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【人事に効く論文】JD-Rモデルについてまとめてみた(2007年時点) → The Job Demands‐Resources model: state of the art

仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)について、先行研究をまとめた論文です。ちなみに副題的な位置づけの「state of the art」は最新、最先端あるいは研究状況といった意味の英熟語です。

Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2007). The Job Demands‐Resources model: state of the art. Journal of Managerial Psychology, 22(3), 309–328.

1. 3分で分かる論文の概要

JD-RモデルはDemeroutiらの2001年の論文をきっかけに、世間に広まりはじめました。ただ、当初のJD-Rモデルのパス図はこんな ↓ 感じで、まだまだ発展途上の理論でした。

JD-Rモデル(2001)

その後、JD-Rモデルに関して様々な研究が進み、この論文ではそれらの研究の中締め?的に、2007年当時の最新のJD-Rモデルが提示されました。それがこちら ↓ です。上記の図に比べ、色々と進化していますよね。

JD-Rモデル(2007)

論文の冒頭で、まずはKarasekのDemand-Control model(仕事要求度-コントロールモデル)とSiegristのEffort-Reward Imbalance (ERI) model(努力-報酬不均衡モデル)が紹介されます。しかしながら、これら先人の2つのモデルは、「シンプルすぎて、リアリティがない」「色々な要素が足りなくて使えねぇ」「特定の職種にしか当てはまらない」的な感じで痛快にメッタ切りされてしまいます。そして、こういった欠点をクリアしたナイスなモデルとしてJD-Rモデルが紹介されるわけです。
で、その後、JD-Rモデルについての説明が繰り広げられるのですが、Schaufeli & Bakker, (2004)やその他の先行研究の内容の繰り返し的な感じなので、目新しいものはありませんでした。レビュー論文なので、そりゃそうなのですが。

2. 現場目線の感想

JD-Rモデルに関する先行研究を包括的にかいつまんで紹介してくれており、高度にアカデミックな”まとめサイト”といった感じです。その意味では、初期のJD-Rモデルについてザックリと一通り知りたいというニーズに応えてくれます。ただ、全体を通じて漂ってくるJD-Rモデル至上主義的な匂いが気にならなければですが・・・。

3. 読後の余談

論文の最後のほうに、Xanthopoulou et al.(2007)の紹介がありました。「個人の資源(自己効力感・自尊心・楽観性)は、仕事の要求度と疲弊感の関係を相殺することはできない」という内容です。私自身、「自己効力感さえ高ければ、大抵のことは何とかなる」という思想を持っていますので、少し違和感を覚えました。これはつまり、読むべき論文がまた増えてしまったということになります。

4. 関係性の高い論文

Demerouti, E., Bakker, A. B., Nachreiner, F., & Schaufeli, W. B. (2001). The job demands-resources model of burnout. The Journal of Applied Psychology, 86(3), 499–512.
Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2017). Job demands–resources theory: Taking stock and looking forward. Journal of Occupational Health Psychology, 22(3), 273–285.

2022年1月16日 初稿作成
2022年1月29日 タイトルを小変更

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