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【人事に効く論文】ワークショップによってワーク・エンゲイジメントが高まる? → A test of a job demands-resources intervention.

Van, W. J., Bakker, A. B., & Derks, D. (2016). A test of a job demands-resources intervention. Journal of Managerial Psychology, 31(3), 686–701.

1. 60秒で分かる論文の概要

ワーク・エンゲイジメントと業務パフォーマンスの向上を狙った介入施策の効果を検証した論文です。仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)に基づき、ヘルスケア専門職43名(おそらく@オランダ)を対象に3つのセッションから構成されるワークショップ【下図参照】が介入施策として実施され、対照群24名との比較が行われました。

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介入施策の効果検証にあたっては、ワークショップの事前事後にアンケートが行われました。そして、そのデータ分析の結果から、「ワークショップ参加者は、参加しなかった対照群に比べ、”心理的資本(PsyCap)”・”ジョブ・クラフティング”・”ワーク・エンゲイジメント”・”業務パフォーマンス”のスコアが優位に増加する」という仮説が支持されました

2. 私的な解説/感想

論文で紹介されていた介入施策の内容について簡単に説明しましょう。
セッション1は、心理的資本の要素であるhope・optimism・self-efficacy・resiliencyを高めることが主眼とされたプログラムになっています(この4要素は、下線部の文字を組み合わせてheroと呼ばれたりもします)。セッションの冒頭で、まずは過去からの自らの業務経験を受け止め、現在に感謝し、未来をチャンスの源泉としてとらえるワークが行われます。これによって、hopeとoptimismが高まるそうです。続いて、フィードバックの与え方・受け止め方について学ぶことでself-efficacyにつなげ、最後に「要求を断る」ワークをすることでresiliencyの向上を図ります。
セッション1と同日に開催されるセッション2は、ジョブ・クラフティングに関するプログラムです。担当業務と自身の強みや職場でのリスク要因を棚卸しし、ジョブ・クラフティングの考え方を学んだ上で、具体的なアクションプランを立案します。
その後、4週間の実践期間を経てセッション3が開催され、アクションプランを実行に移すことができたか、あるいは今後に向けてどうしていくべきか、といったことを議論します。
セッション1から3までいずれのプログラムも、汎用的というよりは、対象群の業務特性に合わせた内容に設計してあったようです。

3. 読後の余談

個人的に一番気になった施策内容は、resiliencyを高めるための「要求を断る」ワークです。欧米組織の場合、ジョブ・ディスクリプションに記載のない要求はバンバン断るイメージがあります。しかし、わざわざこういった練習をするということは、決してそうでもないのかなと。また、だからといってこのワークを日本企業で実施するのはなかなか難しそうだとも感じました。皆さんはどう思いますか?

2022年3月19日 初稿作成

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