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農業で日本発世界規模の革命が起きるとしたら

農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦を読んだ。この本は、日本の最先端の農業の事例がかなり多く載っている。ピーナッツ農家、梨農園、ハーブ農園、レタス工場、産直サービス、見える化システム、堆肥、茶葉、国産バナナどれも将来の可能性を感じる物だった。

農業は結構世界規模でのトピックがある。

1.土地劣化、土地開発、水源枯渇などの影響で世界の農耕作可能地は減少している。また、気候変動が農業に与える影響も大きく。これからの農作物の増産は現状のままでは限界がある。

 2.世界の農業生産可能量の1/3以上は病害虫・雑草害で失われている。これは世界の気が人口に近い年間8億人分の食糧に匹敵する。

3.最新の植物病理学の研究では、農作物の主要な病気の原因、メカニズムが解明されており、病虫害の発生予測や診断による予防的措置と、天敵などの生物的防除や粘着板、網なども利用した物理的防除を合理的に組み合わせた総合的病害虫管理(IPM)の研究が進んでいる。

4.植物の生育メカニズムも解明されてきており、今まで導入が遅れていた農業分野への科学とテクノロジーの活用によって、農作物の栽培方法や管理手法を改善し、省力化や生産性・品質向上が図れる余地が大きくある。

国内では農業は年々縮小している。農業人口:389万1000人(2000年)→175万3000人(2018年)*うち65才以上が120万人。時給:722円(2015年)→790円(2019年)。生産者所得:891万7000円(1995年)→526万円(2017年)と言う感じだ。ここにTPPなどが乗っかって海外の安価な商品が流れ込むわけだから、日本の農業は踏ん張らなければならない。

2018年6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」でスマート農林水産業の実現に向けたKPIが記された。

- 2025年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践
- 2023年までに、全農地面積の8割が担い手によって利用される(2013年度末48.7%)
- 2023年までに、資材・流通面等での産業界の努力も反映して担い手のコメの生産コストを2011年全国平均化4割削減する(2011年産1万6001円/60キロ)
- 2019年に農林水産物・食品の輸出額1兆円を達成する(2012年4497億円)

これを受けて、2019年2月には農林水産省が「スマート農業の社会実装に向けた具体的な取り組みについて」という方針を発表してる。

- 2022年度までに全農業大学校でスマート農業をカリキュラム化
- 各都道府県の主要10品目、全国500産地程度でスマート農業技術体系を構築・実施
- 全国360カ所の全普及指導センターにスマート農業技術の担当者又は窓口を設置

2019年の輸出額は9121億円だから、一兆には届かなかったものの、かなり伸ばしている。今後の日本の競争力はどこになるのか。

そうなると、孫さんが投資しているPlentyのような植物工場はやはりとても気になる。植物工場の植物(現状ほぼレタス)は割高ながら、一年間を通じて価格も栄養価も変化なく、安定的に生産できるし、無農薬と言う消費者へのアピールもできる。

電子部品商社のバイテックホールディングスは現在5工場を稼働させており、レタスを中心に1日85株を生産。セブンイレブンの首都圏、九州エリアで販売されるサラダの一部に採用されている。
トヨタ自動車系のプレス部品メーカー豊田鉄鋼は2018年5月、愛知県豊田市で植物工場「アグリカルチャーR&Dセンター」を稼働させた。ベビーリーフを年30トン生産し、愛知県内のスーパーや外食店などに出荷する計画だ。
三菱ガス化学は20億円超を投じて福島県白河市に一日2.6トンのリーフレタスを生産する植物工場を建設中で、2019年秋の稼働を目指す。
セブンイレブンはプリマハム子会社でセブンイレブン向けの商品を製造しているプライムデリカと共同で、60億円を投じて同社向けの野菜を生産する工場を設立。2019年2月より収穫が始まった。

と国内でもビックプレイヤーがここ数年でこぞって始めたり、

2019年5月には日本郵船の子会社である郵船商事が運営する福井県敦賀市の植物工場が実質稼働わずか3年で撤退。

採算が合わなくて撤退したりしている。その中でも早々に成果を出したのはスプレッド。

2013年に黒字化に成功したのが、スプレッド。京都で野菜を中心とした生鮮食品の流通、販売を手掛け、売上300億円を超えるアースサイドグループの子会社で、2006年より京都府亀岡市のプラントで日産2万1000株、2018年より世界最大規模の植物工場プラント「テクノファームけいはんな」で日産3万株のレタスを生産。

当初は収穫したレタスの中で商品になるレベルのものは30%程度だったようだが、今ではほぼ商品化される。また、地道な自社による販促活動などが実を結んでいるようで、

安心安全かつ美味しいレタスという評判が広まり、販路は徐々に拡大。現在2400店舗に卸し、売上は8億円を超える。ちなみに、一般的な採算ラインは歩留まり70%程度だと言われている中で、スプレッドは育てたレタスの97%を出荷している。

という数字を作れているらしい。まだまだ規模は大きくはないけど、この植物工場のユニットを展開していけるならすごく拡張性あっていいなと思う。

しかも、2018年秋より稼働したテクノファームけいはんなは、全工程の5割りを自動化し、搬送・植え替え・栽培などは機械が行う。人件費は50%削減。循環型システムで栽培に使用する水は90%再利用とかなりテクノロジーが組み込まれた工場だ。これは世界でも例のない自動化事例であると紹介されている。

IoTなど最新技術を活用したグリーンハウスと呼ばれる温室栽培ではオランダが名高いが、そのオランダも自動化プラントの研究では遅れているという。

農業といえばオランダかなぁと思っていたが、この領域は違うらしい。植物工場は世界で十分戦えそうなので、引き続きウォッチしようと思う。

その他にも、日本の輸出を成長させていくには、これから人口が増えていくエリアに必要な農作物を作る or その農作物の生産に必要なテクノロジーを作ることが筋だろう。

これから世界の人口が増えていくところはアジア・アフリカでどちらの主食もコメです。これから人口増、食料問題を解決するカギは、コメになるでしょう。稲作のソリューションは日本が進んでいるし、海外の富裕層に日本の米は大人気です。中国政府は2020年までに全農地の17%をスマート農業化すると言う目標を掲げていて既に動いていますが、アジアの田んぼの耕作面積は日本の50倍以上、農業生産性の低い海外での最新ソリューションのニーズは高く日本の手法によって海外で生産すると言うmade by Japanもあり得る。

と書いてあった。"稲作のソリューションは日本が進んでいるし"というところが本当にそうなのかよくわからなかったが、もしそうなのであれば、この辺りも何かあれば大きそうだなぁと思った。





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