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「「幸せ」を掴む戦略」が出来るまでの僥倖ーその3ー

<前回までのあらすじ>
自分を年金広報検討委員会に誘ってくれた若手官僚と漢は、「ナッジをサカナに飲むんかい!」なる奇妙な飲み会を実施すべく、お互いの友人関係の中から選りすぐりの変態10人を集結させた。

それにしても、ヘンテコな飲み会である。
話題に上がるのが、「プロスペクト理論曲線の右肩のところで」とか「同じ北欧の国でも初期値効果によってドナー意思表示率が」とか、およそ酒の席とは縁遠い内容なのだ。
しかし、参加の面々、皆一様に顔を赤らめながらも、楽しげに、熱く人間のバイアスについて語っている。
元来、社会学などフィールドワークが伴う分野には、そこはかとない変態フレーバーが漂うものだが、その観点に立つならば、これを変態と呼ばずしてなんと呼ぼう。

参加者は、マーケティングパートナー企業に勤める者4名、霞ヶ関の若手が4名、日経BPの編集者1名、そして漢である。

話の展開が皆の意識と乖離して非論理的になってきた頃、つまり皆に酒が程よく回ってきた頃、パートナー企業 BEworksの松木さんと日経BPの編集者 山下さんがとりわけ酔っぱらった感じの会話を交わした。

なんと漢をトロントに連れて行って、BEworksの創業者にして代表と会わせよう、というのだ。

トロントに旅行できるのは楽しそうだが、偉い人と異国でやり取りしなければならないのは、いささか気が重い。
ましてや、漢をこの30年にわたり苦しめ続けてきた英語で、である。

「ここは穏便に断るに限る」
数時間にわたり飲み続けた酒の効果により、歌舞伎町のネオン並みにカラフルかつカオスになった状態の頭でよろよろと考え、呂律の回らぬ舌で漢は会話に加わった。

「トオント行けるのうぁいいんだけどすぁ、そのだいひょうってどんなひと」

山下さんが応える。
「とみなぐぁさんがいつかいってた、ダンアリエリーです」

!!!!!!!!
酔いが覚めた。
ということはあり得ないが、アタマの中の歌舞伎町ネオンが全数1000ワットに交換された程度に交感神経が刺激された。

ダンアリエリーと言えば「予想通りに不合理」のダンアリエリーである。
行動経済学のヒーローのダンアリエリーである。

会うー!行くー!

穏便に断る、などとどの口が言ったか。
さながら親のチカラか何かで憧れのアイドルに会えることになった中学生の様に、漢は奇声をあげた。

*つまりはこの本が出来るまでの物語です。(足立さんが書評を書いてくれました!足立さん、ありがとうございます!!)

http://blog.livedoor.jp/hikaru_adachi/archives/51354110.html?fbclid=IwAR0jjEIMXfJt8uLIME9KA5FRgrwqIb4qgWJtO36qBPrJv1s2_jZ43hb8OUE

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