見出し画像

次に来る危機を理解する

危機の時代を読んだ。ウォーレンバフェットに並ぶと言われる、投資家ジムロジャーズの、コロナ期間に書かれた本。リーマンショックも、ブラックマンデーも当ててきた危機の感度が高いと言われる彼の本に何が書かれるのか。

現在の状況は、1939年に始まった第二次世界大戦の直前と似ているという指摘もある。私もその通りだと思っている。1930年代、世界中の国々で借金が積み上がり、貿易戦争が勃発、景気も悪化していた。そしてそれらが相まって軍事的な対立につながっていった。

現状をとてもシビアに捉えている。

 最近では「アメリカのベネズエラ」とも呼ばれるイリノイ州も財政が破綻寸前の状況にある。大都市シカゴがあり、約1300万人の人口を抱える大きな州だが、地方債の残高が膨れ上がっている。年金の積立不足が深刻で、同様の問題に直面する米国の自治体は少なくない。
 イリノイ州は大麻やスポーツ賭博を合法化したり、名画を売却したり、あの手この手で財政再建に取り組むが、焼け石に水だ。ある大きな州が破綻すれば、その州内にある自治体も破綻するなど、ドミノ効果が起きるリスクがある。

アメリカでは結構大きな都市が破綻寸前だと。

2008年、米中央銀行の FRBのバランスシートは9000億ドル(約100兆円)だった。しかし今では5兆ドル(約550兆円)にまで膨れ上がっている。実に5倍以上に拡大している。

日本が借金づけであることはみんな知っているが、米国も、そしてEUも同様の動きが加速している。

景気低迷が長期化すると矛先が向かうのは外国だ。当時のフーヴァー大統領は、国内産業の保護を優先する政策を取った。その流れの中で、議会が提出したのが「スムート・ホーリー関税法」と呼ばれる法律だった。海外から入ってくる農産物などに高額な関税を課すことで、国内産業を保護しようというものだ。農産物の価格が上がると、米国の農民は喜ぶが、消費者が苦しむことになるのは当然だ。

世界大恐慌の時にはこのようにブロック経済に入っていくのだが、自国が苦しくなると、本質的ではないが、外国に仮想敵を作って、関税ブロックすることによって国民からの支持を集めようとする。そしてこれは現在のトランプがやっていることと同じだ。

株価暴落に貿易戦争が追い討ちをかけ、危機はあっという間に世界に広がった。1931年になるとボリビアが債務不履行となり、他の南米の国々も相次いで破綻した。そして同年5月には、オーストリアの大手銀行、クレジット・アンシュタルトが実質的に破綻する。
同じ1931年5月にドイツの大手銀行も破綻し、同年8月までにドイツの全ての銀行が閉鎖される。そして、同年9月に英国の中央銀行であるイングランド銀行が金本位制を停止。自国産業を保護するために、完全を引き上げ、ブロック経済化を加速させた。

このように、世界恐慌の際、債務不履行の国が出たり、大きな金融機関が潰れた。現在米中の貿易戦争で、貿易国であるシンガポールや韓国に大きな影響を与え、既に景気が悪化していることと近しい。貿易戦争は多国に連鎖する。

こうした流れの中で、何が起きたのか、米国の株式市場は実に「90%」も下落した。米国政府はもちろん、あらゆる手を使って、株式相場を回復させようとした。政府がたくさんお金を使い始めたことで株価は一旦上昇したが、1937年には市場が再びクラッシュし、50%下落した。おそらく様々な株価でテコ入れ策が人口的なものだったからだ。

このように長期の不況に陥ることになる。

経済危機が起きると、多くの国で大学教授や政治家が、「不況で中流階級が減少している」と指摘する。すると中流階級の怒りに火がつき、政府や金持ちに対する大規模な抗議行動へと発展する。

これは19世紀後半のコクシーズ・アーミーも、1932年の大恐慌後のコックズ・アーミーも、リーマンショック後もそうだったという。これはコロナが不況を加速させて、怒りの矛先は違えど、既に近しいことが起こっているようにも思える。

FRBによると、米国で大学に通う若者の54%は教育費用を支払うために学生ローンなどの借金をしている。しかし、返済できなくなる学生も多く、5人に1人の支払いが遅延している。経済が悪化すれば、就職が難しくなるので、学生ローンを返せなくなる人が増えるのは当然だ。既に学生ローンの不良債権比率は11%と高く、その比率がさらに上昇すると大学システムは立ち行かなくなる。

Next中流階級の学生には今後さらに厳しい世界が待っていそうだ。

1962年、アジアで最も豊かな国一つはビルマ(現在のミャンマー)だった。この年、ビルマではネーウィン将軍がクーデターを起こし、社会主義を掲げて外国人を追い出した。(中略)。50年後、ミャンマーはアジアで最も貧しい国になった。
1957年に英連邦から独立した時点で、ガーナはアフリカで最も裕福な国の一つだった。のちに初代大統領となったワクメ・エンクルマは外国人を追い出した。国内経済への外国資本の介入を防ぐために、外国企業のガーナへの直接投資を禁止。(中略)。10年後ガーナは破綻した。

とあるように、不況時に外国人の締め出しを行うことは危険だと警鐘を鳴らしている。移民は成功を求めて移り住んでくるので、バイタリティが高いとし、ローマ帝国は外国人に市民権を与えて、国民を増やすことで成長したことを引き合いに出している。

(1990年代のバブル崩壊後)スカンジナビア諸国は、破綻した銀行を国有化し、不良債権を分離させるなどして再建に取り組み、なるべく早く再民営化させようとした。破綻させることをタブー視しなかったことが、経済の短期間での復活につながった。

いきなりアメリカからスカンジナビアからの引用に変えてしまったが、こういった危機を越えるには、旧来の人たちや枠組みを救済するのではなく、一度破綻させてから再生せよという。

絶望的な内容が多いが、ジムロジャーズは必ずまた景気は元に戻ってくるので、ちゃんと来る危機を理解し、準備をし、危機がきたら歴史に学んで対応しようよと言っている。

日本は1990年代にバブル経済が崩壊した際に、有能な人々にお金を与えず、無能な人々にお金を与え続けた。そして政府からお金をもらった無能な人々は、賢い人々と競争した。もちろんこのようなことをしても、日本の経済が良くなるわけがない。それが日本の経済がなかなか復活できず、長期的な停滞に苦しんでいる理由の一つだった。

日本経済が低迷しているのはそれが一つの理由だという。次の危機がきた時に日本はどう動くべきだろうか。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?