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【人事に効く論文】仕事のプレッシャー&自律性の高さがジョブ・クラフティングにつながる? → Crafting a job on a daily basis: Contextual correlates and the link to work engagement.

Petrou, P., Demerouti, E., Peeters, M. C. W., Schaufeli, W. B., & Hetland, J. (2012). Crafting a job on a daily basis: Contextual correlates and the link to work engagement. Journal of Organizational Behavior, 33(8), 1120–1141.

1. 90秒で分かる論文の概要

仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)をベースに、日々のジョブ・クラフティング行動と他の因子との関連について研究した論文です。オランダの様々な組織から5稼働日連続のアンケート結果95名分が集められ、以下の5つの仮説がデータ分析によって検証されました。
(1) ジョブ・クラフティングは「仕事資源の探求」「挑戦的仕事の探求」「仕事要求度の低減」という3つの因子から構成される (全般的・デイリー共に)
→ 支持された
(2) 仕事のプレッシャーと自律性の両方が高い日において、「仕事資源の探求」が最も高いレベルで行われる
→ 支持された
(3) 仕事のプレッシャーと自律性の両方が高い日において、「挑戦的仕事の探求」が最も高いレベルで行われる
→ 支持されなかった
(4) 仕事のプレッシャーと自律性の両方が高い日において、「仕事要求度の低減」は最も低いレベルで行われる (≒仕事の要求度を減らそうとしない)
→ 支持された

(5) 日々のワーク・エンゲイジメントは、日々の「仕事資源の探求」「挑戦的仕事の探求」とポジティブに関連し、日々の「仕事要求度の低減」とネガティブに関連する
→ 一部、支持された。日々のワーク・エンゲイジメントは日々の「挑戦的仕事の探求」とポジティブに関連し、日々の「仕事要求度の低減」とネガティブに関連した
が、日々の「仕事資源の探求」とは関連がみられなかった。

2. 私的な解説/感想

日々のジョブ・クラフティングの測定を試みた意義深い論文であり、ジョブ・クラフティングも日によって大きく変化することが示唆されました。
仮説検証結果を少し自分なりに読み解きますと、「挑戦的仕事の探求」に関する仮説(3)が支持されなかったという結果には、ある程度の納得感があります。いくら自律性が高くても、仕事のプレッシャーに対処するのに精一杯では、新に挑戦的仕事を求める余裕はないですよね。
また、(5)について、withinレベル(被験者内)では上記の結果だったのですが、betweenレベル(被験者間)では、日々のワーク・エンゲイジメントは日々の「仕事資源の探求」と相関があり、日々の「挑戦的仕事の探求」と「仕事要求度の低減」とは相関がみられない、という結果も示されていました。結果の内容はともかくとして、withinとbetweenの分析視点の違いで示唆出しすることもできるんだな、と何だか勉強になりました。

3. 読後の余談

上記の概要パートで触れるべきだったかもしれませんが、この論文では仕事の変化の影響についても分析され、以下の内容に有意性があったことが紹介されていました。
● 新しいテクノロジーは、日々のワーク・エンゲイジメントと負の相関
● 新しい製品は、日々の「挑戦的仕事の探求」と負の相関
● 新しい顧客は、日々のワーク・エンゲイジメントおよび「仕事資源の探求」「挑戦的仕事の探求」と正の相関
新しいテクノロジーが従業員のワーク・エンゲイジメントにとってマイナスである一方、新しい顧客はプラスであることがとても興味深かったです。

4. 関係性の高い論文

2022年2月13日 初稿作成

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