見出し画像

【第4回】43歳男性が、新卒から20年勤務した大手企業を退社し、コンサルタントに転身したときの話

中年男性の初めての転職ストーリー、長くなってきたのでもはや誰も興味を持っていないかもですが、完結させたいので続けます。第3回までで金融系シンクタンクから人事コンサルタント職での内定が出たところまでを紹介しました。今回は、新しい会社に入社するまでのお話しになります。

退社の根回し

日本の伝統的な大企業に新卒から20年も勤務すると、サクッと簡単に退社できる訳ではありません。X(旧twitter)で退社ポストをよく見かけますが、その多くは3年とか5年といった勤続年数ですよね。こちとら勤続20年の現役バリバリの大企業管理職(自意識過剰)の退社ですから、なるべく波風を立てないように、慎重かつ入念な根回しが必要になります。
まずは家族関係から。転職活動をすること自体、事前に妻には伝えてあり、結果として引っ越しを伴わない転職になったので、特に問題はありませんでした。そして親も「やっと転職か。意外と長かったな」といった程度の反応で、反対されることはまったくありませんでした。
色々と気を遣ったのはやはり会社関係です (本来は直属上司とのやり取りを最初に記載すべきですが、生々しくなってしまうので割愛)。多くの社員が数年置きにジョブローテーションするメンバーシップ型雇用の世界にドップリ浸かっていたので、直接仕えた過去の上司だけで13人、私が直属の上司・先輩として関わった人が60人以上いました。そして、一緒に仕事をしたことのある同僚となると数百人、知ってる程度の関係者であれば数千人といったところ。また、全社課長会(数千人)の会長や、大学OB・OG会(数百人)の代表幹事、大学リクルーターチーム(数十人)の元締め、2年置きに開催される全社イベントのリーダー、その他さまざまなインフォーマル組織の事務局もやらされていたしていたので、役員の多くとも知り合いでした。そのため、僭越ながら根回しランクをA~Dの4つに分けて対応するようにしました。
A:相手の席に直接出向き、丁寧にお話しし、理解いただく
B:個別にメール連絡し、必要に応じて直接出向く  (相手が海外の場合はメールのみ)
C:メール一斉送信で連絡する
D:特に連絡しない
但し、何人かはランク分けを見誤り、Cで対応した重鎮から直接電話を受け、「事前に相談がなかったんだけど、どういうことか説明してくれるかなぁ」という苦情?を受けたり、ある同期には「メンタルやられたのか?大丈夫か?」という実態と乖離した心配をかけたりもしました。とは言え、しっかりと根回しをした結果、2016年3月31日、円満に最終出社日を迎えました。入社以来、数千回出入りした正門から退勤した後、満開の桜越しに本社ビルを見上げ、自分はもうこの会社の人ではなくなったんだなと感慨深く思ったことが今でも思い出されます。

1か月半のモラトリアム期間

転職先である金融系シンクタンクへの入社日を5月中旬にしていたので、1か月半の有休消化期間を自由に満喫する時間ができました。そこで、定年退職後の楽しみにしていたアフリカ旅行を前倒しして敢行することに。日本→モルディブ→スリランカ(ここまで家族旅行)→ザンビア(ここから一人旅)→ジンバブエ→ボツワナ→ナミビア→南アフリカ共和国→アラブ首長国連邦→日本という1か月超の旅程を楽しみました。ハイライトはジンバブエから南アフリカ共和国までのオーバーランドツアー。全世界から旅行者がビクトリアの滝に集合し、そこからトラックを改造したバスで20日間かけてアフリカのサファリを駆け巡るというエキサイティングなツアーです。人生で最高の部類に入る旅となり、正直、この旅を経験できただけでも転職して良かったなと思ったくらいです(笑)。また、日本に戻った後、追加で10日間のチベット旅行にも出かけ、エベレストのベースキャンプ(標高5,000m超)まで行くなど、1か月半はあっという間に過ぎてしまいました。

アフリカ・オーバーランドツアーのバス車窓から

転職によるリアリティショック? 何それ?

2016年5月17日。43歳の新人・人事コンサルタントとして私はキャリアをリスタートしました。その日を迎えるまでの間、不安が全くなかったかと言えばウソになります。上記の旅行中も「本当に転職してしまって良かったのだろうか」と何度か心をよぎりました。ただ、アフリカ・オーバーランドツアーではバス移動が毎日数時間あり、その間ずっとアフリカサバンナの地平線を眺めながら思索の世界に深く潜ったことが功を奏しました。自分のこれまでのキャリアをメタ認知で俯瞰したり、あるいはWill・Can・Must的な考えでリフレクションしたり、さらにはコンサルタントになって以降どのような事象(主にネガティブ面)が発生し得るのかを妄想的にシミュレートしたりと、存分に思考的準備を進められたのです。あとは行動あるのみという状態にまで入社日には仕上がっていました。そのため、転職によるリアリティショックはほとんどありませんでした。もちろん前職との様々な違いに直面することはありましたが、それらはすべて思考的準備の範囲内であり、自分が頑張れば何とかなるという覚悟をもって挑戦する日々を過ごしました。


月日は流れ、私が人事コンサルタントに転身してから7年超が経過しました。その間、プロジェクトメンバーとしての徒弟的修行、プロジェクトマネージャーとしての案件初受注、大型案件獲得、新聞・雑誌への記事寄稿、書籍出版、大学院進学・修了など、挑戦する日々が今も続いています。よく「未経験でのコンサル転職は厳しい」「未経験マネージャーはキツイというかムリ」と見聞きしますが、一応、生き残ることができています、今のところ。そこで次回を最終回とし、なぜ私が人事コンサルタントの世界で生き残れているのか、その理由を自分なりに振り返ってみたいと思います。
では、またっ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?