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意思決定においてほぼ全ての人が陥る罠

決定力!正解を導く4つのステップを読んだ。研究結果が数多く引用されていて、科学的に理解できる良本。脳の構造上、人間がほぼ確実に落ちてしまう罠だ。

アメリカの法曹協会の調査によれば、弁護士の44%が若者に法律家を目指すことを進めていないという。2万件のヘッドハンティングを調べたところ、上級職の採用者の40%が「18ヶ月以内に解雇されるか、職務に失敗するか、辞職する」という。教師の半数以上は4年以内に仕事を辞める。

というように、人は職業決定を失敗するという。上記はアメリカの数字だけど、日本が世界仕事満足度調査では世界35ヵ国中最下位(世界最大求人サイトIndeed社調べ)なところを見ると、職業決定を失敗するという意味ではもっとひどいのではと思う。

企業のM&Aだが、ある調査によれば、その83%は株主価値を全く生み出さなかったという。別の研究では2207人の経営者に社内の意思決定を評価してもらった。すると60%の経営者が、不適切な意思決定は適切な意思決定と同じくらいあると報告した。

ビジネスでも意思決定は大半は失敗していると。この本では、人は決断をするときに下記4ステップを行うが、

1. 選択に直面する
2.選択肢を分析する
3.選択する
4.選択の結果を受け入れる

この4ステップに人間は罠にハマるようにできているので、そこを理解しないといけないという。

例えば、1(選択に直面)は選択を迫られるとA or Bという二者択一論で考える視野狭窄だ(罠)。これは、第三者に話を聞いたり、"ORではなくAND"で考えようという。家族or仕事ではなくて、家族AND仕事を考えるということだ。(解決法)

視野の狭窄を抜け出すには選択肢が必要だ。そして、新しい選択肢を生み出すいちばんの基本的な方法は、自分と同じ問題を解決した人を見つけるというものだ。

2(選択肢を分析する)は、確証バイアスという、自分が良いと思ったらそれを証明するための情報を集め、分析するし、悪いと思ったら悪いように行うこと(罠)。これは、データを客観的に見たり(ズームアウト)、意味のある意見を聞くこと(ズームイン)の客観と主観の行き来をすること(解決法)。

アメリカ国民の感情を理解するために、フランクリン・D・ルーズベルト大統領は統計的な要約を作り、かつ手紙の内容を読んだ。(中略)。ズームアウトとズームインを使えば、自分の選択肢をより現実的に捉えることができる。そして、頭の中に楽観的すぎる光景を思い描く代わりに、外の世界に目を向け、俯瞰的に眺めたり、近寄ってみたりすることができるのだ。

3(選択する)は、よく見るものに好感を持つ単純接触効果や、自分のものに愛着が湧く損失回避というような、一時的な感情に選択を乱されること(罠)。

こんな見事な研究が行われている。研究者は大学の教室に入り、学生の約半数を無作為に選んでプレゼントを渡した。大学のロゴが入ったコーヒー・マグカップだ。その上で、マグカップをもらえなかった学生に「このマグカップにいくらなら払ってもいいか?」と聞いたところ、答えは平均で2.87ドルだった。ところが、意外だったのはマグカップをもらった学生の反応だった。「いくらならマグカップを売ってもいいか?」と訊ねられると、彼らは平均7.12ドル未満では売りたくないと答えた。

人間の脳はこのようにできているので、そもそこう言った罠があることを理解したり、時間をおいて考えたり考える。例えば決める際に、10-10-10という、10日後にどう思うか、10ヶ月後、10年後だったらどうかと問うことによって一時的な感情を抑えられる(解決法)。

4(選択の結果を受け入れる)は、自信過剰になること(罠)。これは、客観的に悪い未来を考え、客観的に誤りに備えることで対処できる(解決法)。

(コールセンター会社の採用にて)フィリップスが考察した研究では、ありのままの事実を知らされた人もそうでない人も、採用プロセスから辞退する率は変わらなかった。むしろ、RJP(Realistic Job Preview=現実的な職務内容の事前開示)が成功したのは、フィリップスのいう「予防接種」効果のおかげのようだ。働き始める前に「少しだけ組織の現実に触れさせる」ことで、ショックや失望に対して予防接種を提供するわけだ。おかげで、新入りのカスタマー・サービス担当者はコールセンターに激怒した男性から電話がかかってきてもびっくりしない。想定内だからだ。

これにより、離職率が大幅に下がったらしい。

「ここが自分の居場所でないと思ったら、この会社で活躍して成長することができないと思ったら、いつでもトレーナーを呼び止めて、"例のオファーを受け入れる"と言ってください。退職金1000ドルをお支払いします」

これはザッポスが新入社員に行っていることだ。退職の機会を提供することによって、離職率を下げている。「お金をもらうことよりもここで働きたい」と宣言させてる。

選択の4つのプロセスにおいて出てくる4つの罠。これは、人間の脳の構造上、必ず陥ってしまうことなので、きちんと認識した上でバイアスと向き合いたいなぁと思った。




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