、付したコードから理論化を行うのはもっと難しい手続きであり、「コードから上手く結論が導けない~!!」と悩む初学者が多い
● SCATは上記の状況を打破するために開発された
● SCATを用いた研究は、教育工学・教育社会学・幼児教育学・養護教育・メディアリテラシー教育・日本語教育・法曹教育・臨床心理学・医学教育学・臨床研究・薬学・看護学・スポーツビジネス研究・ヒューマンサービス研究等、多様な領
域で発表され、実績を積んでいる
● 質的研究への着手にこれまで躊躇していた量的研究者が、SCATを用いた質的研究に挑戦しはじめている
● 質的研究で用いられるコーディングとは、言語記録を深く読み込んで潜在的な意味を見いだし、それを表すような新たな概念を案出しし、「新しいコトバ」としての構成概念を作っていく作業。SCAT は作業を数段階のスモールステップに分けることで、言語的分析を支援する仕組み・手続きを内包している。そのため、SCAT に従って作業を進めることで、比較的容易に分析を完結することができる。この点こそ、量的研究者が質的研究に取り組む際にSCAT を選択する大きなポイントである
● SCATのエクセルフォームには、分析の過程が明示的に残る。そのため、分析妥当性確認のためのリフレクションを分析者本人に迫る機能を有しており、何人かで協同で行う分析にも適している
● アンケートの自由記述欄への回答のように、1 ~ 2行程度のごく短い言語データが多数ある場合にも、SCAT の活用が有効

3. 読後の余談

先回のSCATに関する論文とこの論文を精読すれば、とりあえずはSCATによる質的データ分析にチャレンジできると思います。ただ、分析の前提となるデータ採取がポンコツでは、分析してもポンコツな結果しか出てきません。いきなりチャレンジする前に、以下の書籍も読んでおくことをお勧めします。

2022年4月17日 初稿作成

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