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【人事に効く論文】仕事の資源がワーク・エンゲイジメントを押し上げる → Job resources boost work engagement, particularly when job demands are high.

フィンランドの学校の先生を題材に、JD-Rモデルにおける仕事の要求度、仕事の資源、ワーク・エンゲイジメントの関係性について研究した論文です。

Bakker, A. B., Hakanen, J. J., Demerouti, E., & Xanthopoulou, D. (2007). Job resources boost work engagement, particularly when job demands are high. Journal of Educational Psychology, 99(2), 274–284.

1. 10秒で分かる論文の概要

この論文の結論は、論文のタイトルがすべてを物語っています。つまり、
「仕事の要求度が高い状況において、仕事の資源がワーク・エンゲイジメントをブーストする(押し上げる)」です。

2. 現場目線の解説/感想

「仕事の要求度」について、誤解を恐れずに言い換えてしまいますと、「仕事がどれだけツラいか」です。例えば、、、
  ①仕事量が多くて終わらない
  ②ややこしい顧客を相手にしなきゃいけない
  ③職場が暑い or 寒い
  ④単純作業やルーチンワークでつまらない
  ⑤いつ解雇されるか分からない
といった状況は仕事の要求度が高いといえます。必ずしもレベルが高い仕事とは限らないところがポイントですね。

で、要求度が高いだけではバーンアウト(燃え尽き)につながってしまいがちなのですが、「仕事の資源がちゃんとあれば、むしろワーク・エンゲイジメントにつながるんだぜ」と主張したところに、この論文の価値があります。
例えば、上記①~⑤のツラい状況に対して、
  ①仕事量が多くて終わらない ← 同僚が助けてくれる
  ②ややこしい顧客を相手にしなきゃいけない ← 上司がサポートしてくれる
  ③職場が暑い or 寒い ← エアコンが完備され、快適な気温が保たれる
  ④単純作業やルーチンワークでつまらない ← 職場のQCサークルに参加する
  ⑤いつ解雇されるか分からない ← 正規社員に登用され、雇用が安定する
といった仕事の資源が用意されれば、要求度が高くても(仕事がツラくても)、エンゲイジメント高く頑張れるということです。

また、仕事の資源は手に届く範囲に存在するだけでも有効、という点も重要です。例えば、上記②のややこしい顧客について、実際には社員が独力で何とか対処でき、上司のサポートが必要ではなかった場合であっても、本人に「失敗しても、上司がサポートしてくれるに違いない」という期待が事前にあれば、仕事の資源として効果があるということです。

そして、言わずもがなかもしれませんが、どんな仕事の資源が効くかは、職種や職務の特徴によって異なります。ある職場でQCサークルが有効に機能したとしても、別の部署で同じように有効とは限らないということですね。

3. 読後の余談

論文のResultsの内容にチラっと「分析した仕事の資源の中で、”感謝”がワーク・エンゲイジメントに最も強い影響を及ぼしていた」とありました。学校の先生を前提とした研究のため、すべての職種で共通するわけではないですが、感謝、重要ですよね。皆さんは周囲のメンバーへの感謝を、言葉や態度に表していますか?

4. 関係性の高い論文

Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2017). Job demands–resources theory: Taking stock and looking forward. Journal of Occupational Health Psychology, 22(3), 273–285.

2022年1月20日 初稿作成
2022年1月29日 タイトルを小変更

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