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【人事に効く論文】仕事の要求度-資源モデルを”生みの親”がレビュー → Job demands–resources theory: Taking stock and looking forward.

Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2017). Job demands–resources theory: Taking stock and looking forward. Journal of Occupational Health Psychology, 22(3), 273–285.

1. 30秒で分かる論文の概要

Demerouti, E., Bakker, A. B., Nachreiner, F., & Schaufeli, W. B. (2001)が仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)を提唱して以降、何百もの研究が進められ、今日まで発展してきました。生みの親の一人であるBakker教授(オランダ・エラスムス大学)が、JD-Rモデルの歴史と今後の発展について様々な関連論文をレビューしたのが本論文です。
以下のJD-Rモデルのパス図に基づき、これまでの研究によってどういったことが示唆されてきたのかを紹介し、将来の研究の方向性を展望する内容になっています。

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2. 私的な解説/感想

論文内でJD-Rモデルのポイントが8つの定理(Proposition)として分かりやすくまとまっていましたので、紹介します。この8つを把握しておけば、JD-Rモデルについて最低限理解できたといっても差し支えないでしょう。

定理①:仕事に関するすべての特徴は、「仕事の要求度(Job Demands)」と「仕事の資源(Job Resources)」の2つのカテゴリーに分けられる

定理②:仕事の要求度と仕事の資源が、「健康障害プロセス」と「動機づけプロセス」を引き起こす

定理③:仕事の資源は、仕事の要求度によるストレス(Strain)への影響を緩和する

定理④:仕事の要求度が高いとき、仕事の資源による動機づけが強まる

定理⑤:自己効力感や楽観性などの個人の資源(Personal Resources)は、仕事の資源と同じような働きをする

定理⑥:仕事のパフォーマンス(Job Performance)に対し、モチベーションはポジティブに影響し、仕事のストレスはネガティブに影響する

定理⑦:仕事へのモチベーションが高い社員は、ジョブ・クラフティングに積極的に取り組み、その結果、仕事と個人の資源が高まり、さらに高いモチベーションを得る

定理⑧:仕事にストレスを感じている社員は、自己否定(Self-undermining)的に行動しがちであり、それが仕事の要求度を高め、仕事のストレスがさらに高まってしまう

3. 読後の余談

本論文はレビュー論文のため、新しい示唆は出てきません。しかしJD-Rモデルの発展の歴史について広く網羅的に紹介されており、その充実度は以下の論文と双璧です。興味のある方はぜひ目を通してみてください。

4. 関係性の高い論文

関係する論文が数多くありすぎるので、JD-Rモデルの始祖論文 ↓ のみ記載しておきます。

Demerouti, E., Bakker, A. B., Nachreiner, F., & Schaufeli, W. B. (2001). The job demands-resources model of burnout. The Journal of Applied Psychology, 86(3), 499–512.

2022年2月27日 初稿作成

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