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【人事に効く論文】ワーク・エンゲイジメントの測り方(オリジナル) → The measurement of engagement and burnout

ワーク・エンゲイジメントのオリジナル尺度である Utrecht Work Engagement Scale(UWES) をこの世に送り出した論文です。

Schaufeli, W. B., Salanova, M., González-romá, V., & Bakker, A. B. (2002). The measurement of engagement and burnout: A two sample confirmatory factor analytic approach. Journal of Happiness Studies, 3(1), 71–92.

1. 30秒で分かる論文の概要

従来、エンゲイジメントはバーンアウトの真逆の状態という位置付けで取り扱われることが多かったのですが、この研究によってエンゲイジメントに特化した新たな尺度 UWES-17 が開発されました。
また、バーンアウトに関する一般的な尺度であるMBI-GSの3因子構造(疲弊感・冷笑的態度・職務効力感)と、エンゲイジメントの因子が同時に分析され、これまでは理論的仮説だったエンゲイジメントの3因子構造(活力・熱意・没頭)の妥当性もこの論文で一定程度確認されました。

2. 現場目線の解説/感想

ワーク・エンゲイジメントという考え方は、もともとバーンアウトを正反対にとらえることで始まりました。その原点に近い研究です。
この論文にはワーク・エンゲイジメントを構成する3つのディメンジョン、活力・熱意・没頭がどのように生まれたのかが記されています。その内容から、活力と熱意は、バーンアウトの疲弊感と冷笑的態度と表裏一体の関係にあるのですが、没頭だけは、バーンアウトの職務効力感と概念的に全く異なる位置づけであることがわかります。没頭は約30回の詳細なインタビューによって抽出されたものだとか。没頭の生まれの経緯にちょっと危うさを感じてしまうのは私だけでしょうか…。
そして、論文の4ページ目に、その後、色々な論文で引用されることになるワーク・エンゲイジメントの定義が登場します。私も敬意を評して、以下の通り、Shaufeliら(2002)から引用いたします。

Hence, engagement is defined as a positive, fulfilling, work-related state of mind that is characterized by vigor, dedication, and absorption. Rather than a momentary and specific state, engagement refers to a more persistent and pervasive affective-cognitive state that is not focused on any particular object, event, individual, or behavior.
Vigor is characterized by high levels of energy and mental resilience while working, the willingness to invest effort in one’s work, and persistence even in the face of difficulties.
Dedication is characterized by a sense of significance, enthusiasm, inspiration, pride, and challenge.
The final dimension of engagement, absorption, is characterized by being fully concentrated and deeply engrossed in one’s work, whereby time passes quickly and one has difficulties with detaching oneself from work.

これらの定義の後、論文では
「バーンアウトとエンゲイジメントは構造が全く異なるんだよねぇ。ってことは、バーンアウトの測定尺度であるMBI-GSのスコアを逆転させるだけじゃ、エンゲイジメントを適切に測定するのは無理じゃない?」
といった感じの主張が展開され、エンゲイジメントを測定するための尺度(後のUWES)の開発とMBI-GSとの比較が宣言されます。そこからはひたすら続く統計解析用語の嵐…、クロンバックのαや共分散構造分析の適合度指標(χ二乗値・GFI・RMSEAなど)といった数字が目白押しで、統計に弱い人にとっては地獄の英文が9ページ畳みかけられます。ただ、結論は「今回作った尺度は妥当そう」なので、読み飛ばしても大きな問題はなさそうかな、と思ってしまったりして。

3. 読後の余談

ワーク・エンゲイジメントおよび活力・熱意・没頭の3因子について定義し、さらにUWESを生み出した極めて重要な論文です。日本における昨今のエンゲージメント・ブームのルーツといえるかもしれません。ワーク・エンゲイジメントを語るからには、必読であることは間違いないです。
ただ、個人的には「没頭」の位置付けの危うさがどうしても気になるんですけどね…。

4. 関係性の高い論文

Schaufeli, W. B., Taris, T. W., & van Rhenen, W. (2008). Workaholism, burnout, and work engagement: Three of a kind or three different kinds of employee well-being? Applied Psychology = Psychologie Appliquee, 57(2), 173–203.

2022年1月10日 初稿作成
2022年1月29日 タイトルを小変更

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