TikTokはOpenAIに月2000万ドルを支払っていた

TikTok(ByteDance)は、OpenAIのAIモデルを利用するために、毎月2000万ドルを支払っており、これは、MicrosoftのAI関連売り上げの25%に相当するそうです。

TikTokはOpen AIのLLMを何に使っているのか、気になって軽く調べてみました。

TikTokがOpenAIのGPTを使ってやってること

AIスマートサーチ機能の開発

TikTokはOpenAIのGPTを利用して「AIスマートサーチ」機能を開発しているそうです。検索結果の上部にAIが生成したスニペットを表示する機能のようです。

https://www.multifverse.com/blog-posts/tiktok-chatgpt-ai-search

広告事業の強化

TikTokは「TikTok Symphony」というAIツールを発表し、広告事業を強化しています。このツールには以下のような機能が含まれています。

  • Symphony Creative Studio: 動画生成ツール

  • Symphony Assistant: スクリプト作成支援ツール

https://techcrunch.com/2024/05/22/tiktok-turns-to-generative-ai-to-boost-its-ads-business/

AIアシスタントアプリの開発

TikTokの親会社ByteDanceは、OpenAIのGPTテクノロジーを利用して複数のAIアシスタントアプリを開発しています。これらのアプリを開発しているのが、Flowという部門だそうです。

ByteDanceのAI部門「Flow」

ByteDanceは2023年に新しいAI部門としてFlowを設立しました。
この部門のビジネスリーダーはByteDanceの大規模言語モデル開発チームの責任者でもあるようです。
ByteDanceのFlow部門は、いくつかの具体的なAIアプリをすでにリリースしており、さらに開発中のものもあります。以下がFlow部門の主なAIアプリです。

  1. DouBao(豆包): 中国国内市場向けのAIチャットボットアプリです。

  2. Cici: 海外市場向けのAIチャットボットアプリです。Google Playストアで1000万回以上ダウンロードされており、Flow部門のアプリの中で最も人気があります。

  3. Coze(扣子): ユーザーが独自のチャットボットを作成して共有できるボット開発プラットフォームです。業務効率化を目的としたボットを提供しています。

  4. ChitChop(小悟空): AIを活用したポータルサービスで、ユーザーが独自のチャットボットを作成・共有できます。

  5. BagelBell: 読者の選択に基づいて変化する物語の筋書きやテキストを生成するAIアプリです。

これからのプロダクトを軽く見てみたのですが、いずれも既視感のあるようなプロダクトでした。マーケティング含めてどれだけ投資が行われたか不明ですが、CiciはAndroidだけで1000万以上ダウンロードされているなど、そこそこの成果があるように見えます。
しかし、ByteDanceが開発するアプリは、TikTokが累計50億以上、動画編集アプリのCapCutも5億以上というダウンロード数から考えると、LLMをコアにしたBtoCのアプリケーションは、まだまだ黎明期だと感じます。

ByteDanceによる独自LLMの開発

そもそもByteDanceは、機械学習をコア技術とするニュースアグリゲーションアプリ「Toutiao(今日頭条)」が祖業です。
大きな資金力を持つビッグテックカンパニーであるにも関わらず、独自のLLMではなくOpenAIのモデルを使っていることに違和感がありました。
そこでByteDanceのLLM開発の取り組みについて調べてみると、2022年末に「Project Seed」というコードネームでLLMのファウンデーションモデルの開発プロジェクトを始動していました。

  1. ByteDanceは2022年末にProject Seedを始動

  2. 当初はOpenAIのAPIを広範囲に利用し、モデルのトレーニングや評価を行っていた

  3. 2023年中頃までは、GPTが生成したデータをアノテーションに使用していたが、その後削除されたとByteDanceは説明

  4. 現在は、MicrosoftとのAIモデルトレーニングに関する正規の契約を結び、開発を継続

Project Seedについては、あまり詳細な情報が得られず、GPTの不正な利用に関する情報が目立ちました。

いずれにせよ、2022年末にプロジェクト始動というのは、かなり遅い印象です。

Open AIがGPT-2をリリースしたのが2019年でした。

韓国のNAVERは、2020年にLINEと共同で日本語特化のLLMの開発を発表し2021年5月には韓国語のLLMである「HyperCLOVA」を公開していました。

2022年度のByteDanceの売り上げは約852億ドルで、EBITDAが約250億ドルだったので、開発にあたっての資金力が不足していたとは考えづらいところです。

2020年前後というのは世界でのTikTokの成長が加速していた時期であり、そちらに集中していたことが要因でしょうか。
ByteDanceはTikTokのアルゴリズムで大成功を収めていたため、LLMの可能性を過小評価していたのかもしれません。

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