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【人事に効く論文】変革型リーダーシップが部下のワーク・エンゲイジメントを高める? → Do transformational leaders enhance their followers’ daily work engagement?

Tims, M., Bakker, A. B., & Xanthopoulou, D. (2011). Do transformational leaders enhance their followers’ daily work engagement? The Leadership Quarterly, 22(1), 121–131.

1. 45秒で分かる論文の概要

リーダーによる変革型リーダーシップ行動が、フォロワーのワーク・エンゲイジメントとどう関連するのか、研究した論文です。オランダの2つの異なる組織から5稼働日連続のアンケート結果42名分が集められ、以下の3つの仮説が検証されました。
(1) リーダーの日々の変革型リーダーシップは、フォロワーの日々のワーク・エンゲージメントと正の関連がある
(2)フォロワーの日々の自己効力感は、リーダーの日々の変革型リーダーシップとフォロワーの日々のワーク・エンゲイジメントの関係を媒介する
(3) フォロワーの日々の楽観性が、リーダーの日々の変革型リーダーシップスタイルとフォロワーの日々のワーク・エンゲイジメントの関係を媒介する

そしてデータ分析により、仮説(1)と(3)が支持される結果となりました。また、仮説(2)は支持されなかったのですが、フォロワーの日々の自己効力感が同じく日々のワーク・エンゲイジメントと有意に関連していることが分かりました。

2. 私的な解説/感想

この論文を正しく解釈するためには、変革型リーダーシップとは何ぞや、を理解しておくべきでしょう。
Yukl, G. A. (1989)では変革型リーダーシップ=”従業員の規範や価値観を変革するリーダーシップ行動”と定義されており、上司の変革型リーダーシップによって従業員は自らの期待以上のパフォーマンスを発揮するよう動機付けられるそうです。
また、Bass & Avolio (1990)によると、以下の4つの要素によって変革型リーダーシップは成り立つとされています。
(1) ミッション・ビジョンの提示
    ミッションやビジョンを示し、フォロワーのプライドを高め、尊敬や信頼
 を獲得する
(2)モチベーションの鼓舞
   レベルの高い仕事が期待されていることを示し、重要な目的を関係者に
   分かりやすく示す
(3)知的刺激
   知性・合理性・注意深い解決方法を示す
(4)個への配慮
   各フォロワーに配慮し、各フォロワーに対して個別にコーチしアドバイス
   をする
変革型リーダーシップと聞くと、J.F.ケネディ大統領や坂本龍馬のような人物を思い浮かべがちですが、そこまで大それたものでない行動でも当てはまる、ということですね。

3. 読後の余談

この論文の中では、変革型リーダーシップが、レッセフェール型(放任型)リーダーシップとトランザクショナル型(取引型)リーダーシップと比較されていました。先行研究を参照の上、ワーク・エンゲイジメントに最も関連するのは変革型リーダーシップだ!と仮説建てしているのですが、少しロジックとして弱いようにも感じました。だったら、サーバントリーダシップとか、オーセンティックリーダーシップも関連してんじゃないの?という疑問を抱いてしまうからです。
リーダーシップ・スタイルとワーク・エンゲイジメントの関連を研究している論文はほとんど見当たらないので、ここを掘っていくと、何か見つかるかもしれません。

4. 関係性の高い論文

Yukl, G. A. (1989). Leadership in organizations. Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall.
Bass, B. M., & Avolio, B. J. (1990). Improving organizational effectiveness through transformational leadership. Thousand Oaks: Sage Publications.

2022年2月8日 初稿作成

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